北朝鮮のリ・ヨンホ外務相が29日(現地時間)、ニューヨークの国連総会の演説で、非核化に対する米国の「相応の措置」を要求し米国にボールを渡したことで、第3回南北首脳会談以降、北朝鮮と非核化交渉を準備中の米国内の気流に関心が集まっている。
米国政府はリ外務相の国連演説について具体的な反応を示していない。ドナルド・トランプ大統領はもちろん、マイク・ポンペオ国務長官も、直接的な言及をしなかった。ただし、米国務省はリ外務相の演説に関する外国メディアの質疑に「トランプ大統領と金委員長は、最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)と北朝鮮のためのより明るい未来づくりに関連したいくつかの約束を交わした。米国はこれらすべての約束の履行に向けて、北朝鮮と話し合いを続けている」として原則論的立場を繰り返した。
米国のマスコミは、リ外務相が「一方的に核武装の解除はない」と発言した点に注目した。ニューヨークタイムズ紙は「北朝鮮が米国の譲歩なしには絶対に非核化しないと言っている」という見出しで報道しており、AP通信は「リ外務相の発言は慎重な態度を示している米国が終戦宣言に合意するよう圧迫するため」と指摘した。だが、米国のある外交消息筋は「朝米が一日二日交渉を行ってきたわけではないため、米国が今回の演説で刺激されたり、交渉の構図が変わったりすることはないだろう」と話した。米国も北朝鮮の今回の演説を北朝鮮が自らの立場を国連の舞台を通じて全世界に知らせるためのものと見ているということだ。
金委員長と文大統領の第3回南北首脳会談以降、米国は大きな枠組みで朝米対話に友好的な雰囲気を演出している。トランプ大統領は同日、ウェストバージニア州で開かれた共和党の遊説で、金委員長の親書を再び言及し、「彼は私に美しい手紙を書いてくれた。素晴らしい手紙だ」としたうえで、「私たちは恋に落ちた」と述べた。リ外務相の演説から数時間後に出た発言だ。
しかし、朝米が具体的な実務交渉に入れば、「ディテールの悪魔」に直面する可能性は依然として残っている。トランプ大統領が26日の記者会見で、北朝鮮の非核化の期間について「我々は時間競争(time game)をしているわけではない。2年や3年、5カ月がかかっても問題にはならない」と言ったのが代表的だ。北朝鮮が寧辺(ヨンビョン)の核施設を廃棄する意向まで示しただけに、交渉の主導権を握っていく意志をのぞかせたものといえる。
米国は北朝鮮の非核化の初期措置に対して提供する相応措置のうち、終戦宣言については初めよりは肯定的な認識に転じたという。ただし、対北朝鮮制裁は非核化が行われるまでそのまま維持されるべきという立場を固守している。
政府高官は「朝米が直接会って、互いの要求事項とタイムテーブルを交渉テーブルの上に置き、それを繋ぎ合わせてみる作業が最も重要だ」と話した。ポンペオ長官の4度目の訪朝と、スティーブン・ビーガン国務省北朝鮮政策特別代表と北朝鮮のカウンターパートによるウィーン交渉が、2回目の朝米首脳会談の成否を分けるものとみられる。