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バイデンの「中国一辺倒」と軍事中心主義、「トランプに類似」

登録:2021-12-08 03:02 修正:2021-12-08 07:09
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イ・ヨンインのグローバルアンテナ
米国のジョー・バイデン大統領が2021年9月21日、米ニューヨークで開かれた国連総会で演説している。同大統領は演説で「米国は力の模範ではなく、模範の力を示す」と公言したが、「リップサービス」という批判が出ている/ロイター

 米国でジョー・バイデン政権が発足して1年も経っていないが、外交政策に対する批判が強まっている。アフガニスタンからの米軍の無秩序な撤退が批判の引き金となった。しかしその根底には、ドナルド・トランプ前大統領の外交政策と何の違いも示せないまま、トランプの政策を反復記号のように踏襲しているという問題意識がある。米国の国際舞台への復帰を宣言したバイデンの「米国は帰ってきた(America is back)」とトランプの「米国第一主義(America first)」には何の違いもないというのだ。特に、「中国一辺倒政策」、「軍事中心主義」などが俎上に載せられている。

 米国の中道保守系シンクタンクである新米国安全保障センター(CNAS)のリチャード・フォンテーン最高経営責任者(CEO)は、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への2021年11月2日付の寄稿で、バイデン政権の「中国一辺倒」政策を批判した。バイデン政権はトランプ政権のクアッド(米印日豪4カ国の非公式の安保協議体)を受け継ぎ、AUKUS(オーカス、米英豪3カ国の安保同盟)を発足させた。アントニー・ブリンケン米国務長官は、中国との関係を21世紀の「最も巨大な地政学的試験」と描写している。さらに国防総省のコリン・カール政策次官は、中国に対応するには「全社会的アプローチ」が必要だと主張している。

単一の問題にすべてを注ぎ込む外交政策

 フォンテーン氏は、単一の問題を特別待遇する米国の外交政策のこのような傾向は、冷戦期間とそれ以降の数十年間に、様々なあり方で、そして周期的に表われていると指摘する。特定の戦略的挑戦が他のすべてよりも圧倒的だとの合意が形成される。これに歩調を合わせ、政策立案者たちは、他の地域や問題への関与は浪費であり非効率的だと宣言する。続いて「米国が目を向けていない間に密かに力を育んできた」最優先の脅威に国家レベルで直ちに対応することを決める、という指摘だ。

 例えば、人工衛星スプートニクの発射後は、ソ連の脅威が浮かび上がった。米国は共産主義の拡散を阻止するとしてラオス、アンゴラ、グレナダなど数十カ国の内政に介入した。同時多発テロ以降は「テロとの戦い」を宣言した。あらゆる地域でテロの脅威に対応したため、外交、軍事、情報資産を中国とロシアから引き出した。バイデン政権の現在の対中国政策も、これと同様になる危険性があるというのだ。

 単一の問題に没入するアプローチのあり方は、「複数の地域において複数の脅威が今なお存在する世界」とは合わないとフォンテーン氏は主張する。ロシアのハッカーグループは、米国の大統領選挙をはじめ、約27カ国でサイバー攻撃などを行ったが、民主主義の政治システムを守ろうという国際的な共同の努力はないというのだ。また、中国の一帯一路に対応するため、米国とメキシコの国境へと移民を送り出しているエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなどの中南米諸国には一貫した戦略を提供できずにいる。先端技術や革新に関しても、中国が唯一のライバルのように語っているが、インドや欧州諸国も米国の立場と衝突する技術・貿易政策を取っている。これを根拠にフォンテーン氏は「中国という単一の問題に焦点を合わせるのはとんでもない逆説だ。米国はグローバルな大国ではなく、複数の利害を同時には追求できない地域大国に近くなってきている」と指摘した。

 バイデン政権の「中国一辺倒」政策は、内容的に見ると外交よりも軍事、協力よりも競争と対決へと突き進んでいると、幾人かの専門家は批判する。これも前任のトランプ政権の「力の外交」という基調をそのまま受け継いだものだ。中国に比べて核戦力が圧倒的に優勢であるにもかかわらず、バイデン政権は1兆2000億~1兆7000億ドルを投じて、3大核戦力(大陸間弾道ミサイル、戦略原子力潜水艦、長距離爆撃機)を現代化するというトランプ政権の計画を引き継いでいる。

 それだけではない。バラク・オバマ政権時代に国防相の政策補佐官を務めたビクトリア大学ウェリントン校(ニュージーランド)のバン・ジャクソン教授は、「フォーリン・アフェアーズ」に10月22日付で「バイデン政権はミクロネシア連邦共和国への米軍基地の新設、グアム駐屯軍の拡大、オーストラリアとの共同によるパプアニューギニアへの新基地建設、パラオへの新レーダーシステム設置など、オセアニアへの米軍駐屯を拡大する計画を宣言している」と述べている。いずれも中国を意識した「軍事的」措置だ。核兵器のないオーストラリアの原子力潜水艦保有を支援するとしたAUKUSは、軍事主義的な対応の核心だ。このため、バイデン大統領の2021年9月の国連総会デビュー演説での「米国は力の模範ではなく、模範の力を示すだろう」という公言は「リップサービス」だという批判すらなされている。

息の詰まる議題とジレンマ

 現実主義国際政治理論の巨頭である米ハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授(国際政治学)は、別の角度からバイデン政権の外交政策を批判する。ウォルト教授は最近の「フォーリン・ポリシー」への寄稿で、イランとの対話に何の進展もないことなどから「バイデン大統領の成果が心配だ」と指摘した。バイデン政権が外交的成果を出せないのは、「古い傲慢さ」のせいで「スモール・ベースボール(野球でバント、進塁打、盗塁などの作戦を駆使して点を確実に取っていく戦術)をやろうとしないためだというのだ。インド太平洋戦略の追求、人権中心主義、気候変動への対応、世界の民主主義国家の団結などはすべて「息の詰まるような議題」であり、外交政策の関係者が一致団結しても、一つ成就させるのさえ難しい。

 そのうえ、このような課題は互いに矛盾する。アフガンから撤退した米軍を中国に対応する資源として用いれば、他の同盟国との関係を複雑にする。撤退そのものがアフガンの人権を後退させており、バイデン政権の人権中心主義とも反する。AUKUSはアジア太平洋地域において米国の立場を強化するが、国際社会の核不拡散の努力を侵害する。世界の民主主義国を結集させれば米国の地位は向上するだろうが、気候変動のような問題で中国とロシアの協力を得ることは難しくなる。要するに、より多くの目標を達成するために努力すればするほど、一つの領域での成功が他の領域での失敗を生むリスクを高めるというジレンマに陥る。バイデン大統領の支持率は低迷しているうえ、事実上「4年のみの大統領」となる可能性が高いため、このような指摘はより説得力が高まる。

イ・ヨンイン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1022246.html韓国語原文入力:2021-12-07 08:59
訳D.K

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