本文に移動

[ニュース分析]ドイツ・日本・韓国に防衛費圧迫するトランプ氏

登録:2016-05-06 01:31 修正:2016-05-06 13:40
「同盟国が100%負担」発言の波紋
米国共和党の大統領選挙予備選挙で勝利したドナルド・トランプ氏(右)が2月28日、アラバマ州マディソンでの遊説で、トランプ陣営の外交安保分野の顧問の役割を果たす「国家安全保障諮問委員会」委員長ジェフ・セッションズ上院議員が支持演説を行うのを隣で聞いている=マディソン/ AP聯合ニュース

「彼らが交渉に応じなければ
米国は世界の警察の役割を果たせない」
全額負担か米軍の撤退かの選択を迫る
執権すれば実際に断行するかに注目

 ドナルド・トランプ米共和党大統領候補が4日(現地時間)、「海外駐留米軍」の駐屯国に対し防衛費の追加分担を求め、撤退で圧迫する発言を行ったのは、今回が初めてのことではない。しかし、この日のトランプ氏の発言は、ライバル候補が選挙戦の放棄を宣言し、共和党の大統領候補に確定した直後にされたことから、これまで以上に関心と懸念が高まっている。

 第一に、トランプ氏が韓国をはじめとする同盟国に米軍の駐留費用の100%を負担させるのかが問題になる。同日、トランプ氏はCNN放送の司会者の質問に対し、1秒程度考えているように見えたが、「100%負担はなぜいけないのか」と問い返した。事前に準備したというよりも、その場で出てきた答えであることがうかがえる。

 しかし、彼が大統領になれば、このような即興性が周辺国にとってはより危険かもしれない。米国の大統領制度と巨大な官僚制の属性からして、大統領の発言が「ミス」だとしても、これを履行するためにあらゆる政策資源を動員することが予想されるからだ。これは、交渉過程で韓国などの同盟国には巨大な圧力となりかねない。韓国をはじめとする同盟国に駐留費用を100%負担させることはなくても、分担金の大幅な引き上げを要求することは確実だ。

 第二に、韓国がトランプ陣営の集中的な標的になっているかどうかだ。トランプは、外交安保分野で最もまとまった形で自分の意見を示した先月27日の外交安保政策演説で、大統領就任後、北大西洋条約機構(NATO)とアジアの同盟国首脳に会い「防衛費のバランスを取り直すこと」を協議する意向を明らかにした。NATOを除けば、韓国や日本、サウジアラビアなどの特定の国を名指ししたわけではない。しかし、トランプ氏が防衛費分担と関連し「同盟の再調整」という大きな原則を明確に掲げているうえに、大規模の米軍が駐留するアジア同盟は韓国と日本がほぼ唯一であることを考えると、韓国がトランプ氏のターゲットの外郭に位置しているとは言えない。

 だからといって、トランプ氏が韓国を集中的に手につけるべき対象としているとも見られない。これまでトランプ氏が韓国について言及する際には、ドイツや日本などをほぼ同時に取り上げてきた。また、あまり緻密に計算して発言しないトランプ氏の性格から、(発言の)重さを判断するのは難しい。

 第三に、駐屯国が米国の巨額の防衛費分担要求を受け入れない場合、果たして米軍を撤退させるのかという問題だ。これについては交渉カードなのか、実際に米軍の撤退まで断行するのか、トランプ氏の本音を知ることができないことに不確実性が潜んでいる。

世界に駐屯する主な米軍//ハンギョレ新聞社

共和党の主流と見解の差大きく
公約調整の過程で内紛避けられず

 これに関連し、トランプ氏は対外政策演説で「米国の外交政策は、予測不可能でなければならない」として、「曖昧さの原則」を維持することを表明した。米国の伝統的な対外政策は、同盟国の信頼を得るために、透明性と予測可能性を強調したが、トランプ氏はこれまでとは正反対の戦略を取っているのだ。トランプ氏の本音が明らかになるまでは、かなりの時間を要するものと見られる。

 ただし、トランプ氏が一貫して「世界の警察としての米国の役割」を放棄する可能性を示唆しながら、孤立主義路線を明らかにした点と、米国内の世論の動向を考えると、彼が大統領になれば、米軍の撤退や縮小が可視化する可能性も排除できない。この場合、最初の対象はNATOになる確率が高い。トランプ氏は、NATOの性格が「冷戦的」と主張しながら、イスラムのテロリズムと難民問題に共に立ち向かうことで、役割を再調整しなければならないと主張した。このようなトランプ氏の認識が、朝鮮半島にまで拡大されると、在韓米軍の撤退や削減が韓米間の交渉で議題にあがる可能性もある。日本でも最小限の米軍だけを残し、韓国と日本が自主的に北朝鮮の脅威と中国の浮上に対処するように求めることも考えられる。

 トランプ氏の対外政策の感情的な基盤とされる米国内の極右保守性向の自由至上主義者グループも、このような主張を展開している。しかし、これは世界各国に米軍を駐留させることで仮想の敵を牽制し、米国の覇権を維持しようとする伝統的な共和党の見解とは全く異なるもので、大統領候補の公約を調整する過程で、トランプ氏と共和党の主流との間で内紛が浮き彫りになる可能性もある。

ワシントン・東京/イ・ヨンイン、キル・ユンヒョン特派員、イ・ジェフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国語原文入力:2016-05-05 19:25

https://www.hani.co.kr/arti/international/america/742669.html 訳H.J

関連記事