本文に移動

米専門家ら「バイデン政権、北朝鮮を対話に導くためには先に譲歩すべき」

登録:2020-11-20 06:47 修正:2020-11-20 08:09
米国の朝鮮半島専門家5人に「バイデン政権の対北朝鮮政策」についてアンケート調査
米国のジョー・バイデン次期大統領(左)と北朝鮮の金正恩国務委員長(右)/ロイター・朝鮮中央通信・聯合ニュース

 米国の朝鮮半島専門家らは、来年1月20日に発足するバイデン政権が、北朝鮮の「完全な非核化」という目標を維持しながらも、核凍結や軍縮といった現実的アプローチを取る可能性もあるとみている。また、朝米対話を再開するためには、北朝鮮が核・ミサイル実験など挑発行為をしてはならず、米国も譲歩する姿勢を持たなければならないという意見を示した。ハンギョレは8~17日、クリントン政権で朝米実務交渉を導いたブルッキングス研究所のエバンズ・リビア上席研究員(元国務省東アジア太平洋首席副次官補)ら米国の朝鮮半島専門家5人に、バイデン政権の対北朝鮮政策と韓国政府の進むべき道について質問した。

_______

「戦略的忍耐」と「完全な非核化」

 バイデン政権が対北朝鮮政策において、バラク・オバマ政権時代の「戦略的忍耐」に戻ると見ている専門家もいる。北朝鮮がまず核・ミサイルを放棄しない限り対話に応じない、事実上のほう助に回帰するのではないかという予想だ。ところが、リビア上席研究員は「その道をまた進む可能性は非常に低い」と述べた。彼は「オバマ政権初期の戦略的忍耐アプローチは失敗しており、バイデン政権で政策を作って管理するのは大体その失敗を直接目撃した人々」だとし、「バイデン政権のアプローチは、制裁と圧迫に依存し核兵器開発に関する費用をもっと高めようとしたオバマ政権終盤の2年と類似したものになるだろう」と見通した。オバマ政権で国務副長官を務め、バイデン政権でも外交安保の重責を担うと予想されるトニー・ブリンケン氏らが、北朝鮮を放置せずむしろ圧迫を高め、対話に誘導しようとするということだ。

 進展が見られない朝米対話については、米国が北朝鮮に要求するCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)などの「完全な非核化」が非現実的だという指摘もある。バイデン政権が完全な非核化という目標を維持しなければならず、そうするだろうと予想する専門家が多かった。ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上席研究員は「CVIDは米国の交渉立場であるだけでなく、11の国連決議案に盛り込まれたもの」だとし、バイデン政権はこれを維持すべきだと述べた。

 しかし、オバマ政権で国防長官補佐官を務めた米国平和研究所のフランク・オム研究員は「バイデン陣営の参謀たちは完全な非核化ではなく、軍縮の方がより現実的という点も示唆してきた」と指摘した。バイデン政権の初代国務長官候補に名前が挙がるスーザン・ライス元ホワイトハウス国家安保補佐官は2017年、ニューヨークタイムズ紙への寄稿で「北朝鮮を核国家と正当化することはできないが、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は武器が政権の生存に欠かせないと考えているため、武器庫を放棄する可能性は非常に低いという点も我々は知っている」と述べた。カマラ・ハリス次期副大統領は昨年、外交問題評議会(CFR)に対し「単に完全な非核化だけを要求するのは失敗に向かう道」だとし、北朝鮮が核開発計画を減らせば一部制裁を緩和する案を考慮すると答えた。バイデン次期大統領も先月の大統領選候補討論で「核能力の縮小に同意する条件で」金委員長に会うこともあり得ると述べた。バイデン政権が「完全な非核化」と「すべての制裁解除」の交換という達成困難な目標を掲げるよりは、段階的かつ同時的アプローチを取る可能性を示唆したものとみられる。

 元北朝鮮担当国家情報分析官(NIO)である、アトランティック・カウンシルのマーカス・ガーラウスカス上席研究員は「バイデン政権は完全な非核化という目標を捨てない」としながらも、「一度任期内に成し遂げられる政策目標を立てる上で、より現実的なアプローチをするのが望ましい」と述べた。米海軍分析センターのケン・ゴース敵性国分析局長は「完全な非核化よりは核凍結を求めた方が望ましいと思う」とし、「しかしこれは北朝鮮を核国家と認めることだ。バイデン政権がそれを容認するかどうかは、見守らなければならない」と述べた。

