米国に続き英国やオーストラリア、カナダなどが来年2月の北京冬季五輪に対し「外交的ボイコット」を相次いで宣言し、日本政府の悩みが深まっている。 自民党内の保守派らが岸田文雄首相に「早期の決断」を求めているが、日本政府は慎重な姿勢を崩していない。
圧迫の先頭に立ったのは安倍晋三元首相だ。安倍氏は9日、自身が会長を務める「安倍派」の総会で、「(中国の)新疆ウイグルで起きている人権状況には、政治的姿勢とメッセージを出すことが、我が国には求められている」とし、「日本が意思を表明するときは近づいているのではないか」と述べた。高市早苗党政調会長も8日、国会で「外交的ボイコット」を岸田首相に求めた。佐藤正久自民党外務部会長は6日、記者団に「閣僚などの政治レベルが参加するのは、世界に対して良いメッセージにならない」という考えを示した。
こうした圧迫にもかかわらず、岸田首相は9日の衆院本会議で「外交的ボイコット」について「日本政府の対応は適切な時期に外交上の観点、諸般の事情を総合的に勘案し、国益に照らして自ら判断したい」という既存の立場を繰り返した。日本経済新聞は10日付で「米国は唯一の同盟国で連携を重視してきた。中国は最大の貿易相手国で、2022年には国交正常化50周年を控える」と指摘し、岸田首相の対応の背景には「米中双方のメンツをつぶしたくないという立場がある」と報じた。
日本政府が検討する案は大きく3つだ。第一案は、同盟国の米国と歩調を合わせ、早期に「外交的ボイコット」を宣言するもの。この場合、中国との摩擦が懸念される。第二案は当分の間、状況を見守るもの。新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン」が拡散した場合、中国が先に外交使節団を受け入れない可能性があるという意見が外務省などから出ている。第三案は閣僚級より格下の人物を派遣するもの。中国を最大限刺激せず、米国など国際社会の流れに賛同する姿勢を見せることができる。
英国のリバプールで10~12日(現地時間)に開かれる主要7カ国(G7)外相会合でもこの問題が取り上げられる見通しだ。時事通信は10日付で、「政府は、2024年パリ夏季五輪を控えるフランスや、ショルツ政権が発足したドイツの動向などを探りつつ、日本の対応を決める構えだ」と報道した。
一方、中国は「信義」を強調し、日本を圧迫している。汪文斌中国外交部報道官は9日の記者会見で「中国は日本の五輪開催を支持した」とし、「日本が信義を示す番だ」と述べた。