中国政府は、焦眉の関心事に浮上した「不動産税」(房地産税)を一部の都市に限り最低5年間、試験導入することにした。習近平国家主席が積極的に進めている「共同富裕」政策や、バブルが消えつつある中国の不動産市場などにどのような影響を与えるか注目される。
中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は23日、資料を発表し「一部地域への不動産税の改革試験実施に向けた決定」を議決した。全人代は資料で、今回の決定の趣旨を「不動産税の立法と改革を積極的かつ穏当に推進して住宅消費を合理化し、土地資源の節約・集中利用を誘導し、不動産市場の平穏かつ健全な発展を促進するためのもの」と説明した。不動産税の賦課対象は、住居・非住居の建物を問わず土地使用権を持つ者と、住宅など建物の所有者になると全人代は明らかにした。全人代から権限を委任された国務院は、今後具体的な納税地域と方法などを決定することになる。全人代は、資料の最後の部分に「条件が熟せば適切な時期に法律を制定する」と明らかにし、今回の処置が単なる試験実施ではなく、不動産税の正式導入を前提にしたものであることを明確にした。
今回の決定は、習近平指導部が大きなバブルが生じた不動産市場の安定と、蔓延した中国内の貧富の格差の是正に向けて本格的に乗り出したという明確なシグナルと言える。これまで中国では、「土地は国家の所有」という社会主義理念などによって、個人または企業は土地の「使用権」だけを国家から買い入れた後、その上に建物などを建てて使用してきた。そのため土地を「使用中」であるだけの個人または企業は不動産保有税を納めなかった。
もちろん中国でも不動産税の導入に向けた議論がずっと続いてきた。一例として、2011年に上海・重慶など一部の都市で不動産保有税が試験的に導入されたことがある。しかし当時は、房産税と名付け、税金を課する対象は「土地」ではなく「建物」であることを明確にした。それでも高価住宅と多住宅所有者の建物だけを対象としたため、不動産市場に及ぼす影響はほとんどなかった。大都市に不動産を所有した中産階級と全国に数十~数百戸の不動産を保有した共産党の高位幹部らがこの税金の導入に反対したことも、当局の決断が遅れた主な原因とされている。
そうした中、16日に公開された中国共産党の理論誌「求是」を通じて、習主席が8月の党会議で「不動産税の立法と改革、試験導入を積極的かつ着実に推進していく」と言及したという内容が公開され、不動産税が導入されるという観測が高まった。「共同富裕」を新しい統治理念に掲げた習主席が、中国の不動産市場のバブルや不動産格差をこのまま放置しないと決断したことがわかる。