米国は、ロシア軍による制空権掌握に苦戦しているウクライナに対し、第3国を通じた戦闘機の提供を進めている。
AP通信は6日、米国が自国製のF-16戦闘機を東欧の北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国に提供する代わりに、これらの国々が旧ソ連の製造したミグ戦闘機をウクライナに提供するという支援策を進めていると報じた。ソ連から独立したウクライナの戦闘機パイロットはミグ機種で訓練を受けたケースが多いため、ウクライナ政府はミグ機を求めている。
戦闘機の提供は、米国のウクライナに対する軍事援助の中で最も強力な内容になる見通しだ。米国の軍事援助は、ウクライナの防空網の強化のため、最近対空ミサイル「スティンガー」を提供する程度にとどまっていた。
しかし、戦況が切迫した状況で戦闘機が迅速に提供されるかどうかは見守らなければならない。ポーランドとこの問題について論議していると「フィナンシャル・タイムズ」に明かしたホワイトハウスの関係者は「実際にポーランドから戦闘機をどうやってウクライナに運ぶか」などの問題があると述べた。次期出庫分のF-16戦闘機の行き先は中国の脅威にさらされている台湾に決まっているため、米国がポーランドの航空戦力の空白を速やかに埋めるのは難しいという指摘も出ている。
米国の戦闘機支援方針は5日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がビデオ通話で300人あまりの米国議員に直接支援を訴えた状況で伝えられた。ゼレンスキー大統領は、NATOが自国の領空を飛行禁止区域に設定するか、米国がポーランドとルーマニアにF-16を提供し、両国が保有するミグをウクライナに提供するよう要請した。首都キエフ(現地読みキーウ)付近で数日にわたって停滞状態にあるロシア軍の大規模な行軍が、突破口を見出すためにロシア空軍の強力な空爆に依存する恐れがあるということも、戦闘機支援要請の背景にある。
ゼレンスキー大統領はオンライン会議サービス「ズーム」で発言を開始する際、米国の議員たちに対し、自分が生きている最後の姿となるかもしれないと語ったという。民主党のチャック・シューマー上院院内総務は「ゼレンスキー大統領は必死に訴えた」と語った。ゼレンスキー大統領は米国にロシア産原油の輸入禁止も要請している。
ウクライナが重ねて要請している自国上空の飛行禁止区域への設定について、米国やNATOは、ロシア軍との直接衝突の可能性があるため不可能だとの立場だ。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は4日「飛行禁止区域への設定を執行する唯一の方法は、ウクライナ領空にNATO戦闘機を送り、ロシアの飛行機を撃墜すること」だとし「それをすれば、欧州の多くの国が巻き込まれる全面戦争へとつながる」と述べた。ゼレンスキー大統領はこうした態度について「人々が亡くなるのは、今日からはあなた方の弱さと分裂のせいだ」と非難した。
ゼレンスキー大統領は5日にもジョー・バイデン大統領と電話会談を行い、米国の軍事的、人道的支援問題を話し合った。ホワイトハウスは、バイデン大統領は制裁を通じて「ロシアが支払うコストを増やす」ことの重要性を強調しつつ、ビザカードとマスターカードがロシアでサービスを中止したことを歓迎したと明かした。ビザとマスターは同日、対ロシア制裁に協力するため、このような措置を取ったと発表している。