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米中の「亀裂」で再び試される韓国の外交力…終戦宣言、水の泡に帰すか

登録:2021-12-08 02:05 修正:2021-12-08 06:53
2018年2月9日、平昌冬季五輪開幕式の様子。文在寅大統領と米国、中国、北朝鮮代表団などが出席した=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 米国が来年2月の北京冬季五輪に対するいわゆる「外交的ボイコット」を公式表明したことを受け、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が開幕式に出席するかどうかを含めて、韓国政府の動きに関心が集まっている。「平和の象徴」である五輪まで米中対立の「スケープゴート」になる中、韓国の悩みも深まっている。米国側が「選手団は出場するが、政府代表団は出席しない」という外交的ボイコットを宣言したことで、北京五輪を機とした南北米中の4者による「終戦宣言」は物理的に不可能になった。

 大統領府高官は7日、記者団に対し「韓国政府は2018年平昌(ピョンチャン)、2021年東京、2022年北京と続く今回の五輪が、北東アジアと世界平和と繁栄、南北関係に寄与することを望んでいる」という従来の公式見解を再確認した。また「米国が外交チャンネルを通じて(ボイコットの決定を)事前に知らせてきた」と確認し、「他国の外交的決定に対して特に言及することはない」とコメントを控えた。 「新疆ウィグル地域での集団虐殺と持続的人権蹂躙」などを理由にボイコット方針を明らかにした米国側とはかなり異なる姿勢だ。

 大統領府側は、米国政府が韓国に北京五輪の「外交的ボイコット」への参加を圧迫しないと期待しているようだ。例えば複数の大統領府関係者たちが「米国は韓国の状況を理解している」と強調した。原材料のサプライチェーンや限韓令(韓流制限令)など、中国と経済関係が密接な韓国の立場を米国が無視するのは難しいという説明だ。実際、米ホワイトハウスと国務省は「彼らが自ら決定するよう任せておく」、「各国の主権的決定事項」といった原則的立場を示している。

 韓国政府代表団が北京五輪の開会式と閉幕式に出席するかどうかについて、政府関係者は慎重な態度を示したが、「文在寅大統領は欠席、韓国政府代表団は出席」の可能性が比較的高い。

 まず、文大統領が無理をしてまで北京五輪に参加する理由は事実上なくなっている。米国がボイコットを宣言したため、ジョー・バイデン大統領が北京に来るわけがなく、北京五輪を機とした南北米中の終戦宣言も物理的に不可能になった。また新型コロナウイルスの感染拡大に対抗するため、23カ月にわたり朝中国境を閉鎖し「立てこもり防疫」を続けている北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が北京に姿を現す可能性もほとんどない。このように北京五輪が「朝鮮半島平和プロセス」の再稼働のための首脳外交の舞台になる可能性が事実上消えたため、文大統領が北京五輪に出席すべき理由もない。2018年平昌冬季五輪当時には、中国は習近平国家主席の特別代表として韓正共産党中央政治局常務委員(序列7位)を派遣しており、「格」を合わせるために大統領が直接動く必要もない。

 ひとまず政府は、体育関連主務長官である文化体育観光部長官を出席者としてすでに提出したという。ただし、これは大韓体育会が開幕式など参加者リストを公開してほしいという中国側の要請を受け、慣例に従って主務部長官の文化体育観光部長官が出席すると電算システムに登録したもので、政府の「最終方針」とは断定できない。

 北京五輪まで2カ月近く時間が残っているだけに、政府は「最終方針」の発表を見送り、動向をさらに見極めるものとみられる。大統領府は3日、ソ・フン国家安全保障室長と楊潔チ中国中央政治局委員の天津会談の結果を伝え、「習近平主席と文在寅大統領間の必要な意思疎通を図っていくことにした」と発表したが、「北京五輪」関連内容は含まれなかった。

 問題は、五輪ボイコットを巡る悩みよりは、これをきっかけに一段と激しくなる米中対立への政府の対応になる見通しだ。韓国は米国と中国の狭間で、サプライチェーンの再編と「朝鮮半島平和プロセス」などの問題で身動きが取れなくなっている。当事国である南北米中が参加しなければならない朝鮮半島終戦宣言の推進もそうだ。今回の北京五輪を機に、当事国間の会合など進展があるだろうという期待もあったが、現実化の可能性は低くなっている。米国が掲げた中国の新疆ウィグルでの人権弾圧に対する政府の対応も、重ねて注目されている。政府は「新疆ウィグルの人権問題は政府も注視しており、関連して外交的疎通を図っている」という基本的な立場を示しているが、バイデン政権が「価値観外交」の圧力を強めていけば、政府としても負担は大きくならざるを得ない。

 また、米国が9~10日に開催する予定の「民主主義サミット」で、同盟国の対中牽制がさらに強まる見通しであることも、韓国外交に課題をもたらすものとみられる。ニュージーランドが同日、外交ボイコットに加わることを表明しており、英国やカナダ、オーストラリア、日本などもこれに加わるという報道もある。

イ・ワン、キム・ジウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/1022380.html韓国語原文入力:2021-12-07 21:28
訳H.J

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