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[寄稿]アジア人嫌悪はニューノーマル?

登録:2021-04-05 00:48 修正:2021-04-05 06:59

 米国では毎日のようにアジア人を標的にしたヘイトクライム(嫌悪犯罪)が起きている。2020年だけでも3800件以上にのぼる。このうち68%は被害者が女性だった。オンライン上の人種差別まで含めれば数え切れない。

 ツイッターを含むインターネット上では、アジア人、特に東アジア人に対する人種差別が頻発し、中国や中国人に対するヘイトスピーチも急増している。トランプ前大統領は新型コロナウイルスをしつこく「中国ウイルス」と呼んだ。その度にインターネットは「アジア嫌悪」であふれた。露骨な嫌悪ではなくても、アジア人に対する嫌悪は米国社会の至るところに入り込んでおり、内在していた嫌悪が今になって仮面を脱いで噴出しているという根拠が、続々と出てきている。

 近ごろ発表されたある研究によると、ある地域で最初の新型コロナウイルス感染者が確認された時、その地域の人々はグーグルでアジア人を蔑視する時に使う嫌悪表現を以前よりはるかに多く検索した。初期に非常に深刻な危機を経験したイタリアなどの欧州諸国でも、コロナとともにアジア人に対するヘイトクライムが大きく増えた。移民と難民への反対を前面に押し立てて成長してきた極右政治家たちは、このような差別と嫌悪をさらに煽った。

 米国におけるアジア系の人口は約2200万人(2020年現在)。全体の6%弱だ。多くはないが、アジア系は米国社会で最も急速に人口が増えている集団だ。アジア出身の移民も着実に増加しており、2050年には米国人口の9%がアジア系となるだろう。人口は増えているものの、アジア系米国人に対する米国社会の認識は、かつてとあまり変わっていない。米国に移住してきた人であれ、米国で生まれ育った人であれ、永遠の異邦人、よそ者扱いされる。アジア人に対するよくあるヘイトスピーチは「自分の国に帰れ!」である。米国で生まれ育ったアジア人も他の米国人に会うと、「英語はどこで習ったのか」「どこから来たのか」など、答えにくい質問を受ける。実際の出生地を教えても「そこ以外の本当の故郷はどこか」という質問が続く。白人でも黒人でもない「見知らぬ東洋人」は英語が母国語であるはずがなく、米国中西部の小さな町で生まれたということも信じがたいからだ。個人的な偏見が積もれば、社会的な通念にもその偏見が投影される。ニュージャージー州3区選出の連邦下院、アンディ・キム議員は先月、ツイッターに、自分が国務省で勤務していた時、姓が「キム」であることを理由に韓国関連の業務から排除されたと書いた。キム議員は、このような扱いがアジア系には特に多いと指摘する。

 アジア嫌悪を防ぐための努力も様々に展開されている。「アジア人に対する嫌悪をやめよ」というスローガンは、ハッシュタグ(#StopAsianHate)や日常でよく接するようになった。政治的にもっと声をあげようという動きも始まっている。

 過去の選挙では、アジア系米国人の投票率は他の人種より低かった。平均教育水準や所得は最も高いのに、投票率は白人や黒人より10%以上低かった。しかし2020年、主要競合地域だったジョージア州で、アジア系米国人有権者は4年前より91%も高い投票率を記録し、選挙情勢に決定的な影響を及ぼした。アジア系米国人は3人に2人が民主党支持だ。アジア人が大挙投票したことで、ジョー・バイデンは僅差でジョージア州の選挙人団を確保することができた。また、決選投票まで行われた上院の2議席も民主党が獲得した。

 にもかかわらず、政界では依然として特に注目は集めていない。米国の歴史上、最も多様な内閣を構成すると述べたバイデン政権も、通商代表にアジア系を任命したのがすべてだ。省庁の長官に推薦または任命された者の中にアジア人はいない。アジア系上院議員たちの公式な抗議があって、ようやくバイデン政権はアジア系の人物に大統領の高位諮問委員を任せる予定だと述べた。アジア嫌悪がパンデミック以後のニューノーマルにならないようにするためには、アジア系の声が米国社会の各界各層で、大きくはっきりと聞こえるようになるよう努めなければならない。バイデン政権がこの問題をどのように処理し、克服するのかも注視し続けなければならない。

//ハンギョレ新聞社

ユ・ヘヨン|ニューヨーク大学政治学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/989532.html韓国語原文入力:2021-04-04 14:52
訳D.K

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