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「戦時性暴力、表現の自由」…ベルリンの少女像の運命を変えた市民の力

登録:2020-10-15 03:01 修正:2020-10-15 06:53
裁判所の審理の間に「撤去でなく妥協」 

人権を前面に掲げる市民団体が説得 
「韓日の歴史を超えた普遍的な人権問題」 
緑の党や女性団体などがデモ参加を主導 
日本人女性、少女像の前でひざまずいて謝罪も 

少女像、今後の行方は? 
現地メディアによる連日の報道で関心高まる 
行政裁判所の仮処分判断に注目 
「性奴隷」などの碑文の内容で妥協の余地
13日(現地時間)、ベルリン市では200人あまりの市民が集まり、少女像撤去決定に抗議する集会が開かれた。集会には少女像の建立を主導した諸団体、女性人権団体、少数民族団体が参加した=ベルリン/ナム・ウンジュ通信員//ハンギョレ新聞社

 「(行政裁判所が平和の少女像撤去命令の効力停止の可否を決定するまでの間)私たちはこの複雑な論争にかかわるすべての活動家の主張を、原点に立ち返って改めて熟考するつもりだ」

 13日午後2時(現地時間)、ベルリンの「平和の少女像」撤去反対のデモ現場で、7日に少女像撤去命令を下したミッテ区のシュテファン・フォン・ダッセル区長が、予告になかった自由発言で妥協の意志を明らかにした。韓-独の市民団体「コリア協議会」が撤去命令停止の仮処分を申請したことで撤去が保留となっている間に、解決策を模索しようとの趣旨だ。フォン・ダッセル区長の一言で、デモの現場は一瞬にしてお祭りムードとなった。

 フォン・ダッセル区長は「韓国はもちろん、日本も満足できる妥協案があることを願う」とし「熟考」の意味を説明した。7日の撤去命令時に、ミッテ区役所は「第2次世界大戦当時、日本軍がアジア・太平洋全域から女性を性的奴隷として強制的に連れていった」との裏面の碑文の内容を問題視したことから、碑文の修正などの折衷案を探ることになるだろうとの観測が出ている。コリア協議会のハン・ジョンファ代表はハンギョレに対し「碑文の文句が主な争点になりそうだ」とし、撤去撤回のためには一部の文句について修正などを検討しうるとの立場を明らかにした。

 今後の交渉は順調なばかりではないと思われるが、今回の事態は緑の党などに少女像支持勢力を形成する契機となったとみられる。過去にも、日本の極右団体の圧力に対し、市長と市会議員の支援を得て少女像の存置を決めた米国のグレンデールの例がある。

 ミッテ区役所が少女像の撤去から再検討へと態度を変えた背景には、平和の少女像問題を韓日の外交問題や反日民族主義ではなく、戦時性暴力や表現の自由などの普遍的人権の観点からアプローチした市民団体の説得戦略がある。ドイツの現地メディアの報道を総合すると、世論が急激に撤去の見直しへと傾いたのは、地域区とベルリン市議会が、日本による少女像撤去圧力を「表現の自由に対する抑圧」と判断してからだった。

 デモ前日の12日、社会民主党ミッテ地域委員会が過半数の賛成により、少女像撤去決定を再検討するための公開討論会を提案した。13日のデモ直前には、ベルリン市緑の党から、緑の党所属のフォン・ダッセル区長の少女像撤去決定に対して強い批判が起こった。緑の党所属の市議会議員グループの報道担当者ラウラ・ノイゲバウアー氏は、ベルリン・ブランデンブルクのあるラジオ番組のインタビューに応じ、「フォン・ダッセル区長の決定は、緑の党の価値を誤って伝えた。緑の党は芸術の自由を擁護し、強制性労働の被害者と連帯する」と述べ、少女像を再び許可するよう求めた。緑の党の市議会議員の一部はデモに参加した。

 また、ベルリン市の連立政権を構成する緑の党と社会民主党が少女像を支持したのには、「少女像は戦時性暴力犯罪の象徴」との認識が広がっていることも大きく影響している。ベルリンの少女像は建立過程から、反日ではなく反戦、反性暴力をテーマとし、女性団体や少数民族だけでなく日本女性たちの参加も引き出している。

13日(現地時間)、ベルリンで開かれた少女像撤去の撤回を求める集会は連帯の場となった。同日のデモで、あるドイツ市民が少女像撤去に反対する発言を行っている=ベルリン/ナム・ウンジュ通信員//ハンギョレ新聞社

 13日のデモの前に開かれた記者会見には、ヒロコ・チェアドリク・ノジンさんら3人の日本人女性が出席し、少女像の建立を妨害した日本政府の行為に憤りを感じるという立場を表明した。ベルリンに住む日本人タキタ・マコトさん(50)はこの日、「日本軍による性犯罪の被害者に謝罪する」として、少女像の横でひざまずいた。タキタさんはハンギョレのインタビューで「韓国だけでなく、様々な国の日本軍による被害者に対する罪の意識がとても大きく、心が苦しくて謝罪せずにはいられなかった」と話した。

緑の党所属のベルリン市議会議員ベネディクト・ルクスはこの日のデモに参加し、デモの様子をツイッターで伝えた=ベネディクト・ルクス市議会議員のツイッターより//ハンギョレ新聞社

 撤去期限の14日を翌日に控え、九死に一生を得た少女像に対するドイツメディアの関心も高まっている。『ジュートドイチェ・ツァイトゥング』『ディ・ヴェルト』などのドイツの全国紙は、オンライン版で「少女像、当面の存置決定」と題する地域通信ニュースを掲載した。ベルリン市のホームページは市政ニュースに、少女像撤去反対デモのニュースと、以前ドイツで少女像が設置され、日本の反対にあった複数の例を詳しく紹介した。

 ベルリン地域のいくつかのメディアは「記念碑戦争」との見出しで、この日のデモを主要ニュースとして報道した。『ベルリナー・ツァイトゥング』は「ビスマルクの銅像などの加害者記念碑の撤去論争の真っ最中のベルリンで、被害者の記念物を解体しようとの珍しい論争が起こっている」とし「今後、行政裁判所が表現の自由に関し、今回の事態に対してどのような判断を下すか注目される」と述べた。

ベルリン/ナム・ウンジュ通信員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/965737.html韓国語原文入力:2020-10-14 15:37
訳D.K

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