ミャンマーで再発した軍部クーデターが、就任2週間も経っていないジョー・バイデン米大統領を重大な試験台に立たせた。今回の事態は「民主主義と人権」という普遍的価値と、「同盟連合による中国牽制」という米国の世界戦略が衝突する微妙な問題だからだ。バイデン政権が声明で今回の事態を「クーデター」と規定できないことからも、苦悩の深さが表れている。
バイデン大統領はミャンマーのクーデター発生翌日の1日(現地時間)に声明を発表し、「民主主義転換と法治に対する直接的攻撃」と強く批判し、制裁復活の可能性を警告し、軍部に権力放棄とアウン・サン・スー・チー国家顧問ら拘禁者の釈放を求めた。
バイデン大統領は、1989年に軍事政権が付けた国号である「ミャンマー」の代わりに、米政府が二国間関係で主に使う国号である「ビルマ」という表現を使った。同大統領は「民主主義において武力が国民の意思の上に君臨したり、信頼できる選挙の結果を消そうとしたりしてはならない」とし「ビルマ軍部が直ちに権力を放棄し、拘禁した活動家と役人を釈放し、すべての通信制限を解いて市民に対する暴力を止めることを圧迫するよう、国際社会が一つになって協力しなければならない」と促した。
バイデン大統領は「米国はこの厳しい時期にビルマ国民の側に立つ人々に注目している」とし、「ビルマの民主主義転換を覆すことに責任ある人々に責任を問うために、その地域と世界にかけて我々のパートナーたちと協力する」と述べた。また「米国は民主主義の進展に基づいてこの10年間ビルマに対する制裁を解除した」とし「この進展を覆すことは我々の制裁法律と権限に対する即時再検討が必要になり、適切な措置が取られるだろう」と警告した。
バイデン大統領の声明は、彼が今回の事態を民主主義に対する脅威という観点で深刻に考えていることを示している。国際社会で民主主義と人権を増進させる模範国になると約束して当選したバイデン大統領として、ミャンマーの事態はその意志を実践する試験となるケースだ。しかも、前任者のドナルド・トランプ氏の大統領選不服とその支持者たちの1月6日の議事堂乱入事件で失墜した米国民主主義の体面を取り戻す機会でもある。米国はミャンマーが中国の影響圏から脱して民主主義体制に転換するように努力を傾けてきた。バイデン大統領が副大統領として在職したオバマ政権は、2015年のミャンマー民主政府の誕生を対外政策の主要成果に挙げた。
オバマ政権で国務省東アジア太平洋次官補を務めたダニエル・ラッセル氏は「ポリティコ」に、今回のミャンマー事態について「バイデン大統領の民主主義守護と習近平の権威主義に対する暗黙的または積極的支持という競争モデルに関する一種の決定体」と述べた。
このような民主主義の観点から、米政府と議会では制裁を課すなどミャンマー軍部に対する強力な報復の主張が出ている。バイデン大統領が声明で制裁復活を警告したのをはじめ、民主党のロバート・メネンデス上院議員と共和党のミッチ・マコーネル上院院内代表などが一斉に「費用賦課」「厳格な経済制裁賦課」を主張した。
1日、ミャンマー事態に関する米国務省のブリーフィングを聞いた議会関係者たちは「CNN」に、国務省はすべての選択肢を秤にかけて検討していると伝えた。また、政府が制裁に乗り出さなければ、議員らが制裁賦課法案を発議する可能性が高いと伝えた。
バイデン政権の悩みは、制裁の賦課など強力な対応が米国の対中国戦略と相反する恐れがあるという点だ。ミャンマーは近年、米中間で等距離外交路線を取ってきたが、米国がミャンマー軍部を圧迫すればするほど再び中国に近づく可能性がある。中国を最高の脅威であり競争者と規定し、同盟を糾合して中国を封鎖する戦略を追求する米政府の路線に支障が生じるということだ。
シンクタンクである国際戦略研究所(CSIS)のボニー・グレーザー・アジア担当上級研究員はCNNに、ミャンマーへの制裁は「はるかに大きな中国の影響力へと向かう扉」をミャンマーに開きうると述べた。保守紙「ウォールストリート・ジャーナル」は社説で「(ミャンマー軍部に対する)単純に道徳的な猛非難ではなく、現実的な外交が必要だ」とし、ミャンマーが中国の影響圏へと向かわないようにすることに重点を置くことを求めた。実際、中国は今回の事態でミャンマー軍部を非難せず、様子見の態度を見せている。「ワシントンポスト」は、過度に強い行動はミャンマーを中国側へと追いこむという憂慮と制裁を求める声との間で、バイデン政府がバランスを取らなければならないと指摘した。
米政府の悩ましい立場は、用語の使用にも表れている。今回の事態に関し、先月31日から1日までに発表されたバイデン大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ジェン・サキ大統領府報道官の声明で「クーデター」という表現はない。「ポリティコ」は今回の事態をクーデターと呼ぶかどうかをめぐり、政府内で論争が起こっていると報じた。クーデターと呼ぶことを避けたい側は「そうしてこそ軍部が退くように説得するテコができる」と主張しているという。クーデターと公式に規定した場合、米国の外国支援法によりミャンマー軍部政権に対する米国の支援は止められる。国務省のある高官は「ビルマ事態は確かにクーデターの要素を持っているが、国務省は必要な法的、事実的な分析をした後、評価を下すだろう」とCNNに述べた。
ミャンマーの国号をめぐっても様々な解釈が出ている。米政府は今回の事態について、軍事政権がつけた「ミャンマー」の代わりにそれ以前の「ビルマ」の呼称を用いている。このため、米政府がミャンマー軍部体制を認めていないという観測も出た。しかし、サキ大統領府報道官は1日のブリーフィングでこのような質問に対し、「われわれの公式政策はビルマと呼び、特定の疎通でのみ儀典上『ミャンマー』を使う」と述べ、「例えば国務省のウェブサイトは『ビルマ(ミャンマー)』と『ビルマ』を混合して使う」と述べた。