日本の岸田文雄首相がインドやカンボジア首相と相次いで会談し、ウクライナ戦争などに対する協力案を協議した。「反ロ戦線」に対してASEANは曖昧な立場を取っており、インドは一定の距離を置いている。
岸田首相は20日、カンボジアのプノンペンでフン・セン首相と2時間ほど首脳会談を行い、ウクライナ戦争について「武力の行使の即時停止及びウクライナ領土からの軍隊の撤退を求める」共同声明を出した。ロシアを狙った内容だが、声明には「ロシア」という国名は含まれなかった。これについて岸田総理は記者団に「すべての国が同じことをするのは現実的に難しい」と述べた。
フン・セン首相は岸田首相に会う前の18日、中国の習近平国家主席と電話会談した。中国外務省は「両首脳がウクライナ事態で均衡と公平性を堅持し、平和的解決を促すために努力するということで一致した」と明らかにした。日本経済新聞は「岸田首相がインドに続きカンボジアを訪れた。目的はロシア包囲網の穴を減らし、協力国を増やすことにあった」とし、「ASEANの対ロ批判に及び腰な姿勢が浮かび上がる」と報じた。
ASEAN10カ国はロシアや中国と緊密な関係を結んでいるか、領土問題などで対立している国もあり、一致した外交方針は決定しにくい構造だ。ASEAN諸国は先月、外相名義で発表したウクライナ戦争に関する声明で、「非難」ではなく「懸念」を表明するのにとどまった。今月2日に国連総会で採択されたロシア非難決議案も、ベトナムとラオスが棄権した。
岸田首相は19日にはインドの首都ニューデリーでインドのナレンドラ・モディ首相と首脳会談を行った。共同声明でウクライナ戦争について「戦闘行為の即時中止を要求する」と明らかにしたが、「ロシア」という国名は使わなかった。インドは3日、米国・日本・インド・オーストラリアによる協力枠組み「クアッド」(Quad)の首脳会談でも「反ロ制裁」に参加しなかった。インドが「反ロ戦線」に乗り出せないのは、ロシアと安全保障及び経済的に緊密な関係を維持しているからだ。防衛大学の伊藤融教授は日本経済新聞に「中国と国境を接するインドの安全保障上の懸念は海より陸地にある」とし、「ロシアとの歴史的なつながりなどインド側の事情を理解せずに経済制裁への同調などを迫れば、逆にクアッドの足並みが乱れかねない」と述べた。
一方、オーストラリアのスコット・モリソン首相は21日、モディ首相とオンライン首脳会談を行う。リース・トラス英外務相も「反ロ戦線」に協力を求めるため、今月中にインドを訪問する予定だ。