_______

「北朝鮮は挑発を控え、米国も譲歩すべき」

 専門家らは、バイデン政権が北朝鮮と対話に乗り出すまでは、かなりの時間がかかると見通した。オム上席研究員は「バイデン政権が北朝鮮政策を検討するのに、晩春まで時間がかかる可能性がある」と述べた。彼は「検討の結果、北朝鮮への関与が必要だと判断しても、(対話において)最も重要なのはバイデン政権が北朝鮮の考えを変える何かを提示できるかどうかの問題」だと指摘した。

 北朝鮮の行動も「朝米対話の再開か、衝突か」を分ける重要な要素になると予想した。アンケートに応じた専門家らは全員、北朝鮮がバイデン政権初期に挑発行動をすると予想した。リビア上席研究員は「新政権は北朝鮮がオバマ政権初期に核・ミサイル実験を行ったことを覚えているだろう」とし、「就任初日から北朝鮮を注視するだろう」と述べた。クリングナー上席研究員は「バイデン氏は初期に外交問題よりは新型コロナなど国内問題に重点を置くだろう」としながらも、「しかし北朝鮮はバイデン氏の反応を引き出すため、緊張を高める方法を模索するだろう」と見通した。

 朝米対話を再開するためには、両国いずれも対話の意志を持って誠意を示すことが重要だと、専門家たちは強調した。ガーラウスカス上席研究員は「北朝鮮が遅くとも来年初めには弾道ミサイルなど戦略兵器の実験を再開する準備をしている兆しが多く見られている」とし、「対話再開に向けた環境づくりにおいて最も重要なのは、弾道ミサイルや核実験、またはサイバー攻撃など、北朝鮮の挑発的な行動を防ぐこと」と述べた。

 リビア上席研究員は「最も重要なのは核兵器計画の終結に関し、米国と対話しようとする北朝鮮の意志だ。北朝鮮がそのような対話をする意志があるなら、敵対の終息や関係正常化、制裁の解除、平和条約の完成、そして北朝鮮人民への米国の支援提供などを含む、すべてのことが可能になるだろう」と述べた。クリングナー上席研究員は「対話の第一歩は双方が関与する意志を持つようにすること」だとし、「米国、韓国は、ただ北朝鮮を交渉テーブルに再び引き出すために北朝鮮に対する国連制裁履行を減らしたり、恩恵を提供してはならない」と指摘した。

 米国が先に動かなければならないという意見もある。オム上席研究員は「進展のためには究極的にはすべての当事者がもっと柔軟にならなければならない」とし、「米国が先に措置を取る必要がある」と述べた。また、「北朝鮮が2018年に核・ミサイル試験の中止、豊渓里(プンゲリ)核実験場と東倉里(トンチャン二)ミサイル発射試験場の閉鎖、米軍の遺骨送還などをしたが、米国は相応する措置を取っておらず、北朝鮮としては裏切られたと感じているだろう」と述べた。ゴース長官も「北朝鮮が核プログラムで先に譲歩すると期待してはならない」とし、「米国が制裁緩和を交渉テーブルにのせるなど、先に譲歩しなければならない」と強調した。

_______

韓国政府は何をすべきか

 専門家らは、韓国政府がバイデン政権と緊密な調整の上で動く必要があると強調した。リビア研究員は「バイデン政権が政策を検討する間、韓国が慎重に行動することを望む。バイデン政権は政策検討期間以降も韓国と緊密に協議するだろう」と述べた。

 しかし、南北関係の改善では、韓国政府が積極的に動かなければならないという意見が多かった。オム上席研究員は、バイデン政権発足初期、北朝鮮が挑発的行動をして国際社会が制裁に対応しなければならない状況になると、文在寅(ムン・ジェイン)政権は1年余りの任期で政策を実現する機会を失ってしまう可能性もあるとし、「韓国政府は国家安全保障上の利益に合う、最善の政策だと考えることを最大限攻撃的に追求しなければならない」と指摘した。ただし「南北関係では文在寅政権がすでに多くのことを行ってきたため、さらに何かできる空間は多くない」とし、(南北関係よりは)実を結ぶ可能性の高い朝米関係の分野に、バイデン政権がどれほど真剣に取り組むのかを文在寅政権が見極める必要があると述べた。ゴース局長は「文在寅政権は、バイデン氏とその参謀たちに可能な限り関与し、米政権委譲期に北朝鮮が緊張を高めないようにする方法で、南北対話を受け入れるよう努力しなければならない」と述べた。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員(お問い合わせjapan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/970747.html韓国語原文入力:2020-11-2004:59
訳H.J

関連記事