中国官営メディアがドナルド・トランプ大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に送った手紙の内容を「生意気だ」と表現し、対話の再開を求めた。貿易戦争など米国との対決構図を強めている中国が「朝米膠着」を機会に活用するという見通しも示されている。
中国外交部の陸慷報道官は、25日午後の定例記者会見で「中止」の事態を直接取り上げず、「波紋」という表現を使い「見守っている」と明らかにした後、「同時に、トランプ大統領も依然として適切な時に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と会談したいと明らかにしており、朝鮮(北朝鮮)も米国と膝をつき合わせて問題を解決したいと明らかにしたことにも注目する」と付け加えた。両国の対話に向けた意志がまだあるため、破局とは言えないということだ。
官営の「チャイナ・デイリー」は25日付の社説で、トランプ大統領が金委員長に電話や手紙で連絡してほしいとしたのが「生意気な要請」(cheeky invitation)だったとしながらも、そのような内容があるため「対話の扉を閉ざしたわけではない」と指摘した。トランプ大統領は24日付の手紙で「あなたの気持ちが変わったら、迷わず電話したり、手紙を書いてほしい」と書いた。
社説はまた、トランプ大統領が22日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に会い「特定の条件が満たされなければ会談が開かれない可能性がある」としながらも、「それがしばらく開かれないという意味ではない」と述べたことに注目した。そして、社説は「敵対感の終焉と朝鮮半島の非核化は、多くの国々が数十年間進めてきたこと」だとし、「すべての当事国は接触を維持し、同じ目標に向かって努力すべきだ」と主張した。
中国専門家たちの間でも、朝米対話が完全に終わったわけではないという声も上がっている。遼寧社会科学院の呂超研究員は「環球時報」に「完全に終わったわけではない。続いて両国のより激しい神経戦があるかもしれない」とし、「米国も完全に放棄するより、体面を保つため、朝鮮(北朝鮮)にさらに多くを要求する可能性もある」と話した。呂研究員は、北朝鮮の現在の交渉の地位についても「朝鮮(北朝鮮)はいかなる損失もなく、ただ原点に戻っただけ」だとし、「核実験場の廃棄で、道義上、国際社会の賞賛を得た」と評価した。
中国の利害関係上、朝米首脳会談がギクシャクしても損をすることはないという評価もある。最近、貿易交渉や南シナ海問題、台湾問題など、米中対決構図が重なっているだけに、朝米の膠着は中国に身動きの取れる空間を作ったということだ。米国が北朝鮮を再び圧迫するため、中国に対北朝鮮制裁への協力を要求すれば、中国はこれを口実に米国の譲歩を引き出せるということだ。
中国専門家ジェームズ・マンはニューヨークタイムズに「(朝米)首脳会談が延期される程度ではなく、最大限延ばされることが習近平国家主席の利益にも合致する」とし、「『妥結のない交渉』は、中国が米国を相手するのにレバレッジを提供する。貿易交渉においては特にそうだ」と分析した。成曉河人民大学教授は「(朝米首脳会談の)の撤回は、中国に“中断された交渉”を救済するといった機会を提供する」と話した。
中国で「米国は強硬に、北朝鮮は穏健に」という世論が高まっているのも、このためである可能性が高い。「環球時報」は25日付の社説で、米国の“心変わり”を強く批判した。社説は「米国がいかなる説明をしても、24日の首脳会談中止の決定を、国際世論はワシントンがイランの核協定を脱退したことと結びつけて見るようになるだろう」とし、「米国政府が自分勝手でやりたい放題だという外部の見方を強め、米国の国際的信用を落とすだろう」と批判した。
一方、同社説は、北朝鮮がこれまで朝米中および南北関係の改善と金正恩(キム・ジョンウン)委員長の国際舞台デビューによる理解の増進など得たものが少なくないとし、「中国は必ず今後も朝鮮(北朝鮮)との関係改善を続け、友好的な流れを発展させなければならない。我々は韓国も(朝鮮)半島になかなか訪れない和解の気流を重視すべきだ」と主張した。
一方、中国はトランプ大統領が習主席を「世界的水準のポーカープレーヤー」と言うなどの形で提起した「中国責任論」は事実上無視している。これに先立ち、23日、陸報道官は「中国は(朝鮮)半島問題で和解を勧めて対話を促すのに力を尽くしながら、積極的な役割を果たしてきた」という従来の立場を再確認した。同日の記者会見で彼は「我々は朝米が最近収めた肯定的な進展を重んじ、忍耐心を維持しながら、互いの善意を理解し互いに向き合って行きながら、対話と交渉を通じて互いの懸念を解決するのに引き続き努力を傾け、朝鮮半島の非核化プロセスを進めていくことを望んでいる」と述べた。