安倍晋三首相が28日、施政演説で異例にも韓日関係に対する言及をなくした。強制動員賠償判決と自衛隊哨戒機の“威嚇飛行”論議で関係が悪化した状況で、意図的無視で韓国を牽制しようとする試みと見られる。
安倍首相は定期国会初日のこの日、今年一年間の国政方針を盛り込んだ施政方針演説で、韓日関係に直接言及しなかった。過去数年間、過去の問題をめぐって両国関係が円滑でない状況であっても、表現の水位は別とすれば韓国に対し別途の言及はあったが、今回はまったく省略した。
安倍首相は、北朝鮮に対しては「北朝鮮の核、ミサイル、そして最も重要な拉致問題の解決に向けて相互の不信の殻を破って、次には私が直接金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と向き合い様々な機会をのがさず果敢に行動する」として、強い関係改善の意志を明らかにした。安倍首相はこの過程で「米国、韓国など国際社会と緊密に連帯して行く」と話した部分でのみ唯一韓国に触れた。韓国との関係を、北朝鮮を扱う上で必要な“手段”程度に“格下げ”したとも解釈される。
安倍首相に続き外交演説に出た河野太郎外相は、領土と過去の問題に対する既存の立場を強調して韓国を圧迫した。彼は「日韓請求権協定、慰安婦問題に関する日韓合意など、国際的約束を守ることを(韓国に)強く要求する。日本固有の領土である竹島(日本が独島を呼ぶ名称)に対する日本の主張を、着実に伝え粘り強く強力に対応する」と強硬な立場を繰り返した。
安倍首相は、2012年末の再執権以後、施政演説を通じて韓日関係の重要性を一貫して下げ続けた。彼は、2013・2014年まではそれ以前の政府と同じく、韓国を「基本的な価値と利益を共有する最も重要な隣国」と表現したが、日本軍「慰安婦」問題で軋轢が深刻化された後の2015年には「基本的価値」を削除して「最も重要な隣国」とのみ表現した。その後、北朝鮮の核実験とミサイル発射が続くと、2016・2017年には韓日軍事協力の必要性を強調し「戦略的利益を共有する重要な隣国」という表現を使った。
安倍首相が韓国に対して“戦略的無視”カードを取り出したのは、3つ理由のためと見られる。安倍首相のこの日の演説で目につく部分は、バラク・オバマ米大統領在任の時“グローバル同盟”に強化された米日関係、最近関係が急速に改善された中日関係に対する自信だった。安倍首相は、米日関係に対しては「日米同盟は歴代最も強い同盟になった」と話し、中日関係は「昨年秋(私の)中国訪問で完全に正常軌道に乗った」と話した。日本には韓日関係を当分放置してもかまわないほどの外交的体力があるという自信が伺える。
第二に、昨年初め以後、北朝鮮の核・ミサイル脅威が大幅に減り、韓日安保協力の戦略的重要性が減った点を挙げることができる。日本は2013年の「防衛計画大綱」では、韓国と軍事秘密情報保護協定(GSOMIA)と相互軍需支援協定(ACSA)を推進すると明らかにしたが、昨年の防衛大綱では「地域の平和と安定のために(日米韓)3国間の連帯を強化する」という抽象的表現にとどまった。そして最後に、韓日対立は改憲を“一生の課題”と考える彼にとって思いがけない“政治的機会”を提供しているという計算が作用したと見られる。日本経済新聞の28日の世論調査結果によれば、日本国民の62%が自衛隊哨戒機の低空飛行問題と関連して、自国政府に「強い対応」を注文した。今回の対立で、安倍内閣の支持率は先月より6%ポイント上がった53%を記録した。
日本が当分は韓国との関係改善に気を遣わないという姿勢を取るなかで、韓国政府も一層対応を熟慮せざるをえなくなると見られる。ヤン・ギホ聖公会大学教授(日本学科)は「韓日関係が過度に悪化しないよう、節制された対応をしながら関係を管理しなければならない」として「(日本政府は)2回目の朝米首脳会談以後、北東アジア情勢が変化し朝日対話の必要性が高まれば、韓国と協力しようとする側に旋回する可能性もある」と展望した。