ヤンセンファーマやアストラゼネカなどの一部の新型コロナウイルスワクチンが稀な血栓を引き起こすとの報告が物議を醸している中、専門家たちは新型コロナウイルス感染症そのものが最も深刻な血栓の誘発要因だと主張している。
米ニューヨークのファインスタイン医学研究所のアレックス・スピロプーロス教授は20日、CNNに出演し「血栓の専門家として、コロナは今までに経験したものの中で最も深刻に血栓を引き起こす要因だと言える」と述べた。
コロナが血栓を誘発することを医師たちが知ったのは約1年前のことだった。コロナ患者たちが脳卒中を起こして救急室に運ばれて来た時、その患者を救うための透析器などの医療機器が血栓によってまともに機能を発揮できないという事態を経験したのだ。集中治療室の専門家たちによって、コロナ患者の心臓や腎臓、その他の臓器での「おびただしい血栓」が報告されてもいる。
スピロプーロス教授は「私は25年間この仕事をしてきたが、このような水準の血栓は見たことがない」と述べた。病理学者たちは、コロナ患者の遺体を解剖するたびに、ほぼすべての臓器から血栓を発見した。
スピロプーロス教授は同僚たちと共に、一連の研究を通じて、コロナ患者に血栓溶解薬を投薬して治療すれば、血栓を劇的に減らしたり、防いだりできることを確認した。さらに、コロナワクチン接種でコロナを予防することこそ、血栓を防ぐ最善の方法であることも分かった。このため血栓の専門家たちは、非常に稀に現れる血栓が恐れられ、ワクチン接種そのものが避けられる現象について、逆説的だと感じている。
先週、米国の疾病予防管理センター(CDC)と食品医薬品局(FDA)は、ヤンセンファーマのワクチンの接種を受けた人に血栓が発生したとの報告を受け、暫定的な接種の中止を勧告した。欧州医薬品庁(EMA)は20日、発生は稀であるもののヤンセンファーマのワクチンと血栓の関連性を発見したと明らかにしつつ、ワクチン接種の全般的な利益の方が危険よりも大きいと付け加えた。
コロナワクチンが血栓を引き起こすのは、未知の免疫反応と関連があるとみられる。しかし専門家たちは、ワクチン接種によって血栓ができる確率は極めて低いと強調する。スピロプーロス教授は「ワクチンで稀な血栓ができる可能性は、雷に打たれる可能性ほど低い」と述べた。同氏は「コロナで入院する可能性は成人100人に1人、その人に血栓ができる危険性は5~6人に1人だが、ワクチン接種によって血小板の減少を伴う稀な血栓ができる可能性は100万分の1にすぎない」とし「ワクチン接種の利益は、血栓発生の危険性をはるかに上回る」と述べた。
血栓は毎年90万人の米国人に発生し、そのうち10万人は血栓症で死亡する。それほど珍しい病気ではないということだ。カナダ・マックマスター大学医学部のマーク・クラウダー学部長は「ワクチンは疑問の余地なくコロナに関連する血栓の危険性を劇的に下げることができる」と述べた。