来年2月の北京冬季五輪に対する米国発「外交的ボイコット」の動きが広がっている。 カナダと英国まで加勢し、英語圏の機密情報共有枠組み「ファイブ・アイズ」レベルに拡大している格好だ。
9日付のロイター通信などの報道によると、カナダのジャスティン・トルドー首相は前日、記者会見を開き「友好国の多くが中国政府の度重なる人権蹂躙(じゅうりん)状況を深刻に懸念している」とし、「北京五輪に外交代表団を派遣しないことを決めたのもこのため」だと述べた。
トルドー首相は「過去数カ月間、世界各国の同盟と共同対応案を論議してきており、同盟と歩調を合わせるのは非常に重要だ」とし、「カナダをはじめとする多くの国が政府代表団の派遣を見送る決定を下すとは、中国も予想できなかったはず」だと述べた。
カナダと中国は2018年12月、中国最大の通信装備会社ファーウェイ(華為技術)の孟晩舟副会長が米国の要請でカナダのバンクーバーで逮捕されて以来、関係がこじれた。孟副会長が逮捕された直後、スパイ容疑で中国で逮捕・起訴されたマイケル・スペーバー氏とマイケル・コブリグ氏らカナダ人2人は、今年9月に孟副会長の釈放と同時に「(健康上の不利益を理由にした)裁量保釈」で釈放され、「人質外交」の議論を呼んだ。
カナダ政府の「外交的ボイコット決定」について、現地の中国大使館側は声明を発表し、「イデオロギー的偏見や嘘、デマに基づいて下した決定」だと非難した。また、カナダの「体系的人種差別」を取り上げ、「史上最高の時期を謳歌している中国の人権状況について論じる資格もない」と主張した。
一方、英国のボリス・ジョンソン首相も前日、議会に出席し、「北京冬季五輪に対する効果的な外交ボイコットが行われる」とし「閣僚級を含む政府レベルで代表団を派遣しない」と述べた。ただし、ジョンソン首相は「スポーツ競技に対するボイコットは合理的ではないと思う」とし、選手団の五輪参加は予定通り行われると付け加えた。
米国(6日)とオーストラリア(8日)に続きカナダと英国まで参加し、米国が主導する英語圏の機密情報共有枠組み「ファイブ・アイズ」の5カ国がいずれも北京五輪に対する外交ボイコットに出た形となった。ただし、ニュージーランドは政府代表団の派遣を見送ったことを「外交的ボイコット」とせず、新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に掲げた。
外交的ボイコットへの参加国が増えるにつれ、欧州連合(EU)の対応に関心が集まっている。欧州議会はすでに今年7月、欧州連合レベルの外交ボイコットを求める決議を採択した。これと関連し、来年1月に欧州連合首脳会議の議長国を務めるフランスは7日、「欧州連合レベルで調整された対応策を講じる」と明らかにした。