ロシアがウクライナに侵攻した翌日の25日、首都キエフ周辺で攻防が繰り広げられている。ウクライナ軍が効果的に対応できなければ、戦争初期に首都が陥落するという重大な危機に陥る可能性がある。米国防総省はキエフを狙うロシア軍の目的について「ウクライナの現政権を排除し、独自の統治体制を導入しようとしている」と警戒した。
オースティン米国防長官は24日、米下院ブリーフィングで「ロシアの機械化部隊がベラルーシを通ってウクライナに進入し、キエフから20マイル(32キロメートル)付近まで接近した。ロシアから進入した他の部隊も少し離れているが、いずれもキエフに向かっている。都市を取り囲み、政府を転覆させるためのものとみられる」と述べた。
米国防総省の高官はウクライナ東部、南部、北部で交戦が行われているとし、「この3つの軸はウクライナの人口密集地域を狙ったもの」だと述べた。さらに「ロシア軍は基本的に現政権を斬首し(decapitating the government)、独自の統治体制を導入しようとする意図を持っているというのが我々の分析だ。(開戦)初期から始まったキエフを狙った動きがこれを裏付ける」と明らかにした。
このような見通し通り、ロシア軍は侵攻当日からヘリコプターなどを動員し、空輸部隊の兵力をキエフ近くの空港に投入して、ウクライナ軍と交戦を繰り広げている。米CNNの現地取材陣によると、25日未明に轟音を2回聞き、少なくとも3回の爆発音が確認されたという。AFP通信はこの日、キエフ中心から北10キロの距離にあるオボロンスキー地域で爆発音と銃撃音が聞こえたと報道した。
ウクライナと北方国境を接しているベラルーシから進入したロシア兵力は、1986年、チェルノブイリ原発事故で有名な北部都市チェルノブイリをすでに占領したことが確認されている。ロシア軍が24日に行ったウクライナ空軍基地に対する160回のミサイル攻撃で、ウクライナ軍の防空網が機能不全に陥っており、空輸部隊を動員したロシア軍の進入作戦はこれからも続くものと見られる。ウクライナ内務省のアントン・ゲラシェンコ顧問は「キエフに向かってロシアの巡航ミサイルまたは弾道ミサイル攻撃が続いている」と述べた。
西側の情報関係者は、キエフが近いうちに過酷な運命に置かれる恐れがあると憂慮している。 欧州のある情報当局者は「多くがウクライナの抵抗にかかっているが、ロシアが数時間以内に首都キエフに圧倒的な戦力を集結させるものと確信している」と述べた。
ロシア国防省は、キエフ西方20キロのホストメリ空港をロシア軍が掌握し、空輸部隊を成功裏に投入したと明らかにした。 同空港は、ロシア軍にはキエフ包囲のためのより多くの兵力を空輸できる重要な施設になりうる。キエフ西側のアントノフ空軍基地をめぐる攻防戦も繰り広げられている。BBCの報道によると、ロシア軍が現在この基地を占領しているが、ウクライナ軍が奪還戦を繰り広げているという。
ゼレンスキー大統領は抗戦の意思を貫いている。彼はロシアの侵攻に対応して90日間有効な総動員令に署名した。ウクライナ当局は18~60歳の成人男性がウクライナ国外に出ることを認めない方針だ。
ゼレンスキー大統領は同日夜に行った演説で、ロシア侵攻の初日、軍人と民間人を含むウクライナ人137人が死亡し、316人が負傷したと明らかにした。彼は「ロシアが今日ウクライナ全域を攻撃した。我々の将兵は非常によく戦った」と述べた。 また「周辺には我々だけが残って国を守っている。誰が我々とともに戦おうとしているのか。誰もいない。誰がウクライナにNATO(北大西洋条約機構)加盟を認める用意ができているのか。皆恐れている」と述べ、国際社会の対応に不満を示し、国民の団結を訴えた。またロシアの「破壊工作グループ」がキエフに入ったとして、市民に警戒を緩めず通行禁止をきちんと守るよう呼び掛けた。彼自身はロシア軍の「攻撃目標第1号」だが、家族と共にウクライナに滞在していると述べた。
こうした中、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナと交渉する意思を明らかにし、対話が行われるかどうかが注目される。プーチン大統領は25日、中国の習近平国家主席と通話し、「ロシアはウクライナと高官級談判をすることを望んでいる」と述べたと、中国外交部が明らかにした。習主席は「中国はロシアとウクライナが談判を通じて問題を解決することを支持する」と応えた。この発表に続き、ロシアのクレムリン宮は、ロシアはウクライナと対話するために外交・国防省の官僚を含む代表団をウクライナ国境地域のベラルーシの首都ミンスクに送る準備ができていると明らかにした。
ゼレンスキー大統領も同日テレビ演説で、ロシアが要求する「ウクライナの中立国地位」についても話し合えると述べ、交渉の扉を開いた。