新型コロナウイルスが広がる中、中国は中南米で「マスク外交」に続き「ワクチン外交」にまでその動きを広げ、影響力を拡大している。世界保健機関(WHO)による中国製ワクチン緊急使用承認によって、このような流れはさらに加速するという見通しが出ている。
10日の「フィナンシャル・タイムズ」の報道を総合すると、新型コロナの第3波に苦しんでいる中南米10カ国に対してこれまでに供給されたワクチンは1億4350万回分に達する。このうち半分以上はシノバック、シノファーム、カンシノなどの中国製ワクチンだ。
具体的に見ると、中国の民間製薬会社であるシノバックは、これまでに7580万回分のワクチンおよび原料物質を供給した。一方、米国のファイザーと英国のアストラゼネカが供給したワクチンは、COVAXファシリティ(ワクチン共同購入のための国際的枠組み)を通じた物量を加えても5900万回分にとどまる。
実際に、今月6日現在までにチリで接種されたワクチン1538万回分のうち、1302万回分はシノバックのワクチンだ。ファイザーは228万回分、アストラゼネカは7万991回分にとどまる。チリは、2回接種の完了者(37.3%)を含めて1回以上のワクチン接種率が81.9%。中南米で最高の水準だ。
一方、中南米諸国の中で唯一台湾と外交関係を維持しているパラグアイは、COVAXファシリティを通じて極少量のワクチンを確保しているに過ぎず、苦境に立たされている。今月2日現在、接種完了者(0.2%)を含め、パラグアイの1回以上のワクチン接種率はわずか2.2%に過ぎない。
同紙は「ブラジルに対する最近のワクチン供給の減少がなかったら、中南米での中国製ワクチンのシェアははるかに高くなっていただろう」と指摘した。7日現在、接種完了者7.2%を含め、1回以上のワクチン接種率が22.2%にとどまっているブラジルでは最近、ジャイール・ボルソナーロ大統領が中国製ワクチンに否定的な立場を示したことで供給に支障が生じており、中国が報復措置を取っているのではないかという主張が出ている。
WHOが中国の国営製薬会社シノファーム(中国医薬集団)のワクチンに続き、シノバックのワクチンの緊急使用も承認すれば、中南米各国に対する中国製ワクチンの供給はCOVAXファシリティを通じてさらに増える見通しだ。同紙は専門家の言葉を引用し、「米国は中南米での伝統的な影響力の優位を保つために、ワクチン供給を最大限急がなければならない」と報じた。