韓米関税交渉が合意に至り、韓国は米国に2000億ドルを現金で投資(年間200億ドルを限度とする)することになっが、昨年末の時点で米国地域に対する韓国企業の海外直接投資(FDI)残高は2389億ドルほどであることが分かった。ここ4年間の韓国企業による米国市場への直接投資額は、年間222億~298億ドル。政府は企業の年間投資額に迫る資金を、10年間にわたって投資しなければならないことを意味する。
4日にハンギョレが韓国輸出入銀行海外経済研究所および韓国銀行の国民経済計算(国際投資対照表)を分析したところ、韓国の海外直接投資残額(投資回収分を除く)は今年6月末現在で8047億6000万ドルにのぼる。2024年末の時点では7626億4600万ドルほどだった。昨年末時点での海外直接投資総額のうち、米国市場への投資額は2389億2800万ドルで、31.3%ほどを占める。今後、韓国政府が投資することになる現金ファンド2000億ドル(韓米の民間造船企業の協力ファンド1500億ドルを除く)は、現在の韓国企業の米国市場への投資残高に匹敵する規模になるということだ。
海外直接投資は、ある国の企業による海外での新たな企業や工場の設立への投資額、既存の海外企業の株の買収額、1年以上の融資額を含む。単に海外の証券商品に投資するポートフォリオ投資は除いた金額だ。
外国為替市場に及ぼす影響を最小化するために年間投資限度として設定された200億ドルは、ここ4年間の韓国企業による米国への年間投資額とほぼ同水準。米国市場に対する韓国企業の直接投資実行額は、2021年279億3000万ドル、2022年298億1700万ドル、2023年288億2300万ドルと、300億ドルに迫っていたが、2024年は224億1200万ドルに減っている。昨年の韓国企業の海外直接投資の実行額は計658億ドルで、うち34%が米国市場への投資だった。今後、造船業協力ファンドを含めた3500億ドルが米国市場に投資されれば、単純計算で米国市場への直接投資残高は5889億2800万ドル、海外直接投資残高は1兆1126億4600万ドルとなり、米国市場の割合が52.9%にまで高まる。
一方、3日に韓国開発研究院が発表した「海外投資増加の経済的含意」と題する報告書によると、18兆ウォン(約1兆9200億円)規模の国内投資が海外投資へと流出すると、韓国の国内総生産(GDP)は0.15%減少することが推定される。2024年の韓国の名目GDP(2556.9兆ウォン、韓国銀行)から3.8兆ウォン減ることになるというのだ。今後10年間にわたって3500億ドル(約500兆ウォン)が国内投資(政府および民間)に使われず、米国市場への投資として流出すると、GDPが105.5兆ウォン(約11兆3000億円)減少する可能性があるということだ。
関連して、現代自動車は先日の第3四半期の業績発表で、米国市場の自動車関税率が25%の場合は、現代自動車の関税関連コストは第3四半期に1.8兆ウォン(約1920億円、起亜自動車は除外)になるとの独自の推計を示した。年間に換算すると7.2兆ウォン(約7690億円)だが、関税交渉で税率が15%に引き下げられれば年間のコストは4.3兆ウォン(約4590億円)に減ると推定される。関税率の引き下げにより、現代自動車1社で年間2.9兆ウォン(10年間で29兆ウォン)の関税コスト削減効果があることを意味する。しかし、起亜自動車および韓国の自動車部品メーカーの関税率引き下げ効果まで含めても、今後10年間の関税コスト削減額は50兆ウォンを上回らないと推定される。米国市場の自動車関税率の引き下げを引き出すための3500億ドルの現金投資が招くGDP減少額は、関税コスト削減額の2倍ほどになるわけだ。