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南北会談控え「鼻血作戦」に流れるホワイトハウス強硬派の内心は

登録:2018-02-01 22:59 修正:2018-02-03 22:10
トランプ行政府内の対北朝鮮政策を囲む 
強硬-穏健派の熾烈な暗闘 
南北対話が始まった後、 
強硬派を中心に対北朝鮮制限打撃の流れ 
トランプ大統領が中間選挙控えて 
実際に攻撃に出るかは疑問 
鼻血戦略、実効性もなく矛盾多く 
犠牲リスクもあまりに大きい
トランプ行政府内の対北朝鮮政策 強硬-穏健派の対立//ハンギョレ新聞社

 ビクター・チャ駐韓米国大使内定者の指名撤回理由の一つが、制限的な対北朝鮮予防打撃を意味する「鼻血戦略」(ブラディ・ノーズ)をめぐるホワイトハウスとの政策の意見の違いのためという外信報道が出てきて、ドナルド・トランプ行政府内部の対北朝鮮政策気流に対する憂慮と関心が高まっている。「鼻血戦略」の現実性と実行可能性に対して、疑念混じりの見解が少なくない。

 31日(現地時間)、トランプ行政府の内情に明るい複数のワシントン消息筋の話を総合すれば、対北朝鮮強硬派と穏健派が政策路線をめぐり熾烈な争闘を行っているという。強硬派側にはマイク・ペンス副大統領、ハーバート・マクマスター国家安保補佐官と、彼を補佐するマシュー・ポッティンジャー国家安全保障会議アジア担当先任補佐官、マイク・ポムペオ中央情報局(CIA)局長、ニッキー・ヘイリー国連駐在米国大使が布陣している。穏健派側には、レックス・ティラーソン国務長官とジェームズ・マティス国防長官が主軸を成している。

 トランプ行政府発足以後、二つの集団が常に緊張関係にあったが、対北朝鮮強硬派の声や動きが最近になって急速に活発になった時点は、偶然にも金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮労働党委員長の新年の辞の発表、それに続く平昌(ピョンチャン)冬季五輪を契機とした南北接触ムードと密接にかみ合っている。

 ワシントンで「鼻血戦略」議論が水面上に急浮上したのは、先月8日付のウォールストリート・ジャーナルの報道が起爆剤になった。米国の官僚らが全面戦争を触発しない範囲で北朝鮮の核やミサイルに制限された打撃を加えることが可能なのかについて議論中という内容だった。偶然にも南北高官級会談を目前にした時点だった。

 ハンギョレの取材の結果、この報道以後にポッティンジャー先任補佐官が米国内の朝鮮半島専門家たちの非公開の集いで「トランプ大統領は真剣に鼻血戦略を検討している」という発言をしていたことが分かった。ポッティンジャー先任補佐官は「制限的な対北朝鮮打撃がトランプ大統領の中間選挙に役立つ」という趣旨の発言もしたと伝えられた。ワシントンの朝鮮半島専門家たちの間で、ホワイトハウスが本当に軍事行動を真剣に検討しているという信頼が広がった背景だ。

 専門家たちは、強硬派の動きと保守マスコミの報道のタイミングを考慮する時、彼らの狙いは南北関係の雪溶けにブレーキをかけることと分析している。特に、トランプ大統領が4日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領との電話通話で「南北対話を100%支持する」と発言した以後、彼らが強く当惑したと伝えられた。

米ホワイトハウス//ハンギョレ新聞社

 「鼻血戦略」の実行をトランプ行政府内部でどれほど真剣に検討しているかも依然として疑問だという見解が少なくない。まず、「鼻血戦略」は米国が先制的に予防打撃をしても、北朝鮮が体制の絶滅を憂慮して米国に報復しないという前提の下にのみ成立する。金正恩委員長が「理性的」であってこそ成功可能な戦略であるわけだ。だが米国の強硬派は、金委員長が「残忍で非理性的」なので交渉と予測は不可能だと判断している。鼻血戦略自体が論理的矛盾を抱いているわけだ。

 第二に、「鼻血戦略」を作戦として実行することも現実的に難しいという評価が多い。金委員長が理性的であると“100%”確信できないならば、北朝鮮の報復可能性に必ず備えなければならず、被害を最小化するためには在韓米軍を撤収させるなり米軍人の家族など非戦闘員を先に疎開させなければならない。だが、北朝鮮はこれを先制攻撃の兆しと判断して先制攻撃を加える危険が今なお残る。

 また、米軍を撤収させずに打撃を加えるには、在韓米軍基地および在日米軍基地に対する最大限の防御装置を用意しなければならず、準備のためには少なくとも数カ月かかり、韓国および日本政府の協力なしには不可能だと軍事専門家たちは指摘した。

 こうした理由からワシントンの事情に明るいある専門家は「トランプ大統領は中間選挙を控えて“勝つ戦争”ではなく“利益が残る戦争”を望むだろう」とし「状況がどのように展開するかわからない対北朝鮮制限打撃を“利益が残る戦争”と考えるかは疑問」と指摘した。別のワシントンのシンクタンク関係者は、いくら非公開の集いであっても専門家たちに話せばすぐに外部に知らされる状況を知らないはずがないポッティンジャー先任補佐官が「鼻血戦略」を話したこと自体が「これを深刻に考慮していないことの傍証」と解説した。心理戦である可能性が大きいと見ているわけだ。

 ワシントンポストのコラムニスト、ジョッシュ・ロジンもこの日「数人の行政府官僚と専門家が、昨春に汎省庁検討を通じて決定し、トランプ大統領が承認した『交渉条件創出のための最大の圧迫』という対北朝鮮政策には変わりがないと話した」と伝えた。国防部の事情に精通した消息筋も「すべての軍事オプションを準備しているのは事実だが、実際にはオプションとしてのみ持っているだけ」と言い切った。

 強硬派に押されていた穏健派が、以前よりは多少力を持ち始めたという評価も出ている。国務部の事情に詳しい消息筋は「党から派遣された国務省高位官僚が、職員に対しティラーソン長官が今後も残留するだろうと話した」と明らかにした。トランプ大統領が、国連パレスチナ難民機構に対する支援金の全額削減を主張したニッキー・ヘイリー大使に対抗して半減を支持したティラーソン長官とマティス長官の手を上げた“小さな勝利”も話題になった。

 だが、穏健派の影響力がまだ制限的であることも事実だ。ホワイトハウスの事情に明るい消息筋は「トランプ大統領の文大統領支持発言が、強硬派の公開的な抵抗の動きを加速している局面」だとし「文大統領とトランプ大統領の個人的な信頼関係が継続するかがカギ」と分析した。別の消息筋は「結局、北朝鮮が平昌以後にどんな態度を見せるかが、トランプ行政府および専門家らの北朝鮮に対する世論の地形を左右することになる」と見通した。

ワシントン/イ・ヨンイン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/830445.html韓国語原文入力:2018-02-01 21:15
訳J.S

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