日本政府が13日、福島第一原発の敷地に保管している汚染水を海に放出することを決めた。2年後から始めて約30年間にわたり海洋放出を続けるという。福島第一原発の汚染水は現在125万トンに達しており、今後も増え続ける予定であるため、海に流れる量は計り知れない。「人の命と環境全般に脅威になり得る」という警告にもかかわらず、日本は「国際基準に合致する」として周辺国の懸念を感情的対応と見なしており、特に韓国の反発は「反日感情」だと見ている。
福島第一原発は2011年の東日本大震災の際、爆発事故で稼動が中止され、現在廃炉作業が進められている。事故で溶けだした核燃料の冷却水に雨水と地下水が染み込み、今も汚染水が増え続けている。日本政府はかなりの期間にわたり「多核種除去設備(ALPS)で1次浄化を行った結果、トリチウムを除いた放射性物質が基準値以下に減った」と広報してきた。
政府の発表に対する信頼が崩れたのは2018年。日本のメディアの報道により、汚染水の約70%にセシウムやストロンチウム、ヨウ素など人体に致命的な放射性物質が基準値以上残っていることが明らかになったのだ。汚染水の状態は今も変わっていない。「トリチウム水」から「ALPS処理水」へと、呼び名が変わっただけだ。日本政府は現在、放射性物質があることは事実だが、2次浄化を行えば基準値以下に下げることができると主張している。東京電力は汚染水全体の0.16%である2千トン程度を2次浄化したところ、(放射能物質が)基準値以下に下がったとし「科学的に問題がない」と明らかにした。
「心配いらない」と主張しているのは日本政府と東京電力だけではない。韓国の著名な原子力教授らからもその主張に賛同している。東京電力が作ったグラフを見せながら「大げさに騒ぎ立てる必要はない」と言う。漁業関係者や水産業に被害を与えかねないという理由からだ。
「加湿器殺菌剤」の有毒物質によって今も苦しんでいる被害者たちや、チリ一つなく清潔に管理されていた半導体工場で白血病を発症し死亡した労働者たち、そして粒子状物質(PM2.5など)で子どもたちが思う存分外で遊べない社会、気候変動がもたらした時々刻々と変化する環境を目撃しながら生きている平凡な人たちは、環境問題に敏感にならざるを得ない。それに、放射性物質が基準値以下なら、本当にそれでいいのだろうか。セシウムやストロンチウム、ヨウ素などの猛毒性物質は、普通の原発では海に流してはならないものだ。自然や食べ物、レントゲンなどによって、私たちは今もやむを得ず放射線にさらされている。さらなる危険を厳しく管理するのは常識だ。
チョン・ウィヨン外交部長官は19日、国会で汚染水について、「国際原子力機関(IAEA)の基準に合致する適切な手続きに従うのであれば、あえて反対することはない」と述べた。それを聞いて少なからず当惑した。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の2019年世界貿易機関(WTO)紛争で苦労して勝ち取った成果を忘れたのだろうか。
韓国の福島産水産物の輸入禁止措置について、日本が提訴した事件で、韓国は一審敗訴の判定を覆し、上訴機構(最終審)で勝訴した。日本側は、福島産の水産物をサンプル調査した結果、セシウムなどが基準値を下回っており、他国の水産物と変わらないのに、輸入が禁止されるのは不当だと主張した。これに対し韓国側は原発事故後、放射性物質が流出するなど日本の特別な環境を他国とは異なる「潜在的危険」と捉え、「政府は国民の生命と健康のために危険要素を最大限下げる義務がある」という論理でWTOを説得し、貴重な勝利を手にした。環境と健康より貿易関係を重要視していたWTOでさえも、時代の変化を反映し始めたのだ。
日本政府は海洋放出ではなく、より安全な方法を模索しなければならず、隣国である韓国はより厳しく(安全性を)要求しなければならない。危険に怯えることなく健康に暮らしたいのは、人間の基本的な権利であるからだ。