当初は8日間の予定だった中国の上海封鎖は1カ月以上続いている。マンション団地を散歩したり、共同購入で食料品を買ったりなどの「封鎖の中の秩序」は形成されたものの、いつ終わるとも知れない封鎖に住民たちは疲れ切っている。3月末と4月初めにインタビューした3人の現地韓国人に、本紙は先日再び電話インタビューを行った。最初のインタビューでは漠然とした不安を口にしていた彼らは、今度はあきらめと怒りの感情を訴えた。中国生活が10年以上で、中国に対する理解と愛情もかなりある人々だが、今回の事態は大きな衝撃として迫ってきているようだった。
ひと月近く毎日…荷造りする現地の韓国人たち
「周りの多くの現地在住韓国人が帰国を望んでおり、実際に帰国しています」
中国での生活が十数年におよぶ上海の浦西地域在住の会社員、チョン・ヨンジュさん(仮名、30代前半)は、1カ月以上の厳しい封鎖生活を体験している。チョンさんの住むマンション団地は1世帯当たり1人の外出のみが許されており、それさえも2時間以内に戻ってこなければならない。中国当局は、団地内で感染者が発生していなければ、その区内では外出を認め、それをもって「封鎖緩和」と宣伝しているが、あまり守られていない。チョンさんは「区域から1人でも感染者が発生すれば、また14日封鎖しなければならないので、区域住民委員会も負担に感じているようだ」と話した。
食料品の事情は多少ましになった。共同購入ではなく個別購入も可能だ。チョンさんは「封鎖当初は共同購入で限られた品しか買えなかったが、今は時間をかければ欲しいものがほとんど手に入る。韓人マートも開いており、配送もしている」と語った。ただし、ほとんどの食堂がまだ営業しておらず、料理の宅配を頼むのは容易ではない。チョンさんは封鎖中にも働かなければならないため、外出するにしてもゴミを捨てる程度だと話した。
上海の1日の感染確認数は4月4日に1万人を超え、以降は1万~2万人台を維持していたが、30日には7872人と1万人台以下に減った。上海当局は「コロナ拡散は統制されている」としたが、封鎖解除までにはまだかなりの時間がかかるとみられる。
荷造りをはじめる現地韓国人も少なくない。チョンさんは「特に中国語があまりできない方々が苦しんでいるようだ。多くの現地韓国人が韓国に帰ることを望んでおり、実際に帰国している。上海から出発する直行便がなければ、通行証を発給してもらい、他の地域に迂回して帰国する方もいる」と語った。実際に、上海で学んでいる100人あまりの韓国人留学生が4月中旬に集団帰国しており、事業を営んでいる人たちもかなりの数が帰国している。チョンさんは、「現地韓国人は長い封鎖でナーバスになっており、不満が高まっている。何よりもこの事態がいつ終わるか分からないということ、終わりが約束されていないということのせいで苦しんでいる」と話した。
「ここまで長引くとは…中国事業をたたむことも考える」
中国生活は17年目、上海で5つの飲食店を経営するイ・スンウンさん(43)は、「もう中国を離れたいと考えたりする」と話した。
「ひと月前に(本紙と)電話した時とは違います。今は気持ちがとても複雑。あの時は私も2、3週間もすれば終わるだろうと思っていたんです。こんなに長引くとは思っていませんでした。今はいろいろな考えが頭をめぐっているんですが、中国という場所を離れたい気持ちも大きい」
イさんは、上海当局が公式に封鎖を開始する前の3月中旬ごろから1週間の間に次々と5店舗すべてを閉鎖した。イさんは、3月末の電話では「不安だ」と言いつつも「上海市が支援策を発表しており、約束は守られると信じている」と話していた。不安はあったが、その不安は大きくはなかった。
このひと月、上海市は封鎖を緩和するという約束を何度も破った。物品はまともに届けられず、病院運営などにも穴があるため市民の不満は大きい。イさんは「上海市はPCR検査を行って団地で感染者が確認されなければ地域内の外出を認めるとしているが、この条件を満たしても行き来できるのはマンション団地内のみで、外には出られないようにしている。もどかしい」と話した。
イさんは3月中旬から現在まで50日近く休業状態にある。売り上げは全くないが、店の家賃と40人あまりの従業員の月給は支給している。イさんは「4月10日に職員の月給を上海の最低賃金に合わせて支給した。私たちは少なくともそうできているからましな方で、経済的事情のためまったく支給できない店もかなりあると聞いている」と語った。食堂の従業員たちも困難な状況にあるのは同じだ。彼らは封鎖前の月給の20~25%だけでひと月ひと月を耐えなければならない。イさんは「5月10日にも給与を払わなければならないが、本当に厳しい。少ないと不満を漏らすというより、ありがとうと言ってくれる従業員が多いのはせめてもの救い」と話した。
「20年前と今の中国は変わっていない…苦々しい思い」
中国生活十数年目、上海で専門職として働いて9年目のイム・ハナさん(仮名、42)は、出勤できなくなって1カ月が過ぎた。イムさんの住むマンション団地は封鎖がやや弱いため、団地内はいつでも散歩でき、共同購入も活発だ。トンカツやマクドナルドのハンバーガー、北京ダックのような外食料理も注文できる。「地域ごと、団地ごとに封鎖の強度が少しずつ違うみたい。私も大変だけど、もっと大変な方々も多いです。私が職員たちに料理などを頼んであげたりもしますが、厳しいところは渡すのが難しいところもあるんですよ」
イムさんは自宅で働いているが、封鎖前と比べると業務量は少なく、効率も落ちる。いつ封鎖が解除されるか分からない状況のため、不安も高まっている。「今も問題ではありますが、2カ月以上このような状態が続けば、民間業者は本当に打撃が大きい。毎日売上が発生しないと回らないのですが、本当に心配です」
イムさんは2020年にも上海で封鎖を経験しているが、当時と今とは明らかに違う。イムさんは「2020年にはウイルスについて無知で情報もなかった。恐怖心が大きかった。今はオミクロン株がどのようなものか、他国はどのように対応しているのかがすべて分かる。状況は変わったのに、中国政府は私たちがまるで何も知らないかのように一方的に統制している。動物園に閉じ込められた動物になったみたいだという人もいる」と述べた。
中国で長く暮らし、中国に対する理解の比較的深いイムさんは、今回の事態で考えが少し変わったと語る。「これまでは中国政府の行動について『そういうこともありうる』と考える方でした。個人的に不満があっても、解決する方法がないからでもあります。でもペットを殴って殺したりとか、病院で呼吸器が必要時に供給されず患者が亡くなったりとか、2022年に起きてはいけないことが起きているのを見て、自分がこの地でずっと楽しく働いていけるのか分からないという気がしています」。イムさんは「20年前の中国と今の中国には全く変化がないということを改めて感じている。苦々しい思いだ」と話した。
上海市政府が封鎖による自営業者の被害などに対してどのような支援策を打ち出すのかも、まだ未知数だ。イムさんは「6カ月分の家賃の支援などの話が出ているが、確定したのではなく構想にすぎない。何かが確定してはじめて、今後どのように事業を再開するか話し合えるだろうが、それができない」と話した。