サムスン電子の半導体部門が1年間の連続赤字に終止符を打った。人工知能(AI)ブームに支えられ、黒字転換に成功したのだ。ただ、最近もマクロ経済の不確実性は収まっていないだけに、今後AIを除くIT景気全般に弾みがつくかは未知数だとみられている。サムスン電子は最近低迷していた広帯域幅メモリー(HBM)事業で競争力を確保し、業績を引き上げる計画だ。
先月30日のサムスン電子の発表によると、同社は今年第1四半期、売上高71兆9156億ウォン(約8兆1800億円)、営業利益6兆6060億ウォン(約7500億円)を記録した。直前四半期よりそれぞれ6.1%、133.9%増えた。「半導体酷寒期」真っただ中だった1年前に比べ12.8%、931.9%増えた数値だ。
半導体部門は5四半期ぶりに黒字転換に成功した。第1四半期の半導体部門の売上は23兆1400億ウォン(約2兆6300億円)、営業利益は1兆9100億ウォン(約2100億円)。昨年、年間14兆8800億ウォン(1兆6900億円)の営業損失を出した末に黒字に転じたもの。第1四半期の営業利益は証券業界の見通し(1兆4千億~2兆1千億ウォン)にも合致する。
半導体の黒字を牽引したのはメモリー部門だった。同社は、DRAMとNANDフラッシュの平均販売単価(ASP)がそれぞれ対直前四半期比で約20%と30%台序盤の上昇率を見せ、両方とも黒字転換したと説明した。AI時代が本格化し、第5世代DRAM(DDR5)と企業用保存装置(eSSD)のような高付加価値製品を中心に需要が増えた影響だ。メモリー価格の上昇傾向を反映して進めた在庫資産評価損の還入も黒字転換に大きな影響を及ぼした。証券街は、還入の規模は1兆ウォン(約1100億円)を超えるものと推定している。
第2四半期以後のメモリー実績も「AI依存度」が高い見通しだ。スマートフォンやパソコン(PC)など、伝統的なIT部門の需要回復は遅れる可能性が高いためだ。メモリー事業部のキム・ジェジュン戦略マーケティング室長(副社長)は「(PCとモバイルは)完成品の流通在庫が多少増えたことにより下半期の需要成長が制限的でありうると判断する」と述べた。在庫資産評価損の還入規模も第2四半期以降は小さくなる見込みが高い。結局、AI開発のために投資が大きくなっているサーバー市場の活気が、このような不振を相殺できるかがカギとなる。
ファウンドリ事業で赤字の「暗雲」が消えていないという点は障害物だ。今年もマクロ経済の不確実性が続き、ファウンドリの見通しは悪化傾向にある。台湾のTSMCは18日、今年のファウンドリ産業の成長率見通しを下方修正している。サムスン電子も今回「(ファウンドリ事業の)売上改善は遅れている」とし「効率的ファブ運営を通じて赤字幅は小幅縮小した」と話した。
結局、サムスン電子はAIブームの中心にある広帯域幅メモリーに死活を賭けるしかない。ひとまず、今年の供給規模を昨年の3倍に増やすことにした。8段積層5世代広帯域幅メモリー(HBM3E)の初期量産を開始し、早ければ第2四半期末から売上が発生するとの予想も明らかにした。SKハイニックスと米マイクロンテクノロジーは先月ごろから、8段積層5世代をNVIDIAに供給し始めている。サムスン電子は容量の大きい12段積層の量産を今年第2四半期中にライバル企業より先に始める計画だ。サムスン電子の株価は同日、有価証券市場で前日より1.0%値上がりした7万7500ウォンで取引を終えた。