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重大な岐路に立たされた「相互関税」…米最高裁判事ら「議会権限の侵害ではないか」

登録:2025-11-07 06:48 修正:2025-11-07 07:27
米連邦最高裁判事の多くが懐疑的な見解  
すでに関税交渉を終えた韓国政府は「困惑」 
トランプ大統領が敗訴した場合、品目別関税などでさらに強硬になる可能性も
相互関税事件に対する米連邦最高裁判所の公開弁論が行われた5日(現地時間)、連邦最高裁判所庁舎前で、ある市民が関税に反対する内容が書かれたプラカードを持っている=ワシントン/AFP・聯合ニュース

 韓国政府が米国との関税交渉を妥結したなか、米国連邦最高裁判事の多数がドナルド・トランプ政権の相互関税賦課に対して違憲の可能性を指摘するなど懐疑的な立場を明らかにし、最終判決に関心が集まっている。このような見解が判決につながれば、トランプ大統領の「関税戦争」は内部から大きな打撃を受けるだろうが、追加の関税賦課などの反撃にともなう混乱が再び大きくなるという見通しもある。

 5日(現地時間)、相互関税事件に対する米連邦最高裁判所の公開弁論で、最高裁判事9人のうち革新(進歩)派の3人はもちろん、保守派からも3人が審問過程で相互関税について懐疑的な発言をした。連邦最高裁は迅速審理手続きにより数週間以内に結果を出すものとみられるが、最高裁判事の過半数が訴訟を起こした貿易会社などに軍配をあげる可能性が見えてきた。

 弁論で米法務省は、相互関税は輸入規制政策であり、関税収入は付随的な結果に過ぎないと主張したが、審問に出た最高裁判事らは、関税は議会の権限である課税権に関わるものだと反論した。ニール・ゴーサッチ最高裁判事は、このようなやり方で課税権を大統領に渡せば「議会が貿易規制や戦争宣布などに対するすべての責任を大統領に渡すことをどうやって防げるのか」と述べた。エイミー・コニー・バレット最高裁判事は「すべての国が米国の国防および産業基盤にとっての脅威になるから、関税を課さなければならなかったということなのか」として行政府を追い詰めた。

 この事件の争点は、大統領が「異例で異常な脅威」に対応して非常事態を宣言し、外部の脅威と関連した金融取引などを遮断することができると規定した国際緊急経済権限法が相互関税の根拠になりうるかだ。一審と二審は、関税は非常事態への対応手段として法に明示されておらず、税金は憲法により議会が定めるものだとし、相互関税を無効化する判決を言い渡した。ジョン・ロバーツ最高裁長官もこの法を「どの国のどの商品であれ、時間がどれだけかかっても関税を賦課」する根拠として使うことは「不適切だと思う」と指摘した。

 このように保守側の最高裁判事3人も否定的な態度を示したことを受け、トランプ大統領が事実上すべての貿易相手国に10~50%を課した相互関税は違憲・違法であるという最終判断が下される可能性が高まっている。その場合、トランプ政権は4月以降、3倍ほど増えた関税収入の半分以上を輸入業者に返さなければならなくなることもありうる。麻薬性物質であるフェンタニルの取り締まりへの非協力を理由に中国やメキシコ、カナダに課す「フェンタニル関税」も同じだ。ただし、特定の輸入品が国の安全保障を損なうとして、通商拡大法第232条を根拠に自動車(25%)と鉄鋼(50%)などに課した品目別関税は審理対象ではない。

 トランプ政権の敗訴が確定すれば、15%の相互関税率を適用される韓国などの大多数の国の負担はひとまず大きく減り、関税戦争の勢いは一段落するものとみられる。また、3500億ドルの対米投資ファンドを約束した韓国政府としては、困った立場に立たされる。トランプ大統領が25%適用を掲げた相互関税を15%に下げるのが交渉の主な目的の一つだったためだ。ところが、交渉妥結国が米国との力学関係のため、再交渉を要求することは容易ではないものとみられる。韓国政府関係者は「自動車品目の関税解決も交渉の主な理由」だったとし、米国が他の報復をする可能性も念頭に置いていたと述べた。

 米政府の敗訴が確定した場合、トランプ大統領が警告した通り、通商拡大法第232条による品目別関税の対象を大幅に増やし、混乱が加重される恐れがあるという見方もある。この場合、品目ごとに安全保障の影響調査をしなければならないなど、トランプ政権はかなり複雑な手続きを踏まなければならない。一方、韓国など交渉を妥結した国々も、品目別関税の拡大に再び対応を迫られる負担を抱えることになる。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はトランプ大統領が深刻な貿易不均衡を理由に150日間15%の関税を賦課できるという「1974年貿易法」を持ち出す可能性もあるとの見通しを示した。

イ・ボニョン記者、ワシントン/キム・ウォンチョル特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1227812.html韓国語原文入力: 2025-11-07 01:16
訳H.J

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