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ブラジル変異株…世界へ拡散の恐れ

登録:2021-03-23 03:17 修正:2021-03-23 07:54
ブラジルのコロナ拡散が制御不能になっているにもかかわらず、事実上傍観しているボルソナーロ大統領が21日、自身の誕生日に際し、大統領官邸を訪れた支持者たちに向かって手を上げている=ブラジリア/AFP・聯合ニュース

 2億1000万人の人口を抱える南米最大の国ブラジルでは、新型コロナウイルスの感染拡大が制御不能の状態に陥っており、周辺国をはじめ全世界を脅かす状況にまでなりうるとの懸念が示されている。

 ブラジルにおける1日当たりのコロナ感染確認数は、19日には9万570人を記録し、昨年のコロナ禍開始以来、最多となった。同日の1日当たりの死者数も2815人で、史上最多だった16日の2841人に迫った。1日当たりの感染確認数は、20日には7万9069人、21日には4万7774人にまで減っていたものの、週末の検査件数減少などによる一時的な現象であった可能性が高い。米国ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、22日午前現在、ブラジルの累計感染者数は1199万8233人、死者数は29万4042人と、米国に次いで多い。

 世界のコロナ状況が多少安定しているのとは異なり、ブラジルの状況が悪化の一途を辿っているのは、昨年11月に北部のアマゾナス州で初めて確認された変異ウイルスを防げていないためだ。「P.1」と呼ばれるこのウイルスは感染力がはるかに強く、既存のウイルス用に開発されたワクチンを回避する能力もあることが分かっている。

 変異ウイルスが全国に広がったことで、ブラジルの状況は感染者の増加、医療施設のマヒ、死者の急増という悪循環の様相を呈している。特に死者は、2月下旬から日を追うごとに急激に増加している。「アワー・ワールド・イン・データ」の20日現在の集計によると、人口100万人あたりのブラジルの1日の死者数は、世界平均値(1.13人)の9倍を超える10.52人を記録している。この数値は1カ月で倍増したものだ。

 死者の急増は医療システムのマヒによるところが大きい。米CNNは21日、ほとんどの地域で集中治療施設の患者収容余力が20%しか残っておらず、一部の地域では収容余力が底をつき、患者を帰らせる事態が起きていると報じた。さらに酸素呼吸器や医薬品はもとより、患者用の酸素すら不足し、入院患者もまともな治療が受けられずにいるとCNNは報じた。

 現地の日刊紙「イスタドゥ・ジ・サンパウロ」は、ブラジルの状況が周辺諸国をも緊張させていると指摘した。周辺諸国は変異ウイルスの拡散に注目し、防疫強化に取り組んでいると同紙は伝えた。

 米国の専門家も、相次いでブラジルの状況の深刻さに警告を発している。米国科学者連盟(FAS)の上級研究員で疫学専門家のエリック・ファーグルディング氏は「ブラジル変異株の拡散を防げなければ、全世界が同時に危険に陥る可能性もある」と警告した。イェール大学免疫生物学科の岩崎明子教授もツイッターで「ブラジルは絶体絶命の危機に陥った」とし「ブラジル変異ウイルスに合わせたmRNAワクチンをできる限り早く支援しなければならない」と訴えた。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務総長も先週、「ブラジル当局が現在の状況を深刻に受け止めなければ、隣接国はもちろん、全世界にも悪影響を及ぼすだろう」と指摘している。

 このような状況にもかかわらず、ジャイール・ボルソナーロ大統領は、市民の自由と経済の保護を盾に封鎖措置を拒否するなど、事実上傍観しているとCNNは指摘している。

シン・ギソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/987749.html韓国語原文入力:2021-03-22 16:27
訳D.K

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