従来の新型コロナウイルスより感染力の強い変異株の感染例が、地域社会でも徐々に増え始めたことから、変異株への対処が迫りくる「流行の第4波」防止のカギとして浮上している。専門家は、変異株が韓国国内で主流になる前にワクチン接種を急ぐべきだと助言している。
昨年12月に国内で初めて変異株の感染が報告されて以来、これまでに確認されている変異株の感染例は182件。最近、釜山市(プサンシ)の葬儀場、蔚山市(ウルサンシ)のゴルフ練習場、京畿道広州市(クァンジュシ)の食品会社など、5件の集団感染例から変異株が検出されるなど、計10件の地域社会における集団感染が変異株と関係している。京畿道金浦市(キムポシ)の一家関連の集団感染では、「南アフリカ変異株」が初めて確認されている。高麗大学九老病院のキム・ウジュ教授(感染内科)は、「京畿道、仁川(インチョン)、釜山など、変異株が発見された地域がすべて異なる。発見された事例は氷山の一角であり、首都圏と釜山地域にすでに広がっていると考えなければならない。第4波へと向かう『ティーピングポイント(臨界点)』は、変異株の地域社会での拡散」だとの見通しを示した。
防疫当局は、感染経路が不明な変異株の集団感染が増え、次第に変異株が「優勢種」となることを懸念している。全国民の70%にワクチンを接種し、11月に集団免疫を形成するという計画に支障をきたす恐れがあるからだ。変異株は、集団免疫に必要な抗体の形成率を落とすだけでなく、強い感染力のため、集団免疫の形成に向けてさらに多くの人に接種しなければならない状況を招きうる。変異株は従来のウイルスより感染力が強いだけでなく、すでに開発されているワクチンがまともに効かないという分析が支配的となっている。南ア変異株については「アストラゼネカのワクチンの予防効果は10%程度にすぎない」「モデルナのワクチンは効果が12.4分の1、ファイザーのワクチンは10.3分の1になった」などの研究結果が出ている。
しかし、専門家たちはむしろ、変異株が拡散する前にワクチン接種を急ぐべきだと強調する。高麗大学安山病院のチェ・ウォンソク教授(感染内科)は、「変異株が主流になると、変異株に効果のあるワクチンを再び接種しなければならないが、従来のワクチンの接種歴がある人が多い方が再接種に対応しやすい」と述べた。ワクチンを接種した人は追加でもう1度だけ接種すれば済むものの、1度も接種を受けていない人は2度接種しなければならないということだ。既出のワクチンは、予防効果は落ちるが、重症への進行を遅らせる効果は依然として期待できるという分析もある。
結局カギとなるのは、変異株の広がりを最大限抑制しつつ、ワクチン接種の速度を上げることだ。防疫当局は9日のブリーフィングで、「契約した製薬会社ごとの、変異株に関するさらなる研究・開発」を行い、変異株に対応する効果的なワクチンの導入を進める一方、大規模な次世代遺伝子検査によって変異株の確認を強化していく方針を明らかにした。
9日0時現在で、過去24時間以内に新たに確認された感染者は446人。京畿道安城市(アンソンシ)の畜産物加工処理場、光州市西区(クァンジュシ・ソグ)のコールセンターなど、製造業の事業所だけでなく、サウナ、保育園、病院などでも感染が相次いだ。