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ソウルの飲食店、今年は「8軒のうち1軒」閉店へ

登録:2024-06-03 05:57 修正:2024-06-03 07:48
[ハンギョレS] チョン・ナムグの経済トーク 
危機の自営業 
 
「コストパフォーマンス」求める中、自営業への打撃が深刻に 
4月の自営業者、昨年より9万4千人減少 
材料費の高騰、客足が遠のき次々と廃業 
ソウルでは1万5千軒以上閉店する見通し
//ハンギョレ新聞社

 韓国の自営業部門が不安だ。

 統計庁の経済活動人口調査で4月の自営業者数が昨年同月に比べて9万4千人(-1.6%)減少した。全体就業者数が26万1千人増える中で起きた現象だ。前年同月比で減少傾向を示しはじめたのは2月(-2万1千人)からだが、3月に3万6千人減を記録した後、4月に入ってからは減少幅がさらに大きくなった。自営業者には従業員を雇用して仕事をする自営業主と、従業員を雇わず一人で働く生計型自営業者がいる。4月の全国統計では生計型自営業者が9万4千人減少したことが分かった。ソウルの場合、従業員のいる自営業主が2万5千人、従業員のいない生計型自営業者が2万8千人減り、合わせて5万3千人が減少した。

■海外サイトからの直接購入が人気を集める理由

 物価上昇分ほど賃金が上がらず、実質所得が減った家計が多くなれば、内需消費の不振につながる。家計の消費に売上を依存する多くの自営業者はその余波を避けて通れない。自営業者の4人に1人の割合で従事する卸・小売業は、4月の就業者数が昨年同月に比べて3万9千人(-1.2%)減少した。

 2021年から始まった物価高騰は「コストパフォーマンス(コスパ)」を重視する消費を煽っている。海外サイトからの直接購入がさらに多くなっている。関税庁の集計によると、2020年には6357万件だった海外サイトからの直接購入(電子商取引物品通関)件数が、2023年にはその倍を越える1億3144万件に増えた。品物の値段が安い中国のサイトから直接購入するケースが特に爆発的に増え、昨年には全体の68%を占めた。コスパの高い品目を主に販売するダイソーは昨年の売上が3兆4605億ウォン(約3930億円)に達したが、これは前年に比べ17.5%増えたものだ。

 家計が消費支出で何を減らしているかは家計動向調査で見ることができる。第1四半期の都市での家計消費支出を見ると、自動車やその他の運送器具の購入を大幅に減らし、全体の交通費支出が3.3%減少したのが目を引く。通信装備の支出を7%減らし、通信サービスの支出は0.5%増加に抑えた。運動・娯楽サービス(-2.2%)、文化サービス(-13%)や塾・補習教育費(-1.8%)も減った。食料品と外食の物価が大幅に上がる中、食事費支出は5.7%増えた。価格上昇によるやむを得ない支出の増加とみられる。

 金融委員会が28日に出した資料「庶民・自営業者支援案作りに向けたタスクフォース(TF)第1回会議」によれば、個人事業者のカード売上が昨年4月から引き続き対前年同月比で減少傾向を示している。金融委員会は昨年、個人事業者の廃業率が9.5%で、前年に比べて0.8ポイント高くなり、廃業者数は11万1千人増の91万1千人に達したと発表した。イ・ヒョンジュ常任委員は会議で、「家計所得の不振などマクロ的不確実性と共に、オンラインショッピングの増加など構造的変化により脆弱層がさらに追い込まれている状況」だと説明した。

 自営業者たちは卸・小売業の他に飲食業、運輸業、修理およびその他の個人サービス業に多く従事する。カラオケはコロナ禍の中で打撃が大きかった業種だ。コロナ禍が長引くにつれ、人々の生活パターンに大きな変化が生まれた。飲み会が減り、夜遅くまで飲んだり食べたりすることが大幅に減った。コロナ禍以降も、カラオケには活気が戻っていない。

■「ローンの返済のため廃業もできない」

 消費者も出費が苦しく、サービスを供給する自営業者も苦しい代表的な業種が飲食店業だ。キムチチゲ、定食など39品目で構成された「外食」物価は、4月までのここ3年間で18%も跳ね上がった。同期間中の全体び消費者物価上昇率11.8%を大幅に上回る。消費者は価格が高くなりすぎて苦しく、値上げした自営業者も苦しいのは同じだ。飲食店を経営するソウル市小商工人連合会のユ・ドクヒョン会長は「コロナ禍の時も苦しかったが、政府の支援で持ちこたえてきた」とし、「今は食材価格が高騰し、電気料金や燃料費などの上昇で固定費が大幅に増えたが、値上げで客足が遠のいたうえ、生活習慣の変化で夜9時を過ぎると客がほとんどいなくなり、営業を続けても商売にならない」と語った。さらに、ここで値段をもっと上げたら客が減って損失がさらに大きくなる段階に入り、自営業の中で最も危険な状況に直面しているのが飲食店だと付け加えた。

 韓国地域情報開発院は地方行政許認可データを公開している。ここには現在営業中の店とこれまで廃業した店のリストがある。ソウルの一般飲食店の現況を分析してみると、コロナ禍以降、飲食店業が被った打撃を確認することができた。ソウルの一般飲食店は2020年以降、毎年1万軒以上が廃業している。2020年には1万1633軒、2021年には1万3040軒が廃業した。2022年には1万2905軒とやや減ったが、2023年には1万4642軒の廃業と再び急増した。2023年の廃業率(前年末の店数に比べた年中の廃業店数)は11.5%に達したものと推算される。昨年末、ソウルの一般飲食店は12万5727軒だった。今年に入っては4月までに5248軒が廃業したが、これは昨年同期の4636件に比べて13.2%も増えたものだ。このような傾向が続けば、今年の年間廃業件数は1万5000軒を上回ることになる。廃業率は12.5%になり、8軒のうち1軒が廃業する見通しだ。

 コロナ禍の初年度だった2020年以降、ソウルの一般飲食店は廃業が開業より多く、2020年に4022軒、2021年に4404軒、2022年に3293軒、昨年には2113軒が純減した。今年に入って4月までに689軒の減少を含め、コロナ禍以降1万4521軒が減少した。

 コロナ禍では、自営業者に元利金返済の猶予など積極的な金融支援が行われた。今は元利金を返済しなければならないが、金利が大きく跳ね上がり、利子負担が少なくない。3月末基準で、5大市中銀行で1カ月以上の延滞がある個人事業者の借入額は1兆3560億ウォン(約1540億円)で、昨年3月末に比べ37.4%増えた。同期間、5大銀行の平均延滞率は0.31%から0.42%に上がった。ユ・ドクヒョン会長は「赤字のために廃業したくても商店街賃貸契約が残っているためそれもままならず、廃業をすれば借入金を直ちに返済しなければならないがそれができず、ぎりぎりで商売を続けている人が多い」と語った。金融委員会は今後3、4回会議をさらに開き「庶民・自営業者支援案」を設けると発表した。「庶民と自営業者の返済能力を向上させ、庶民の金融が本来の機能を果たせるよう政策全般を見直す必要がある」というのが金融委員会の認識だ。しかし2022年以後に続いている高物価・高金利と実質賃金減少が問題の根源であることを考えると、「金融」が妙策になることを期待するのは難しいかもしれない。

チョン・ナムグ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1143042.html韓国語原文入力: 2024-06-02 10:06
訳H.J

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