パレスチナ ガザ地区で最も由緒正しい地域の一つであるガザシティ ザイトン地区にはギリシャ正教の礼拝堂である聖ポルフュリオス教会が15世紀から近隣のウィラヤ モスクと共存している。
イスラエル軍の攻撃でパレスチナ人死亡者が1100人に肉迫する状況で、300人を越える難民が身を守るためにこの教会を避難所とした。 シャジャイヤで教師をしていたマフムド・アブ チェフラの大家族22人もこちらに留まっている。 シャジャイヤは先日イスラエルの大規模爆撃を受け、この村だけで70人以上が命を失ったところだ。 マフムドは「一時的に臨時休戦になった間に私たち家族はかろうじてシャジャイヤを脱出し、ここに避難して来た。 自宅はイスラエル軍の戦車砲で破壊された。 家族全員が無事なのはアラーのおかげだ。 キリスト教会の中に入ったのは生まれて初めてだ。 だが、そんなことは問題ではない。 私たちは皆同じパレスチナ人だ」と話した。
避難民の数が急増するとこの教会は門を開いて難民を迎え入れた。アレクシオス大主教は「人々を助けるために教会の門を開けた。 困っている人を助けるのは教会の義務だ。 宗教の違いは問題にならない」と話した。 大主教は「人々はモスクよりはこちらが安全だと感じている。 すでに多くのモスクが爆撃により破壊されたからだ。 なぜイスラエルがそのようなことをするのか、誰も分からない」と話した。
ガザ地区には約1400人(正教会、カトリック、新教を含む)のキリスト教徒がいる。人口180万人の99.9%以上がムスリムで、キリスト教徒は0.1%にもならない。 だが、407年に建てられ1600年以上にわたり信仰を守ってきた聖ポルフュリオス教会のようにムスリムとキリスト教徒はこちらで永く共存してきた。
国連待避所もすでに飽和状態
難民300人余り 臨時休戦の隙に
ギリシャ正教の礼拝堂へ避難
大主教「難民を助けるのは教会の義務」
26日、教会の小さな庭で子供たちは走りまわり、建物内のイエス聖画の下ではヒジャブをまとったムスリム女性が安らかに眠ったり赤ん坊の世話をしていた。 祈祷の時間になれば、十字架が描かれた門の前でイスラム式祈祷を捧げる難民の姿も見られた。 数日前に近くに爆弾が落ちて教会に破片が飛び込んだこともあり、時々あちこちから爆発音が聞こえるものの、イスラエル軍は教会の建物には直撃弾を撃たないという信頼から安心している様子だった。 だが狭い教会内にあまりに多くの避難民が押し寄せたうえに、赤ん坊など子供たちに食べさせる食糧も充分でなく、厳しい状況だ。 国連が運営する臨時待避所70か所余りもすでに10万人を越える難民で限界に至り、最近そのうちの一か所が爆撃を受けて16人が亡くなった。
多くの人々がイスラエルとパレスチナ、そして中東と西欧の絶えざる葛藤が宗教のためだと感じている。 だが‘一方の手にはコーラン、他方の手には刃’という言葉に代表されるイスラム教が、暴力的に他宗教を排斥しているという偏見は誤解だ。 コーランの2章(256節)には「宗教には強制があってはならない」という一節があり、今まで中東を何度も取材する間、私に強圧的にイスラム教を強要するムスリムは一人もいなかった。 イスラエル-パレスチナ葛藤の根源は、石油覇権に関連した西欧の中東政策とユダヤ民族主義などに見出さなければならないだろう。
戦争の悲劇の中で、真の宗教的和解が実践されている聖ポルフュリオス教会で、宗教を前面に掲げて虐殺を繰り返している現実の逆説に胸が痛む。
キム・サンフン江原大教授・写真家