「大会の理念が、私がサッカーを通じて追求した目標と一致したため、参加を決めました」
韓国にも少なからぬファンがいる在日コリアンサッカー選手の安英学(アン・ヨンハ・39)が特殊な「ワールドカップ」に参加する。今月末から来月9日まで、英国ロンドンで開かれる少数者のワールドカップである「独立サッカー連盟」(ConIFA)に監督兼選手として出場を決心したのだ。
安英学は2010年の南アフリカ共和国ワールドカップに北朝鮮代表として出場し、2006~2009年にはKリーグ釜山アイパークと水原サムスンで活躍したベテランのミッドフィルダーだ。彼は最近、東京で行ったハンギョレとのインタビューで、「この大会には北朝鮮代表ではなく、在日代表として出場する」と話した。独立サッカー連盟の大会は、国際サッカー連盟(FIFA)に加盟していない少数民族や共同体が参加するものだ。今年で3回目を迎える。
「私は日本で生まれた朝鮮人です。日本のJリーグでプレーして、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)代表も務め、韓国のKリーグでも選手として活動しました。しかし、私はそれらの国(韓国、日本、北朝鮮)の人ではないかもしれません。サッカーを通じて(3カ国の)橋を渡ったわけです。人と人の間に橋を架けるというConIFAの大会理念が私のサッカー人生ととても重なります」
彼が属した在日コリアンチームの名称は「日本の統一コリアン」(United Koreans in Japan)だ。デザイン関連の仕事をする知人に頼んで作ったチームのエンブレムには、韓国や北朝鮮、日本の要素をすべて盛り込んだ。朝鮮半島を象徴する赤色の虎を中央にいれ、枠は日本のサッカー代表チームの象徴である藍色に決めた。彼は「日本的要素も必ず入れてほしいとお願いした。日本という要素も私たちには欠かせない部分」だと話した。
安英学はConIFAの大会に監督兼選手としてプレーする。彼は昨年1月、Jリーグ横浜FCを最後にプロ選手として引退したが、大会のために現役に復帰した。目標は当然優勝だ。
メンバーも豪華だ。香港リーグで活躍する現役のプロ選手も加わった。選抜基準は「コリアンそして在日朝鮮人としてのプライドを持って試合に臨める人」だった。強力な優勝候補に挙げられるのは、2016年の第2回大会で準優勝したパンジャブだ。パンジャブはインド北部とパキスタン東部パンジャブ地方の人々が作った団体であり、現在ConIFAランキング1位だ。今大会を主催するバラワも優勝候補とされる。バラワはもともとアフリカ・ソマリア東部海岸地域の名称だ。バラワにルーツを持ち、現在英国に居住する人たちによるディアスポラチームだ。「両チームとも強豪だが、私たちには団結力という大きなメリットがある」と彼は言った。
安英学の国籍は朝鮮籍だ。日本が北朝鮮を国と認めておらず、日本内では無国籍者として扱われる。このため、英国ビザを取るために1カ月以上待った。英国大使館に自分が誰なのかを説明するため、自分ついてのウィキペディア英語版の説明など、提出できるものはすべて提出した。彼は「朝鮮籍には不便な点もあるが、手放すつもりはない」と話した。「朝鮮籍でも不都合のない時代がまもなく来るはずだと信じている」からだ。
安英学のため、知人たちが昨年8月、東京朝鮮学校で引退試合を開いてくれた。彼はこの試合について「見かけの華やかさはないかもしれないが、私にとっては最も華やかな引退試合だった」と話した。「朝鮮籍」安英学の二度目のワールドカップへの挑戦は成功するだろうか。