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ロシア、相次ぐロケット発射・協力中止…自ら宇宙孤立招くか

登録:2022-03-07 02:13 修正:2022-03-07 07:59
英国と神経戦の末、ワンウェブ衛星の打ち上げ中止 
ドイツとは宇宙ステーションの実験協力中止 
数十年間続いてきた国際協力関係壊れる 
米国には宇宙ステーションからの撤退の脅しも
今月4日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地の発射台でワンウェブ衛星を載せたソユーズロケットを取り外している=ロスコスモスのツイッターより//ハンギョレ新聞社

 ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされているロシアと西側諸国との対立が、宇宙活動にまで広がっている。冷戦終結後約30年間続いてきた宇宙をめぐる国際協力網が壊れている。ロシアが米国をはじめとする西側諸国の制裁に対抗し、報復措置を相次いで発表するなど、自ら宇宙での孤立を招いている格好だ。

 4日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地で打ち上げられる予定だった低軌道インターネット衛星会社「ワンウェブ」の36基の衛星打ち上げが、英国政府に対するロシアの報復措置の一環として中止された。英国政府はワンウェブの大株主だ。

 これに先立ち、ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)は、打ち上げ予定日を3日後に控え、ワンウェブ衛星が軍事目的に使用されないことを保障し、英国政府がワンウェブの株を売却しなければ、衛星の打ち上げを行わないと圧力をかけた。しかし、英国政府とワンウェブはこれを拒否し、打ち上げ計画を取り消した。

ロシア連邦宇宙局のドミトリー・ロゴジン局長が放送でのインタビューで、宇宙協力に関するロシアの立場を述べている=ロスコスモスのツイッターより//ハンギョレ新聞社

 現在、428基の衛星を打ち上げたワンウェブは、年末までに計648基の衛星網を構築し、地球全域にインターネットサービスを提供するという計画だが、ウクライナ事態で今後の日程が不透明になった。ワンウェブは2019年からロシアのソユーズロケットだけで衛星を打ち上げてきた。

 また、ロシアは3日、米国企業にロケットエンジンの販売を中止すると発表した。NASAと宇宙ステーションの貨物運送契約を結んでいるノースロップ・グラマン社は、自社のアンタレスロケットにロシア製のエンジンを使用している。ロシアは、ボーイングとロッキードマーティンの合弁宇宙企業「ULA」の主力ロケット「アトラス5」に搭載されたロシアのエンジンに対する技術支援も行わないと明らかにした。

ロシア連邦宇宙局の職員らがバイコヌール基地のソユーズロケットに表示された国々の国旗を隠している=ロスコスモスのツイッターより//ハンギョレ新聞社

今年9月の火星探査船の打ち上げも見送られる見込み

 ロシアと欧州は宇宙協力をめぐって全面的に衝突する様相をみせている。

 欧州宇宙機関(ESA)は「我々の加盟国がロシアに課した制裁を全面的に履行していることを受け、ロシア連邦宇宙局と進めているプログラムを見直す」と発表した。ロシアは、フランス領ギアナの欧州宇宙基地からソユーズロケットを打ち上げる日程を全て中止し、スタッフを現場から撤退させたと発表した。これを受け、2023年初頭に打ち上げ予定のユークリッド宇宙望遠鏡を含め、いくつかの日程への支障は避けられない。

 今年9月に予定されている欧州とロシアの合作プロジェクトである火星探査船「エキソマーズ」の打ち上げも延期される可能性が高い。カザフスタンのバイコヌール宇宙基地で、ロシアのプロトンロケットに搭載されて打ち上げられる従来の日程を、公式に変更したわけではないが、現在の状況から見て、今年の打ち上げは不可能なものとみられる。

 またロシアとドイツは3日、それぞれ国際宇宙ステーション(ISS)で進める予定の科学実験協力を中止することにした。ロシア連邦宇宙局は「制裁に対抗して宇宙プログラムを調整し、国家防衛用衛星を製作することを最優先する」と発表した。ロシアは独自の実験は引き続き行うと付け加えた。

 ドイツ航空宇宙センター(DLR)もウクライナに対するロシアの敵対行為を糾弾するとし、現在進行中または計画段階のプロジェクトのうち、ロシア機関との協力をすべて中止すると発表した。また、今後ロシアとの新しいプロジェクトは考えておらず、必要であれば他の国際パートナーと協力すると述べた。

ロシアとドイツが国際宇宙ステーションでの実験協力を中止した=NASA提供//ハンギョレ新聞社

国際宇宙ステーションの運営に及ぼす影響に注目

 最も懸念されるのは、国際宇宙ステーションにおける協力の中止だ。

 ロシア連邦宇宙局のドミトリー・ロゴジン局長は2日、ツイッターで、「米国が制裁を続けた場合、国際宇宙ステーションにおける協力を再考する」と述べた。彼が同日シェアしたロシア国営放送とのインタビュー映像で、「米国人は実用的な人達なので、制裁にもかかわらず、宇宙ステーションでのロシアとの協力は継続して維持したがっている」とし、「なぜなら飛行と燃料供給の責任を負う我々なしでは宇宙ステーションを運営できないからだ」と述べた。ロシアは宇宙貨物船のエンジンを利用し、定期的に宇宙ステーションの高度を維持する役割を担っている。

 彼は「我々は米国が敵対的な態度を維持した場合、これからも国際宇宙ステーションに滞在すべきかどうかについて見直しを迫られるだろうが、そのようなシナリオは望んでいない」と述べた。しかし、タス通信とのインタビューでは「当面の協力中止よりは、2024年以後の未来について言及したもの」だと一歩後退した。

NASAのビル・ネルソン長官が今月1日に開かれた諮問委会議で発言している=NASA提供//ハンギョレ新聞社

米国は持続的な宇宙協力を重視

 一方、米国は依然として宇宙ステーションでの持続的な協力を強調している。米航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン長官は1日の諮問委会議で「NASAは国際パートナーと協力関係を維持し続けることで、彼らの安全と宇宙ステーションの安全な運営を保障する」と述べた。これは、これまで米宇宙当局が明らかにした唯一の公式立場だ。

 NASAはロシアとの協力中止に備え、ノースロップ・グラマンやスペースXと貨物および宇宙飛行士の輸送案について協議している。NASAはすでにスペースXの宇宙ステーションに向けた有人宇宙船の任務を追加承認した。

 国際宇宙ステーションには、米国とロシアを両軸にして、カナダや日本など16カ国が参加している。現在、米国人4人、ロシア人2人、ドイツ人1人で構成された第66次長期滞在クルー7人が任務を遂行している。

クァク・ノピル先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1033674.html韓国語原文入力:2022-03-06 15:19
訳H.J

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