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[記者手帳]バイデン政権発足から100日、米国と資本主義の変化始まるか

登録:2021-05-01 06:14 修正:2021-05-01 08:49
米国のジョー・バイデン大統領(前列)が今月28日、ワシントンの国会議事堂で1兆8千億ドル規模の「米国家族計画」を発表した。カマラ・ハリス副大統領兼上院議長(左側)とナンシー・ペロシ下院議長が拍手を送っている=ワシントン/AP・聯合ニュース

 米国のジョー・バイデン大統領の後ろには二人の女性、カマラ・ハリスとナンシー・ペロシがそれぞれ上院議長と下院議長として陪席した。コロナ禍で傍聴客の入場が制限されたが、ファーストレディのジル・バイデン氏の観覧席にはトランスジェンダーの青少年や銃器規制活動家、幼い頃米国に不法移民してきた者がオンラインで招待された。

 就任100日を翌日に控えて開かれたバイデン大統領の28日の施政方針演説の風景だ。女性が上・下院共に議長を務めるのは米国史上初めてで、性的マイノリティや非合法移民者が大統領議会演説に招待されたのも異例だ。この見慣れない風景だけではなく、バイデン大統領の就任100日と同日の演説もこれまでとは違うものだった。

 何よりも同日の演説の主軸となる1兆8千億ドル規模の「米国家族計画」が象徴する一連の大規模支出案は、政府の役割に対する大々的な見直しとして受け止められた。バイデン大統領も「我々は、民主主義が依然として機能しており、政府が依然として機能しており、我々に国民のためにできることがあるということを証明しなければならない」と述べた。

 ニューヨーク・タイムズは「バイデン、国家が国民にどう奉仕すべきかをめぐる変化を追求」という見出しの記事で「リンドン・ジョンソンの『偉大な社会』とルーズベルトの『ニューディール』時代以来、これまで見られなかった政府の役割に対する根本的な見なしを象徴する」と評価した。保守性向のウォールストリート・ジャーナルが「バイデンのゆりかごから墓場までの政府」という長文の社説で「彼の1兆8千億ドル計画案は働かざるもの食うべからずという古い社会契約を拒否するもの」だと非難したのも、バイデン大統領が政府の役割に対する大々的な見直しに入ったことをよく示している。

 1兆ドルの支出と8千億ドルの税金優遇で構成されたこの「米国家族計画」には、すべての3~4歳児童に対する無料託児▽無償のコミュニティカレッジ教育の提供▽最長12週までの有給家族・医療休暇▽児童税額控除拡大と延長などが含まれている。特に、児童税額控除と関連し、年間所得15万ドル以下の家庭の6歳以下の児童には年間3600ドル、7~18歳には年間3千ドルを児童養育補助金の形で提供するという案を盛り込んだ。児童1人当たり毎月300ドルを支給するということだ。中・下流層家庭のためのこのような税額控除は、先に発表された新型コロナ関連支援案に含まれたものだが、これを拡大して2025年まで延長する計画だ。

 専門家らは、同案が一時的ではあるが、いったん実施されれば、米国の福祉体系に革命的変化をもたらすものと予想している。3歳から養育について国が責任を持つという意味であり、中・下流層の働く親の負担が大幅に軽減される。

 バイデン政権発足後、すでに議会で通過した1兆9千億ドル規模の新型コロナ関連支援および景気浮揚案である「米国救護計画」や、議会に提出された2兆3千億ドル規模の社会基盤施設改善および雇用創出案である「米国雇用計画」に続く今回の「米国家族計画」は、1930年代の大恐慌時代のルーズベルト政権の「ニューディール」以来、最大となる政府の役割の拡大と言える。

 計6兆ドル規模のこのような支出案財源のために、「富裕層増税」も強く推進している。所得上位1%を狙って、所得税の最高税率を37%から39.6%へ、100万ドル以上の資本利得には資本利得税の最高税率を20%から39.6%へ、法人税の最高税率を21%から28%へ引き上げる案を進めている。

 1980年代にロナルド・レーガン政権が「政府が問題」だとして減税と政府の役割縮小を進めてから40年ぶりに、バイデン政権は「政府が解決策」だとして増税と政府の役割拡大に転じたのだ。均衡財政に基づいた小さな政府を新自由主義時代の政府哲学として主唱してきた米国が、今度は率先してそれを崩している。減税を進めたドナルド・トランプ前大統領もコロナ禍の前で2兆3千億ドル救護案と全国民に救護金の支給を主導し、政府の役割の拡大を既に予告した。

 大きな政府は2008年の金融危機に続くコロナ禍や中国の浮上による米中対決、地球温暖化などに直面した米国の対応といえる。金融危機とコロナ禍で悪化した所得不平等の解消や中国を制圧するための競争力の強化、気候変動対応と関連した経済パラダイムの変化が目的だ。このためフィナンシャル・タイムズは大恐慌を克服するために景気を刺激し、福祉体系を作った「ニューディール」のセオドア・ルーズベルトや人工衛星を先に打ち上げたソ連の浮上を受け、高速道路の建設および基礎科学研究で米国の競争力改善を促したドワイト・アイゼンハワー、民権および福祉拡大を成し遂げた「偉大な社会」のリンドン・ジョンソン大統領の歴史的業績すべてをバイデン大統領が追い求めていると分析した。

 バイデン大統領の100日は、米国と資本主義を変えようとする変化の始動なのか。彼が進める支出が承認されるかどうかと、その施行の効果が試金石となるだろう。

チョン・ウィギル国際ニュースチーム先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/993433.html韓国語原文入力:2021-05-01 02:30
訳H.J

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