日本政府が安倍晋三首相と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長との首脳会談を希望するという意思を複数のルートを通じて北朝鮮側に伝えたと、共同通信が複数の消息筋を引用して21日、報道した。
日本側は2002年9月の小泉純一郎元首相の訪朝当時、日朝双方が合意した国交正常化と経済協力案を盛り込んだ「日朝平壌(ピョンヤン)宣言」をもって首脳会談の必要性を打診したもようだと共同通信は伝えた。平壌宣言を履行することが北朝鮮に利益になるため、首脳会談を通じてこの問題を議論しようということだ。あわせて北朝鮮による日本人拉致問題と核・ミサイル開発問題も話し合うという立場だ。
安倍首相は16日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との通話で平壌宣言に言及し、南北、朝米首脳会談を機に、日朝対話を期待すると明らかにしている。
このようにこれまで北朝鮮への圧力のみを強調してきた日本政府が対話の提案に乗り出したのは、4~5月に南北、朝米首脳会談が予定された状況で、日本国内で主要懸案である拉致問題が十分に取り上げられないだろうという焦りが反映されたものとみられる。
韓国や米国を通じて北朝鮮に拉致問題解決を要求するよりは、北朝鮮と日本の首脳が直接会い、この問題を議論しなければならないということだ。これまで北朝鮮問題対応において韓日、米日、韓米日協力を強調してきただけに、韓国と米国が北朝鮮と対話に乗り出す状況で日本だけが疎外されているという点も首脳会談提案の背景とみられる。
安倍首相は日朝首脳会談の実現のためには、米国の協力が緊要だと見て、4月中旬に予定された訪米とドナルド・トランプ米大統領との会談で日朝首脳会談の実現に向けた米国側の協力を要請する計画だ。
しかし、日本がこれまで北朝鮮への圧力の声を高めてきた状況なので、北朝鮮が日本との対話に応じるかは不透明に見える。特に日本側が要求している拉致被害者全員帰国要求と関連して、北朝鮮は「拉致問題はすでに全部解決した事案」という立場を堅持しているため、接点を見出すのが容易でない状況だ。
また、これまで「対話のための対話は意味がない」「対話のための対話には応じない」と主張してきた安倍首相の従来の姿勢とも矛盾するという批判を受ける余地もある。
安倍首相は9日、平昌冬季オリンピックの開会式に参加するため韓国を訪問した席で、北朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長としばらく話をした席で、平壌宣言に基盤を置き拉致、核・ミサイル問題を解決し、国交正常化を志向するという方針は変わらないと話した。日朝関係消息筋によると、金永南委員長は国交正常化の必要性について否定しておらず、北朝鮮が要求してきた「過去の清算」の重要性を強調したという。
同消息筋は「国交正常化の言及は、首脳会談に対する意思表明と同じだ」とし、「北朝鮮側もそのように受け止め、金正恩委員長に(日本の日朝首脳会談希望の)意思が伝わった」と話した。
河野太郎日本外相も今月中旬、米国を訪問し、マイク・ペンス米副大統領、カン・ギョンファ外交長官とそれぞれ会った席でも、日朝首脳会談を希望する意思を北朝鮮側に伝えてほしいと要求した。
他の外交消息筋によると、北朝鮮と独自のチャンネルがあるモンゴルのダムディン・ツォグトバータル外相も、先月北朝鮮を訪問した時、安倍政権のこのような意思を北朝鮮側に説明した。
日朝首脳会談が実現されれば、2004年5月の小泉元首相の2次訪朝と金正日(キム・ジョンイル)当時北朝鮮国防委員長との首脳会談以来初めてとなる。