ロシアのウクライナ侵攻から1カ月目の24日に北大西洋条約機構(NATO)の特別首脳会議が予定されている中、NATOの東西の加盟国の立場の違いが相次いで浮き彫りになっている。
ロイター通信によると、ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は18日、首脳会議でウクライナに対するNATO平和維持軍の派兵を公式案件として提案することを表明した。ウクライナ平和維持軍の派兵は、モラヴィエツキ首相のウクライナの首都キエフ(現地読みキーウ)への15日の訪問に同行した同国のヤロスワフ・カチンスキ副首相が現地で初めて提案したもの。カチンスキ副首相は、平和維持と人道主義的目的の遂行のための人材の派遣を提案しつつ、彼らには「自衛する能力があるべき」と述べた。武装兵力を送ろうということだ。
米国などの主要加盟国とNATO本部がウクライナ派兵を完全に否定する中、ポーランドの提案は行き過ぎだという反応が出ている。オランダのカイサ・オロングレン国防相は「それを語るのは時期尚早だ」と述べた。平和維持を目的とする派兵であっても、NATOを紛争の真っ只中に陥れる恐れがあるとの懸念からだ。米国のジョー・バイデン大統領は「第3次世界大戦につながるだろう」との理由から、何度も派兵は不可能との考えを明らかにしている。
ポーランドが米国などの他のNATO加盟国を困惑させたのは、これが初めてではない。ポーランドは、ウクライナが自国のパイロットが操縦可能な旧ソ連製の戦闘機の提供を要請した際、28機のミグ-29を提供すると表明した。これを受け、第3国によるウクライナへの戦闘機提供を促しているかに見えた米国は態度を変えた。ポーランドがミグをひとまずドイツの米軍基地に送ると発表した際、米軍基地から発進した戦闘機がウクライナに向かうことで、ロシアに直接的な挑発と見なされる可能性に懸念を示したのだ。米国は、戦闘機はわずか数分でロシア領に進入できるため、他の兵器とは異なるとみなければならないと主張している。
モラヴィエツキ首相が15日にチェコのペトル・フィアラ首相、スロベニアのヤネス・ヤンシャ首相とともにロシア軍の攻撃を受けているキエフを訪問し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に会ったのも破格の出来事だった。これについては勇敢な行動だったとの評価もあったものの、欧州委員会などでは、事前調整ができていない訪問だとする当惑した反応もあった。
このようにNATOブロックの中には、ロシアに対する断固たる対応という原則的なコンセンサスがありつつも、東欧と米国および西欧の立場が分かれるのは、ロシアの脅威に対する「体感」が異なるためとみられる。ロシアに近いうえ、歴史的にロシアの圧制に苦しんできた東欧諸国は、ウクライナが崩壊すれば次は自分たちではないかという恐怖にさいなまれている。このため、ロシアの進撃はウクライナで食い止めなければならないという認識が強い。スロバキアも、旧ソ連製の高性能対空ミサイル「S-300」を隣国であるウクライナに提供することができると表明している。
しかし米国と西欧は、戦争拡大に対する恐怖が何よりも強い。ロシアが核兵器と生物化学兵器の使用など一線を越える行動に出る可能性も、このような懸念をさらに膨らませている。「ニューヨーク・タイムズ」は、米国の悩みどころは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに対する米国の軍事援助について、どの程度を「抑止線」と考えるかだと報じた。米政府の官僚たちは、戦闘機器の提供が困難なら、その下の段階のどの兵器までなら提供してもよいのかを、冷戦時代の代理戦争の事例まで参考にしながら考えているという。
対ロシア制裁やウクライナ援助など、手段を使い果たしつつある米国としては、ロシアに戦争を放棄させるための対策を講じなければならないだけでなく、東欧との調整という課題も抱えることになった。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は20日、バイデン大統領の欧州訪問について「ウクライナ人を支持し、プーチン大統領のウクライナ侵攻に立ち向かうよう世界を結集させ続けることに集中するものの、ウクライナ訪問の計画はない」と述べた。バイデン大統領は今回の訪問で、ベルギーのブリュッセルで開かれるNATO首脳会議と欧州連合(EU)首脳会議に出席する。ホワイトハウスは、大統領がポーランドも訪問することを明らかにしている。