ウクライナ北部のチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所を占領し、後に撤収したロシア軍が、放射線被ばくの危険性を指摘する警告を無視し、同地域を勝手に掘り返して回り、被ばくしていたことが確認された。
CNNなどの主要外国メディアの9日の報道によると、ロシア軍は1986年の原発事故により土壌に高濃度の放射性物質が残る立ち入り禁止区域「赤い森」に塹壕やバンカーを掘り、約1カ月間駐屯していたことが分かった。ロシア軍は戦車とブルドーザーでこの区域を踏み荒らしていた。
ウクライナ国営の原発企業「エネルゴアトム」のペトロ・コティン代表は、複数の専門家とともに赤い森地域を訪問した後、依然として「非正常に高い放射線が測定された」と述べた。同氏は、同地域の土壌表面の放射線の数値は正常より最高で160倍高い可能性があるとし、「赤い森にほぼ30日間とどまっていたすべての占領軍は、様々な水準の放射性疾患を予想しなければならないだろう」と述べた。ウクライナのゲルマン・ガルシェンコ・エネルギー相も、ロシア軍は軍靴に赤い森の土壌をつけたまま原発のオフィスに入たことで、オフィスの放射線の数値を高めたとし、「本当にとんでもない。なぜ赤い森に行ったのか理解できない」と語った。エネルゴアトムはまた、ロシア軍が原子力安全研究所のオフィスと実験室からコンピューターとオフィスの什器を略奪し、実験室の機器や測定道具を破壊したと明らかにした。
チョルノービリ原発の安全技術責任者であるバレリー・シミョノフ氏も、「彼らは危険だからやめてほしいという我々の話を無視して、やりたいように何でもやった」と語った。「ニューヨーク・タイムズ」が8日に報じた。同氏は、ロシアの生物化学放射能部隊のある兵士がチョルノービリ原発の廃棄物貯蔵庫で放射性物質「コバルト60」を素手でつまんだと述べた。シミョノフ氏は、その兵士の放射線被ばく量は数秒でガイガーカウンターの測定範囲を超えるほど高かったとし、その兵士がその後どうなったのかは不明だと語った。また同氏は、ロシア軍が占領中だった先月中旬、使用済み核燃料を貯蔵している冷却プールへの電気供給が途絶え、火災の危機に瀕したものの、素早く収拾したと話した。
原子力安全の専門家は、まだロシア兵士からの放射性疾患の発生は確認されていないと語った。しかし、放射線被ばくによって発生するがんなどの健康上の問題は、数十年後に起こりうる。
ロシア軍は、2月24日のウクライナ侵攻と同時にチョルノービリ原発を掌握した。しかし先月31日にロシア軍のすべての部隊が首都キーウ(キエフ)を含む北部戦線から撤退した際に、チョルノービリ原発の管理権をウクライナに移譲している。