19日午前、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と推定される弾道ミサイルを発射したことを受け、岸田文雄首相は遊説の日程を取り消し、急遽東京に戻るなど、敏感な反応を示した。防衛省レベルで対応する一般的な「弾道ミサイル」の際の対応とは異なり、自身の動線を分単位で公開し、日本の徹底した対応態勢を強調しようと努めた。
岸田首相は発射後約1時間後の午前11時16分、福島市内で記者団に対し「2発が発射された」とし、北朝鮮が連続的にミサイルを発射していることについて「大変遺憾に思う」と述べた。岸田首相は、31日に行われる衆院選のため、宮城県仙台駅で街頭演説をしてから秋田県に移動する予定だったが、午後3時頃、急遽首相官邸に戻り、今後の対応について協議した。首相官邸のホームページを見ると、岸田首相が北朝鮮のミサイル発射から6分後の10時24分、「不測の事態に備え、万全の態勢を取ること」などを指示した。それから52分後に記者団に対し、北朝鮮に対する遺憾の意を表明したことが確認できる。
岸田首相は国家安全保障会議(NSC)を開いた後、午後4時ごろ再び会見を行い、「北朝鮮による核ミサイル関連技術の著しい発展は、我が国と地域の安全保障にとって、見過ごすことができないものであると考える」としたうえで、「こうした状況に備え、いわゆる敵基地攻撃能力の保有を含め、あらゆる選択肢を検討するよう、改めて確認した」と強調した。
米国も懸念を共有した。米インド太平洋軍司令部は声明を発表し、「我々は北朝鮮の弾道ミサイルが今朝日本海(東海)に発射されたことを把握しており、韓国と日本はもちろん地域の同盟、パートナーとも緊密に協議している。我々はこうした行動を糾弾し、北朝鮮にこうした不安を助長する行動の自制を求める」と述べた。米国務省も、立場について質問した「聯合ニュース」の書面質疑に対し、「米国は北朝鮮の弾道ミサイル発射を糾弾する。これは多数の国連安全保障理事会決議に違反しており、地域にとって脅威となる」とし、「さらなる挑発を自制し、持続的かつ実質的な対話に出ることを北朝鮮に求める」と強調した。
同日、改めて浮き彫りになった問題は、韓日間の意思疎通の不在だった。韓国合同参謀本部は北朝鮮の短距離弾道ミサイル「1発を(発射したことを)把握した」と発表したが、岸田首相と防衛省の発表を引用したNHKなどは「2発が発射された」と報じた。これに対し合同参謀は午後、国防部記者団に対し「韓米が事前動向を注視しており、韓米情報資産が1発を探知した」と説明した。韓日軍当局間で疎通はなかったが、韓国の情報分析が正しいという意味に解釈できる。
中国は予想どおり関係国の自制を求めた。中国外交部の汪文斌報道官は定例記者会見で「最近の朝鮮半島問題関連国の軍事動向も注目している」とし、「現在、朝鮮半島情勢が決定的な時期を迎えた。関係諸国は大局的に考え、自制を維持し、朝鮮半島の平和安定の守護に力を入れるべきだ」と述べた。さらに「各国が対話と交渉という正しい方向を守り、『双軌並進』(非核化プロセスと朝米平和協定交渉の同時推進)と段階的かつ同時的原則に基づき、朝鮮半島問題の政治的解決プロセスを共同で進めることを望んでいる」という中国の従来の立場を繰り返した。