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人種・ジェンダーを越えて…バイデン政権「21世紀のニューディール」夢見るか

登録:2021-03-13 10:31 修正:2021-03-13 11:00
[土曜版] 来週の質問
米国アラバマ州ベッセマーのアマゾン物流センターの労働組合結成を応援しようと職場を訪問した、テリ・シューエル議員(中央)などの民主党下院議員らが5日(現地時間)、近くの物流産業労働組合ビルの前でシュプレヒコールを上げている。この物流センターの労働者約5800人は、世界最大の電子商取引業者であるアマゾンで初の労働組合の結成の賛否を問う投票を今月29日まで行う。ジョー・バイデン大統領は、使用者側が反対票を投じるよう強く勧めているというニュースに対し「脅迫、強要、反組合の宣伝をしてはならない」と警告した=バーミンガム/AFP・聯合ニュース

 「(労働)組織権保護(PRO)法こそ民権法だ。団体協約を結べば、全員が同じ賃金を得られる。男女、黒人と白人の間に違いはない。LGBTQや女性に対する保護もある。法だけでは彼らを常時保護することはできない。彼らの団体協約が彼らを保護する」

 米下院で9日(現地時間)、賛成225、反対206で通過した労働法改正案だ。「組織権保護法」をめぐり、米国最大の労働組合組織である米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)のリチャード・トラムカ議長が述べた言葉だ。この法は、米国で労働法が制定された1930年代のニューディール時代以後では、労働権の拡大のための最も積極的な法案だ。

 この法が発効すれば、懲戒と解雇に対抗し組合を組織しようとする労働者を保護する一方、労働権を侵害する使用者を処罰する政府の権限が広がる。組合結成を防ぐために使用者が労働者に強制する集まりなども違法となる。巨大プラットフォーム企業が職員を個人事業主と定めることに制約を加え、ウーバーのエンジニアや宅配労働者も組合員になる道が開かれる。

 民主党のジョー・バイデン政権は、銃規制、性的マイノリティの権利、移民、投票権の拡大など、米国の平等と公正、安定に向けた12の法案に優先順位を置いている。そのなかでもこの法は、最低賃金引上げ法とともに、バイデン政権が米国社会の地形改造のために最も力を入れる議題だ。バイデン政権は10日、議会を通過した1兆9000億ドル(約207兆円)規模の史上最大の景気浮揚策に、1時間当りの最低賃金を15ドル(約1600円)に引き上げる法案も含めようとしたが、成立させることはできなかった。今回の組織権保護法も上院を通過する見込みは高くない。二つの法はどちらも、共和党だけでなく民主党の保守的な議員が反対しているからだ。

 バイデン政権は、二つの法が通過しなければ、来年11月の中間選挙で議題として前面に出す計画だ。この法に対する国民的な支持だけでなく、ドナルド・トランプ前大統領を支持した低学歴の白人中下流層の間でも支持が高いからだ。非営利団体の全国雇用法プロジェクトの調査によると、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ジョージアなど、来年の中間選挙で激戦となる選挙区で、有権者の3分の2が最低賃金引上げを支持した。前回の大統領選挙の時にバイデン氏を支持した有権者の82%、大学教育を受けていない白人の63%が支持した。低学歴の白人層はトランプ氏の主要支持層だ。トランプ政権発足後、民主党陣営で起きている「アイデンティティ政治」克服の動きが背景にある。

 民主党は、1960年代のリンドン・ジョンソン政権が社会福祉と人権を拡大した「偉大な社会(Great Society)」政策の後には、労働・賃金・福祉などで明確な実績を示すことはできなかった。むしろ、1980年代以後、ロナルド・レーガン大統領の共和党が主導する、減税、社会福祉の縮小、政府支出削減などに押された。これに対し民主党は、ビル・クリントン大統領以後、ジェンダー・人種・女性などのマイノリティと弱者の問題に比重を置き、支持層を拡大することに力を注いだ。大衆の全般的な社会経済的な地位向上が不在のなか、マイノリティと弱者を中心に違いを強調する政策は「アイデンティティ政治」だと指摘された。

 これは、保守層と共和党が掲げた「逆アイデンティティ政治」に巻きこまれたという批判を受けた。社会経済的な地位や社会的な関心が相対的に悪化した低学歴の白人中下流層が、白人アイデンティティを強調したトランプ側の支持に転換したからだ。

 現在の連邦レベルでの最低賃金は7.25ドル(約800円)だ。インフレを考慮した現在の実質価値を基準にすると、1968年の12ドル(約1300円)が最高値だった。その後、30%以上も下落した。成人が家族を扶養する最低生活賃金は、1時間当り16ドル(約1750円)と算定されている。米国の組合組織率は、1950年代の労働者の3分の2から現在は10%に落ちた。特に、ますます増える巨大プラットフォーム企業の労働者は、労働者としても認められずにいる。労働組合が、人種やジェンダーによらず、高賃金だけでなく安全な勤務環境を作るのに役に立つということは、研究により検証された。

 大衆全般を包括する社会経済的な議題への路線転換を主導するバーニー・サンダース上院議員は、景気浮揚策の表決の際に、最低賃金を15ドルに引き上げる内容を加えようと、11時間50分という歴代最長の表決時間の記録を打ち立てたが、志を果たすことはできなかった。ティム・ライアン下院議員は、組織権保護法の通過を賛成する演説で「ドクター・スースの議論はもうやめて、米国の労働者のために私たちと一緒に仕事を始めよう」と一喝した。人種アイデンティティ歪曲の議論のために自ら出版を禁止した有名作家のドクター・スースの絵本についての議論も良いが、人種やジェンダーを問わず全ての労働者の共同利益のために力を尽くそうということだ。

 バイデン政権は最低賃金と労働法の改訂を皮切りに、労働者・中流階級・進歩層・弱者を網羅し、特に離れていった白人中下流層を再びまとめる「21世紀のニューディール」を作り出すことができるだろうか。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/986604.html韓国語原文入力:2021-03-13 02:30
訳M.S

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