米トランプ政権が、韓国政府と企業の度重なる説得と要請にもかかわらず、中国内の韓国半導体企業の工場を狙った輸出規制強化措置を進めたことが分かった。中国をけん制するために、同盟国と自国企業の被害も辞さない強硬策に出たのだ。サムスン電子やSKハイニックスなどの韓国企業は、米中覇権争いにより中国事業の不確実性がますます大きくなったことを受け、「出口戦略」を急いでいる。
1日、通商当局と半導体業界の話によると、トランプ政権は数カ月前から中国向け半導体輸出規制を強化する方針を立て、韓国政府および業界にこれを予告した。韓国政府と国内企業はこのような措置が米国側にも負担になりうるという見解を繰り返し示したが、受け入れられなかったという。
実際、米商務省の産業安全保障局は先月29日(現地時間)、連邦官報を通じて「既存の輸出管理規定を改正し、サムスン電子とSKハイニックスの中国工場を『認定エンドユーザー』(VEU)リストから除外することにした」と発表した。VEUとは、米国製の半導体製造装備など米政府が規制する品目を別途の許可なしで持ち出せるよう許可する対象だ。今回の措置で、前任のバイデン政権時代の2023年10月に与えられた許可免除が一方的に取り消された。
新しい規定は今月2日の官報の掲載を経て、来年1月から施行される予定だ。このため、来年からサムスン電子とSKハイニックスの中国工場に米国の技術で作った半導体装備を持ち込むためには、いちいち米政府の許可を受けなければならない。商務省は年間1千件の追加申請があると推定している。韓国企業の中国工場を稼動させるのに必要な装備の持ち出し申請が、1日3件の割合で舞い込むという意味だ。
トランプ政権が韓国側の要求を聞き入れず強気に出たのは、中国の半導体産業の発展スピードを抑えようとする意志が反映されたものとみられる。韓国政府関係者は「これまで緩やかに運用してきた制度を強化すると同時に、『バイデン政策を消す』という側面もあると思われる」と分析した。サムスン電子は、中国西安工場でNAND型フラッシュメモリー生産量の40%前後を、SKハイニックスは、無錫と大連工場でDRAM40%、NAND20%前後をそれぞれ生産している。
中国輸出のために米国政府の許可を受けなければならない半導体装備業界の「大手」である米国企業だけでなく、サムスンとハイニックスからメモリーチップを輸入するグローバルスマートフォン・家電業界まで影響を受ける可能性がある。
韓国企業は対応策作りに腐心している。米政府が2022年10月に対中半導体輸出規制を本格的に始めて以来、関連の政策は強化され続ける傾向にあるからだ。かつては安い生産費が強みだった中国工場を維持するメリットがますます減っているということだ。ある業界関係者は、「韓国企業も、これまで現地に投資したものをできるだけ安定的に維持するレベルでのみ中国事業を行っている。今回の米政府の措置で中国における事業の不確実性がさらに高まった」と語った。
ただし、トランプ政権の露骨な規制強化の前から、韓国半導体企業の「脱中国」の動きはすでに表れていた。韓国輸出入銀行の「海外直接投資統計」によると、韓国企業の中国向けメモリー用電子集積回路製造業部門の純投資額(投資額-回収額)は昨年マイナス13億ドルで減少傾向に転じた。米政府の対中半導体輸出規制が本格化した2022年に52億ドルに達した純投資額が、2023年には0を記録し、昨年はマイナスに後退した。これは、中国の半導体工場に新規投資した金額よりも回収した投資元金の方が多かったという意味だ。
対外経済政策研究院のキム・ヒョクチュン副研究委員は「韓国の半導体企業も中国に投資した資本を回収するなど、自主的に備えているものとみられる」とし、「国内に半導体生産施設を誘致するために政府支援を強化し、米国の輸出規制に振り回されないよう、韓国の半導体装備企業の技術力向上など自立も支援する必要がある」と指摘した。