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[インタビュー] 日帝時代の抵抗詩人尹東柱先輩の足跡を追い続け

登録:2015-02-03 23:57 修正:2015-02-04 08:13
詩人尹東柱を記念する立教の会の楊原泰子代表
詩人尹東柱を記念する立教の会の楊原泰子代表が、詩人尹東柱が1942年に日本の立教大学在学中に勉強した教室を案内している。//ハンギョレ新聞社

90年に息子に韓日の歴史を教え
尹詩人が立教大の先輩という事実を発見
「無念な死に衝撃を受け…留学の痕跡を追跡」
立教時代の下宿の位置も捜し出した

抵抗を越えて普遍的価値を追求した知性
今年70周年を迎えて遺品などを巡回展示

 「ここが尹東柱(ユン・ドンジュ)が実際に授業を受けたと思われる教室です。私もこの教室を使ったことがあります」。先月30日午前、東京池袋の立教大学キャンパスは白い雪に覆われていた。 「詩人尹東柱を記念する立教の会」(以下、立教の会)代表を務めている楊原泰子(やなぎはら やすこ)氏(68)が1942年の尹詩人の在学時期そのままである本館やチャペル、今は展示館になっている図書館などを直接案内してくれた。

 73年前、若き尹東柱はここで植民地知識人という羞恥を覚えながら「大学ノートを小脇に老教授の講義を聴きに」(『たやすく書かれた詩』)几帳面に通ったのだろう。楊原氏は「彼は単純な抵抗より、もっと深い普遍的な価値を追求した詩人だったし、人間としても清らかさを備えていた。そのような人を死なせた日本人として贖罪したい気持ち」と話した。

 立教大学史学科64年度入学生の楊原氏が尹東柱に関心を持つようになったのは、偶然からだった。 25年前の90年、小学生の息子が韓国に野球遠征に行くことになった。息子に韓国という国に関する歴史を説明し、自分が考えるより韓日の歴史についてよく知らないという事実を悟った。 これを契機に過去の歴史を勉強した彼女は、日本に韓国の現代時を紹介してきた作家の茨木のり子(1926~2006)のエッセイに驚くべき一節を発見することになる。 尹東柱が自身の母校である立教大学で勉強したことがあるという事実を知ったのだ。

 楊原氏は「尹東柱が立教の先輩で、自分と同じ椅子に座って授業を聞いたことがあると考えると、じっとしてはいられなくなった」と話した。 自分よりわずか20年前に同じ大学に通った人が「到底理解できない無念な死に至ったという事実に大きな衝撃を受けたため」だった。 以後、彼女は「韓国では調査が難しい尹東柱の日本での足跡を調査」し始める。

 尹詩人は42年4月から10月までの6カ月程度こちらに留まった。その後、京都の同志社大学に編入した彼は43年7月に治安維持法違反(独立運動などの疑い)で逮捕され服役中だった福岡刑務所で45年2月16日に亡くなった。

 楊原氏は20年かけ立教同窓生という“利点”を活かして、当時の大学新聞を探したり約150人の同窓生に手紙を送るなどして、これまでベールに包まれていた尹東柱の日本での生活の空白を一つずつ埋め始める。

 このうち彼女が確認した最大の成果は、尹東柱の代表作の一つである『たやすく書かれた詩』で「六畳部屋は他人の国」と表現された立教大学時代の下宿屋の位置を東京新宿区高田馬場1丁目と特定したことだ。 楊原氏は尹東柱とともに立教大学に通った白仁俊(ペク・インジュン 1920~99)北朝鮮朝鮮文学芸術総同盟委員長が、89年に文益煥(ムン・イクファン)牧師と北朝鮮を訪問した作家の黃ソク暎(ファン・ソギョン)に「尹東柱と同じ下宿にいた」という証言を残した事実に着眼して、彼の学籍簿の住所等を通して下宿の位置を特定できた。このような事実が分かってみると、尹東柱が『愛らしい想い出』で「春はすっかり去って東京郊外のある静かな下宿部屋で/(中略)/今日も汽車は何度も無意味に通り過ぎて」と詠んだ駅は現在のJR高田馬場駅と推定される。

 すでに70年前に亡くなった他国の詩人を記憶することが、日本人にとってどんな意味があるのだろうか。楊原氏は「現在日本は危険な社会的状況に置かれている。 もちろん私たちが死に至らせた詩人だが、その中で尹東柱が生きてきた方式とその詩について私たちが学べる部分があるという気がする」と話した。 彼女は「尹東柱は時代の価値観に惑わされずに長い視野で普遍的な価値を引き出してきた。 彼はキェルケゴールのような実存哲学を熱心に勉強したし、そのためか彼が70年前に書いた詩が普遍的な力を持って今に伝えられたと思う」と話した。 立教の会で毎年2月末に行っている尹東柱追悼式には、彼の詩を愛する300~400人の日本人が集まる。

 今年は尹東柱が悲運の死を迎えて70周年になる年だ。楊原氏はこれを記念して彼の足跡が残っている日本の福岡(5~9日)、京都(13~17日)、東京(21~25日)を巡って遺品と遺稿を展示する行事を準備中だ。 この行事は尹東柱の甥であるユン・インソク成均館大学建築学科教授(58)が2013年2月に延世大学に寄贈した尹東柱の遺品の複製本を延世大学から借りて行われる。

 楊原氏は「尹東柱は本に自身の感想や購入先などを几帳面に書いていた。そのような落書きまでを几帳面に再現した複製品なので、原本と同じ印象を受けられる。中でも彼は鄭芝溶(チョン・ジヨン)の詩集には“傑作”という落書きを残しもした」と話した。

東京/文・写真 キル・ユンヒョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/676654.html 韓国語原文入力:2015/02/03 21:04
訳J.S(2342字)

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