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[記者手帳]日本の嫌韓と韓国の反日

登録:2016-10-08 01:22 修正:2016-10-12 08:24
わさび・韓国人卑下するバス乗車券など日本の根深い嫌韓と 
日本の政治家の妄言に反応する韓国の反日は異なる 
さらに気がかりなのは第2韓国学校の見直しなど公的な嫌韓政策

 3年前、日本に赴任して間もない頃のことだ。

 知人の紹介で日本のある地方紙で働く日本人記者と夕食を共にすることになった。日本に赴任した2013年9月は日本国内の嫌韓ブームがピークに達していた時期だった。東京の「韓流通り」の新大久保では、毎日のように「チョン(韓国人を卑下する言葉)は日本から消えろ」と叫ぶ在特会(在日特権を許さない市民の会)の嫌韓集会が続いていた。

 自然な流れで「日本の嫌韓」と「韓国の反日」が酒席の話題に上った。当時、彼は「今見ている『嫌韓集会』は枝葉に過ぎない。日本人には骨の髄まで韓国・朝鮮に対する差別意識がある」と話した。日本に到着してから1カ月も経たない私にとって、彼が投げかけたその言葉は心の傷となったが、だからこそできるだけそのような事実を意識せず過ごそうと努力してきた。

 最近、日本国内の嫌韓の流れに敏感に反応せざるを得ない在日同胞のフェースブックの友人たちから、相次いで不快な話を聞いた。一つは、韓国人観光客が多く訪れる大阪の「市場寿司」難波店で、「韓国人観光客が日本語がわからない様子だと、従業員同士で『チョン』とあざ笑いながら料理を作る。わさびが多く入った寿司を食べて苦しい顔で涙を流すお客さんを見て、『あの顔見た?』と言いながら笑っている」という内容だった。

関西地域の大手バス会社「阪急バス」の従業員が4月19日、大阪梅田から兵庫県有馬温泉に向かう韓国人の名前を「キム・チョン」と入力したバス乗車券=YTN//ハンギョレ新聞社

 それでなくとも息をすることすら苦しい毎日なのに、急激な疲労感に襲われて記事にしなかった。再び数日後には関西地域の大手バス会社である「阪急バス」の従業員が、4月19日、大阪梅田から兵庫県の有馬温泉に向かう韓国人のバス乗車券に「キム・チョン」という名前を書いたというニュースを聞いた。キム・チョンを日本語で言ったら、「鈴木チョッパリ」(下駄をはいた奴という意味で日本人を卑下する言葉)くらいになるだろう。バス会社側は6日、日本のメディア取材に「聞こえたまま入力したもので、悪気はなかったと考えている」と釈明したが、その言葉を誰が信じるだろうか。

 韓日関係が悪化した2012年から、日本では大規模な嫌韓ブームが起こった。当時、日本の書店に行くと『呆韓論』や『韓国人による恥韓論』など、嫌韓論が本棚を占領していた。韓国を蔑視して、嘲弄し、結局は韓国は3流国家に転落して滅びてしまうだろうと呪う内容だ。毎日あふれ出てくる嫌韓ニュースで心まで暗くなり、このままだと鬱になるかもしれないと思ったこともある。

 多くの日本人が、韓国には「反日」があるではないかと反論するだろうが、韓国の反日には日本の嫌韓のような他の民族に対する差別・蔑視・呪いの感覚はない。韓国人のほとんどが日本人の誠実さや勤勉さを尊敬しており、毎年ノーベル賞受賞者を出している日本の基礎科学の底力に驚嘆している。反日感情が噴出するのは、日本が過去に犯した植民地支配と侵略の歴史に対し、正しく謝罪する姿を見せないような印象を与えるときくらいだ。過去の歴史的経緯を見ても、韓国は日本を侵略して殖民支配したことも、言語や文化を奪おうとしたこともない。また、首都に大地震が発生した際、怪しそうな人に「15円50銭」と言わせて、正しく発音できなかった人を虐殺したこともない。

 韓国人がどれくらい日本を好きなのかを示す統計がある。最近3~4年間の急速な関係悪化にもかかわらず、日本を訪れた韓国人の数は、2012年の204万人から、2013年には245万人、2014年には275万人、2015年には400万人に急激に増えている。今年は8月までで、すでに328万人が日本を訪れた。この勢いだと、今年日本を訪れる観光客の数は500万人を超えるかもしれない。これに比べて韓国を訪れる日本人観光客は2012年の351万人から2013年には274万人、2014には228万人、2015年には183万人に急速に減った。

 問題は、このような現実に対処し、管理していく日本政府の姿勢だ。 最近、日本では「ヘイト・スピーチ防止法」などが施行され、大規模な嫌韓集会は減少した。常識的な日本人なら、当然わさびとチョン事件を恥ずかしく思い、対策を考えているだろう。

 一方、日本政府は、国が直接乗り出して高校無償化の適用対象から朝鮮学校を除外するなど、露骨な民族差別政策を展開している。これらは対北朝鮮制裁の一環ともいわれているが、韓国も例外ではない。右翼の小池百合子・東京都知事は前任の舛添要一知事が事実上決定した第2韓国学校の敷地貸与案を見直す方針を示した。

 今月3日、日本の安倍晋三首相は、日本軍「慰安婦」被害ハルモニ(おばあさん)に「お詫びの手紙」を送ってほしいとの韓国の要求に、「毛頭考えていない」と言い放った。米国が同じ要求をしてもそのような言葉を使っただろうか。安倍首相が自ら示してくれた韓国に対する根深い蔑視感情を考えると、その国の国民が、韓国人が食べる寿司にわさびを多めにいれたり、乗車券に「チョン」と書いたとしても、それほど驚くべきことではない。

東京/キル・ユンヒョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/764637.html 韓国語原文入力:2016-10-07 11:38
訳H.J(2385字)

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