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ウクライナ戦は原発地域で起きた初の戦争…「外部電源喪失だけでも重大事故」

登録:2022-03-05 02:27 修正:2022-03-05 10:26
開戦直後、チェルノブイリ原発周辺の放射線量が急上昇 
車両移動のせいと明らかになったが、重大事故の不安は残る 
交戦中に意図せず原発を危険にさらす可能性はなお存在 
IAEA「原発地域における軍事衝突は初」自制求める
先月27日(現地時間)、ウクライナの首都キエフ(現地読みキーウ)近郊バシルキフ(現地読みバシリキーウ)で、ある男性がロシアのミサイル攻撃で破壊された建物の前を通り過ぎている/聯合ニュース

 戦争が起きて原子力発電施設が破壊されたり、統制不能になったとしたら? 原発の安全性を強調する側が扱うことをはばかる戦争中の原発の安全問題が、ロシアのウクライナ侵攻を機に現実的な問いとして浮上している。大型の原発が稼動中の地域において、全面的な軍事衝突が現実となったからだ。このような状況は、人類が原発を建設し、稼動を開始して以降、初めてのことだ。

 ロシアによる侵攻初日の先月24日、チェルノブイリ原発の周辺地域で交戦があったというニュースとともに伝えられた放射線数値の急上昇は、多くの人々に1986年のチェルノブイリ原発事故の悪夢を思い起こさせた。国際原子力機関(IAEA)は直ちにラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長名義の声明を発表し、その中で「核施設を危険に陥れるような行動は最大限自制せよ」と述べた。

 環境モニタリング情報公開プログラム「セーブエコボット(SaveEcoBot)」を確認すると、チェルノブイリ原発周辺地域のある地点の放射線(ガンマ線)量は、24日午後8時(現地時間)までは1時間当たり3.03マイクロシーベルトだったが、24日午後9時50分には1時間当たり65.5マイクロシーベルト、翌日午前10時40分には同92.7マイクロシーベルトにまで上昇した。別の地点で測定された放射線量も、同じ期間内に同1.89マイクロシーベルトから54.2マイクロシーベルト、72.2マイクロシーベルトへと急上昇している。

 このような放射線量の急上昇について、IAEAは翌日、核施設の破壊ではなく、軍用車両の移動のせいで起きたと明らかにした。地面に積もっていた放射性物質を大型車両が空中に舞い上がらせたことで発生した一時的現象だということだ。実際に、チェルノブイリ原発の周辺地域の2つの地点の放射線量は、1日午後4時現在では24日以前の水準に回復している。

 ウクライナには、欧州ではフランスに次いで多い15基の原発が運用されている。ロシアがこれらの原発を攻撃目標にしているという話は出ていない。それでも安心できないのは、交戦中に意図せぬ状況がいくらでも発生しうるからだ。これこそIAEAが懸念する理由でもある。原発を直接狙ったのでなくても、交戦中に誤って飛んできたロケットや砲弾が、原発の内外にある電力供給施設など原発の安全にとって重要な施設を破壊する可能性は排除できない。

 原発の安全を保つためには、冷却するための水と、冷却システムを稼動する電力を外部から供給し続けなければならない。これは、交戦状況で原発の運営がままならず、原発稼動を中止しても同じだ。原子炉に装填されている核燃料と、使用済み核燃料プールに保管してある使用済み核燃料から発生する熱は、冷まし続けなければならないからだ。このような状況において外部からの電力供給が断たれれば、放射性物質の大量放出という致命的な重大事故につながる恐れがある。2011年の日本の福島第一原発事故がその例だ。

 27日には、キエフ(現地読みキーウ)とウクライナ北東部ハルキウの核廃棄物貯蔵施設にロシアの発射したミサイルが落ちた。IAEAはこの日、被害規模は調査中だと明らかにしつつ「2つの事件は、双方の衝突で放射性物質を取り扱う施設が破壊されれば、深刻な被害をもたらしうるということを明確に示している」とし「核施設に対するあらゆる軍事的行動の自制」を求めた。IAEAはロシアの侵攻後、毎日ウクライナの原発の状況を伝えつつ、軍事行動の自制を求める事務局長声明を発表している。

 グロッシー事務局長は特に2日(現地時間)、戦争中のウクライナの原発の安全問題を取り扱うために開かれた理事会で「大規模な原発施設の真ん中で軍事的衝突が起きるのは今回が初」、「ウクライナの原発施設周辺での軍事的な衝突や活動が、原発施設やその周辺で働く人たちを妨害したり、危険に陥らせたりしないことが重要」だと強調した。

 「エネルギー転換フォーラム」のソク・クァンフン専門委員は「電力・通信施設が優先的な攻撃目標となる通常の戦争とは異なり、今回はロシアが例外的にこれを回避して原発の設備が破壊される確率が低いとしても、運転員が適切な時間に投入されなかったり、外部からの電力供給が途絶えて原子炉の冷却に失敗したりする危険性は依然として非常に高い。もちろん原発には非常ディーゼル発電機があるが、これも戦争状況においてはディーゼル燃料が必要時に供給されない危険性がある」と述べた。

 専門家は、特に使用済み核燃料プールが攻撃を受けて損傷を受けることを憂慮している。同施設は、原発の象徴である厚いドーム形の格納構造物の外に配置されている。ミサイルではなく従来の砲弾で攻撃されても、破壊される可能性が高い。

 原子力安全委員会の委員長を務めたカン・ジョンミン氏(原子力工学博士)は「2019年末現在で約910トンの使用済み核燃料が密集貯蔵されている古里(コリ)原発3号機の使用済み核燃料プールが、ミサイルなどで攻撃されて火災が発生すれば、約2240ペタベクレル(1ペタベクレルは1000兆ベクレル)のセシウム137が放出される可能性がある。そうなった場合の避難範囲を、毎月1日の模擬分析を12回実施して推定したところ、避難しなければならない人口は平均850万人に達した」と述べた。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1033319.html韓国語原文入力:2022-03-03 10:27
訳D.K

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