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ディーゼル車抑え電動スクーター増やす…欧州はPM2.5と戦争中

登録:2018-11-12 23:18 修正:2018-11-13 07:38
英国、スモッグ事態以後に大気汚染の深刻性を共有 
欧州連合、汚染物質減らすための“共同対応” 
 
各国で老朽ディーゼル車の退出が本格化 
電動スクーターなどエコ交通手段事業も 
個人および環境団体、国家相手に訴訟も
黄砂警報が下された5月、中国北京市内の様子=北京/ロイター聯合ニュース

 PM2.5(微小粒子状物質)による大気汚染の恐怖が世界を覆っている。米国保健影響研究所が昨年発表した報告書は、1年間に420万人(2015年基準)が大気汚染で期待寿命を満たせずに死亡したと明らかにした。経済協力開発機構(OECD)は、2050年には都市の大気汚染が水不足と衛生状態の悪化より大きな死亡原因になると展望した。霞がかかったように覆ったPM2.5を減らすために、世界各国が対策準備に苦心している。

 欧州は、大気汚染対策に最も積極的な地域だ。1950年代に英国のロンドンを覆ったスモッグで1万人以上が死亡した惨事を契機に、欧州諸国では大気汚染が生命まで脅かす深刻な問題として刻印された。

 老朽ディーゼル車の退出が最優先の措置になっている。ディーゼル車を誕生させたドイツのベルリンやフランクフルトなど主要都市では、老朽ディーゼル車の都心運行を禁止する政策が拡大している。来年からは、排気ガス排出基準であるユーロ5(2008年発効)以下のディーゼル車の中心街進入を禁止することが政策の骨子だ。ディーゼル車両は、軽油を燃焼させながら窒素酸化物とPM2.5を多量に吹きだして、大気の質悪化の主要原因として名指しされた。

 英国のロンドンでは、超低排出区域に指定されたところにユーロ6基準(2013年発効)を充足できない車両が進入すれば、混雑通行料(11.5ポンド・約1700円)をはじめ“毒性料金”(12.5ポンド)を賦課し、フランスのパリでも老朽ディーゼル車の都心進入禁止政策が施行されている。

ドイツのベルリンでは、古いディーゼル車両に対して中心街への進入を禁止する裁判所の判決が下された=ドリームスタイム//ハンギョレ新聞社

 フランスは二酸化炭素の発生“ゼロ”を目標に、2040年から軽油・ガソリン車の販売を禁止するという対策を発表した。代わりに電気およびハイブリッド車の購買支援を強化する計画だ。オランダ、スウェーデン、ノルウェーも同様の計画を推進中だ。

 自転車と電動スクーターなどのエコ交通手段の使用を拡大する対策も施行する。ロンドンでは、安全な自転車道路確保のために線路上に「スカイバイクウェイ」(自転車高架道路)の設置作業が進行している。自転車道路が鉄道駅舎と連結されて、自転車の使用と公共交通の利用率を同時に高められるという計算だ。専用道路の長さは200キロメートルを超え、予算12億ポンド(1750億円)が投じられる大規模プロジェクトだ。最近ロンドンでは、電動スクーター共有サービス事業も始まった。交通渋滞が深刻なロンドン市内で、車両の平均時速が10キロメートルである点を考慮した時、時速20キロメートルで走行できるスクーターが大衆化すれば大気の質改善に役立つということだ。

 個人と環境団体の対応も積極的だ。フランスのパリでは昨年7月、ヨガ講師のクロティルド・ノネズ氏(56)が大気汚染で健康を害したとして国家を相手に14万ユーロ(1800万円)を賠償するよう訴訟を提起した。PM2.5が個人の問題ではなく国家が立ち上がって解決しなければならない問題という認識を知らせた契機だった。同様な事例として、国際環境団体「クライアント・アース」も英国政府の大気汚染対策が生ぬるいとして、2015年に訴訟を提起し、裁判所は政府が積極的な行動に出なければならないとし、環境団体の手をあげた。「ドイツ環境行動」も主要都市におけるディーゼル車の運行を禁止してほしいと訴訟を起こし、1審で勝訴する成果を上げた。個人と環境団体の積極的な対応が、政府と市当局の対策準備を鞭打ちする起爆剤の役割をしたと評価されている。

欧州、中国、韓国、日本などの国家で、大気汚染の程度が深刻な水準であることが表を通じて確認できる。緑は大気の質が良い状態で、黄色、橙、赤に進むほど大気汚染が深刻であることを示す=A.Q.Iホームページより//ハンギョレ新聞社

 専門家たちは、大気汚染問題の解決には何よりも国家間の共同努力が重要だと指摘する。各国が体験する大気汚染は、一国家だけでは解決できない共同の問題であるためだ。欧州諸国は、かなり以前から大気汚染問題に共同対応してきた。1983年に発効したジュネーブ議定書は、大気汚染の監視と評価を共同で進め、汚染物質を多く排出する国家は多くの対応費用負担を負うようにした。こうした対策は、2000年代に入り欧州連合(EU)が国家別排出量上限指針を通じて、二酸化硫黄、窒素酸化物、揮発性有機化合物、アンモニアなどの縮小目標量を設定することに進化した。2030年までに2000年代初めを基準として40%程度の大気汚染物質を減らすことが目標だ。当初は国家別に自発的参加で始め、段階的に汚染物質の排出を減らしつつある。これは「国内用対策」にだけ没頭している東アジア諸国に対して示唆するところが大きい。大気汚染の影響を相互に与え合う中国、韓国、日本など東アジア諸国の共同対応が必要な時期と指摘されている。

オク・キウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/869937.html韓国語原文入力:2018-11-12 21:40
訳J.S

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