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[ニュース分析]米軍遺骨送還は朝米会談以後の信頼回復の“礎石”積み

登録:2018-06-21 22:45 修正:2018-06-22 09:36
シンガポール共同声明が明示した 
「発掘遺骨送還」約束守り 
「敵対清算」象徴的効果大きい 
 
北朝鮮に埋められた米軍遺骨は5000余体 
発掘本格化すれば緊張緩和 
非核化・相応措置交渉にもはずみ
2007年4月12日、ソウルの龍山米軍基地「コリアフィールドハウス」の体育館で開かれた遺骨送還行事で、将兵が朝鮮戦争当時に北朝鮮地域で戦死した米軍の遺骨6体を運んでいる=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 朝鮮戦争の時、北朝鮮で死亡した米軍の遺骨約200体がまもなく送還されると発表され、これを契機に朝米間の信頼関係構築作業にもはずみがつくと予想される。特に遺骨の送還は、ドナルド・トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長が12日に合意した「シンガポール共同声明」の最初の履行であるため、今後の朝米間の非核化および相応措置議論のための肯定的ムード造成にも寄与すると見られる。

 米軍遺骨発掘・送還は、家族のもとに遺骨を戻すという“人道主義的事業”と見なされてきた。しかし、実際には朝米関係の政治的風向きの影響を受け、ジェットコースターのように動いてきた。雪解け期を迎えれば信頼構築措置として最初に議論されたが、冷却期になればすぐに中断された。

 例えば1996~2005年、朝米合同調査団は北朝鮮地域で200体あまりの遺骨を発掘した。しかし、ジョージ・ブッシュ行政府になって朝米関係が悪化すると、北朝鮮に派遣された発掘要員の身辺安全に対する憂慮と北朝鮮に現金が入るという理由で活動が中断された。2007年、ビル・リチャードソン当時ニューメキシコ州知事に6体を引き渡したのが最後の遺骨送還だった。両国は2011年10月、タイのバンコクで遺骨の発掘再開に合意したが、翌年4月には北朝鮮が人工衛星を発射して履行されなかった。

 今回送還される遺骨200体あまりは、過去数年間にわたり北朝鮮が自主的に発掘したものだという。これは戦死者の遺骨を発掘し、すでに確認された遺骨は早く送還するという朝米首脳共同声明の条項が言う「既発掘遺骨の送還」に該当する。「今後の発掘事業」も本格化するだろうと思われる。米国防総省は、朝鮮戦争の時に失踪した米軍は合計7697人で、このうち戦死して北朝鮮の土に埋められた遺骨が5300体にのぼると推算している。

 遺骨の発掘は、人道的名分の他にも敵対関係を清算するという象徴的効果も少なくない。米軍の軍用機が平壌(ピョンヤン)空港から星条旗に包まれた遺骨を載せて行ったり、板門店(パンムンジョム)陸路で送還する行事自体が、戦争の傷痕を洗い流すという意味をこめている。米軍は戦争が終わった後、ベトナムとラオスでも共同遺骨収拾活動を行った。

 発掘事業が本格化すれば、朝米間の緊張が大幅に低下する政治的効果もあると期待される。数十人の米軍兵力と専門家が北朝鮮の現場で作業すれば、低い水準ではあるが米軍と北朝鮮人民軍の間に対話のチャンネルを開くことにもなる。発掘期間には平壌に米軍連絡将校が留まり、毎日米軍当局に報告することになる。

 一部では、発掘の過程で人材と資材提供の対価として米国が北朝鮮に現金を支給することを憂慮もしている。しかし、これは対北朝鮮制裁とは関係ないだけでなく、避けられない側面がある。遺骨の発掘をするには激戦地であった険しい山岳地域を駈け回らなければならないので、現地の地形に詳しい北朝鮮住民や軍人に依存せざるをえない。米国議会調査局が2005年5月に出した報告書によれば、米国防総省が1993年から遺骨収拾のために北朝鮮に支給した現金は2800万ドル(約31億円)に達する。

ワシントン/イ・ヨンイン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/850083.html韓国語原文入力:2018-06-21 21:01
訳J.S

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