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米国の「殺人AI」がイランの核科学者を暗殺? 真偽の議論が拡大

登録:2020-12-09 10:16 修正:2020-12-09 12:23
イランの最高安全保障委員会事務局長「顔認識する人工衛星装置を装着した機関銃で」 
「AI兵器を使ったイスラエル単独作戦は可能か」疑問と懸念が増幅
11月27日、イラン・テヘラン近くのアブサルドで暗殺されたイランの核科学者モフセン・ファクリザデ氏が乗っていた乗用車と事件現場/EPA・聯合ニュース

 11月27日に発生したイランの核科学者の暗殺事件の現場には暗殺犯がおらず、人工知能(AI)制御の兵器だけが使われたという主張が提起されている。人工知能兵器だけで「作戦遂行」が可能になった段階に達したという懸念とともに、イスラエル単独の作戦ではない可能性が高いという疑惑も提起されている。

 イランの最高安全保障委員会のアリ・シャムハニ事務局長は6日(現地時間)、核科学者モフセン・ファクリザデ氏の暗殺は「特殊な方法」と「電子装備」を使った事実上の遠隔攻撃だったと主張した。彼はファクリザデ氏の葬儀での演説でも、日産のピックアップトラックに装置された機関銃には「殉教者ファクリザデをズームレンズでクローズアップする人工衛星装置が装着されていた」とし、「人工知能を使った」と述べた。シャムハニ事務局長は事件現場に暗殺犯は誰もいなかったことを繰り返し主張した。

 イランの最精鋭部隊である革命守備隊の副司令官でもあるシャムハニ事務局長は、ピックアップトラックに設置された兵器がファクリザデ氏の隣に座っていた夫人は狙撃せず、ファクリザデ氏だけに向けて発射されたと説明した。シャムハニ事務局長はその機関銃について、「ひたすらファクリザデ氏の顔にだけ焦点を合わせられており、25センチ離れて座っていた彼の妻は撃たれなかった」と伝えた。また、計13発が発射され、そのうち4発をファクリザデ氏を守るため身を投げた警護員チーム長が撃たれたと付け加えた。

 シャムハニ事務局長の主張通りなら、今回の事件は遠隔操作された人工知能兵器によってのみ遂行されたもので、その精密性はすぐ隣の人も攻撃対象から除外できるほどだ。この主張が事実なら、人工知能兵器をめぐる倫理問題を触発するだろう。

 「殺人ロボット反対運動」の会員であるノエル・シャーキー教授は「そのような武器に手をつけられる軍事力の結果は、想像できないような結果を生むだろう」とし、「もしその装置が目標人物を特定し殺そうと自主的に顔認識を使うなら、我々は国際安保を完全に乱す下り坂を転がり落ちていくことになる」と憂慮を示した。

 実際、多くの科学者が戦争で人工知能の使用を懸念している。2015年にはスティーブン・ホーキング氏ら約1千人の科学者が、軍事目的の人工知能開発を禁止する公開書簡を発表した。

 しかし、イラン側の今回の主張に対しては、真偽を巡る議論も少なくない。事件当日、イラン国防部は事件現場で警護員と暗殺犯の間で銃撃戦が起きたと発表した。イランのあるメディアは3~4人の暗殺犯が射殺されたという目撃者の証言を報じた。また、暗殺に使われた日産のトラックは現場で破壊されたと発表された。

 電子戦専門家のトム・ウェディントン氏はBBCに「イラン側の説明は最近の流行語を集めたようだ」とし、「最も力の強い勢力だけがこの作戦を成功させることができるという印象を与えようとしているようだ」と述べた。イラン側が米国などの直接的な介入を主張しようと、事件を誇張しているという指摘だ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/arabafrica/973224.html韓国語原文入力:2020-12-08 10:08
訳C.M

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