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[インタビュー]「日本の韓中からの入国制限は、公衆衛生学的には必要な措置ではない

登録:2020-03-11 22:31 修正:2020-03-12 08:21
日本政府の新型コロナ専門家会議メンバー 
押谷仁・東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授 
 
「日本政府は入国制限について専門家に意見を求めていない 
韓国と中国から感染者が流入するする可能性は低い 
 
SARSのように完全な封鎖は不可能… 
集団感染の発生遮断が重要 
 
アフリカで大流行が起きれば 
東京五輪の開催は難しいだろう」
押谷仁・東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授が10日、東京で新型コロナ(COVID-19)に関する日本の対策について話している=チョ・ギウォン東京特派員//ハンギョレ新聞社

「新型コロナウイルス感染クラスターの発生をどのように食い止めていくかが主要課題となっている」

 日本政府が設置した新型コロナウイルス(COVID-19)専門家会議のメンバーである押谷仁・東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授は10日、感染拡散防止のための国際協力を強調した。また、韓国と中国から来る人々に対する日本政府の入国制限については、「専門家会議で議論したことはない」と話した。以下は一問一答。

-現在の日本の状況をどう判断するか。

=クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を除いては、大きな感染の拡大はない。北海道の札幌市が一時危険だったが持ちこたえており、東京、神奈川、大阪でも危険な兆候は見られるが持ちこたえている。

-ウィルスが夏になると弱まる可能性はあるか

=そうではない。短期的には弱まらない。最初は中国だけで感染者が各地で出た。今は中国が感染を效果的にコントロールしていて感染者が外に出ない。しかし、今は感染者が東南アジアや中東にもいる。急速に世界に感染が拡大している。中国以外の地域から感染者が流入する可能性もある。東南アジアと関係が深い韓国や日本は、短期的にはとても難しい状況になると思う。

-東京五輪は予定通り開催できるか

=世界がどうなるかにかかっている。すぐ収拾されることはないと思う。アフリカで今後流行がありうる。アフリカできわめて大きな流行が起きれば、五輪はできないだろう。日本国内の流行を抑制したからといって五輪ができるわけではない。世界的に急速に拡散する状況になり、世界のどこかの地域が五輪に参加できないとなれば、五輪を開催するのは難しいのではないか。

-新型コロナウイルスと普通のインフルエンザを比較すれば

=普通のインフルエンザとは比較にならないほど危険なウイルスだ。普通のインフルエンザは、ウイルスそのものは人を殺さない。高齢者が細菌性肺炎になったり心筋梗塞を起こしたりするインフルエンザ関連死で人が死ぬ。しかし、このウイルスはウイルス自体が人を殺す。高齢者にとって非常に危険なウイルスだ。また、インフルエンザにかかれば、概ね80~90代で死亡者が出る。しかし、新型コロナウイルスは、80代、90代だけではない。50、60、70代でも死亡する場合がある。季節性インフルエンザにはあまりないケースだ。

-韓国と中国に対する入国制限措置についてどう思うか。

=私は専門家会議のメンバーだが、韓国と中国からの入国制限は我々が推奨したことではない。(新型コロナウイルスは)世界に広がった。東南アジアに広がり、米国も危ないと言われている。一体どこまで(入国制限を)するのか。米国に感染が拡大すれば、米国からの入国を制限するのか。そうするには方法は鎖国しかない。これをするというオプションはもちろんあるが、きわめて大きな経済的損失が起きる。非常に厳しい状況にアグレッシブな対応をしなければならない状況もありうるが、今はそのような状況ではない。韓国と中国から感染者が流入する確率は極めて低いため、公衆衛生学では今必要な対策ではないと、個人的に私は考えている。

-菅義偉官房長官は、専門家会議を経ていないと認めた。専門家会議で議論はしたのか。

=議論されたことはない。(政府が専門家会議に)聞いたこともない。

-SARSとは異なり、感染の封じ込めは難しいという見解と理解しているが

=SARSのような封じ込めは現在不可能だ。しかし、新型コロナウイルスにも弱点があり、実は80%以上の人は誰にもウイルスを感染させない。ただし、一人の感染者が多くの人に感染させる事例がある。そうした例が、韓国のある宗教集団や大阪のライブハウスだ。我々はこれを(感染)クラスターと呼ぶ。今、日本は持ちこたえているが、これからどうなるかは微妙だ。

-水際対策だけを強調しない方が良いのか

=水際対策も重要だ。しかし、感染事例が一つ出たからといって騒ぎ立てずに、クラスターを作らないようにすることが重要だ。クラスターは密閉性の高い、ライブハウスや屋形船パーティーなどで起きやすい。

-日本政府が取った小中高校の休校に効果があるか

=新型インフルエンザや季節性インフルエンザでは、子どもたちが感染を拡散させる。子どもたちが感染してから、地域に広がる傾向がある。そのため、新型インフルエンザの場合には早期に一斉休校をすればきわめて效果がある。しかし、今回は違う。今回は子どもが大人から主に感染したケースだ。学校閉鎖での感染阻止は不可能だ。子どもたちの感染を減らす機会にはなるだろう。しかし、子どもたちはほとんどが重症にはならない。こうした点を考えれば、一斉休校にどこまで效果があるのかという疑問がある。感染拡大を阻止する劇的な効果はないと思う。

-国際的な取り組みはどうすれば良いか。

=まだわからないことがとても多い。皆で情報を共有し、このウイルスとどう効果的に戦うかを考えなければならない。先行して経験した中国から学ぶべき点がある。韓国と日本は医療体制が似ている。韓国では一つの宗教集団から広がった事件がある。日本もそうなるかもしれない。こうした場合にどうするか、日本が韓国から学ばなければならない。韓国も日本が持ちこたえている点が参考になるだろう。だから、政治的対立をしている場合ではない。皆で情報を共有し、どのように対処するかを考えるべきだ。

-日本のウイルス検査件数が足りないという批判があるが。

=どこまでどのように検査するかは微妙だ。日本は当初、韓国に比べて検査のキャパシティーが大幅に不足していた。今は拡充されている。とはいえ、風邪気味だからといって皆がウイルス検査を行うことは、どこの国でも不可能だ。戦略的に考えてみる必要がある。

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/932157.html韓国語原文入力:2020-03-11 19:33
訳J.S

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