韓国政府は、2年ぶりに再燃した尿素水騒動への懸念から、中国政府との高官級会談を推進し、ベトナムやカタールなどの輸入尿素に補助金を支給する案を検討することにした。韓国内の車用尿素水などの供給に支障をきたすことを防止するという趣旨だが、場合によっては不安心理が広がり、ガソリンスタンドでの買い占めなどが再発するのではないかと不安になっている状況だ。
政府は6日、ソウル庁舎で経済安全保障の主要品目タスクフォース(TF)会議を開き、尿素の需給や流通状況を点検し、対策準備に乗りだした。企画財政部などによれば、現在韓国内にある車用尿素と尿素水の在庫は、民間企業の保有分と輸入予定量、政府備蓄量を全部合わせて3.7カ月(3カ月20日)分だ。中国が来年第1四半期(1~3月)まで尿素の輸出を全面中断したとしても、韓国内の供給には当面は問題がないという話だ。
中国で購入した尿素を水に溶かして作る車用尿素水は、環境規制「ユーロ6」を適用した2015年以降に販売された国内のディーゼル車の排気ガス内の窒素酸化物を除去する還元剤だ。車用尿素の中国からの輸入の割合は、今年1~10月時点で91.8%と圧倒的に大きい。現時点で政府は、中国が車用・肥料用などの用途を分けず自国産尿素の輸出を全面的に制限していると判断している。2年前のように中国の関税庁にあたる海関総署は輸出統制を公に告示していないが、ロッテ精密化学やクムソンE&Cなどの韓国企業だけでなく、日本側への輸出も止めているということだ。財政企画部サプライチェーン企画団のチェ・ジェヨン副団長は「様々な外交チャネルを通じて、中国の商務部、国家発展改革委員会(中国の経済政策総括機関)、海関総署などに質問書を送ったが、まだ公式の返事はない状況」だと述べた。
一部では、尿素の生産国であるインドが自国内の肥料用尿素の不足から中国製の輸入を大幅に増やした影響で、本来の中国内の尿素供給が足りなくなり、輸出制限につながったと推定している。ただし政府は、現在の中国の尿素輸出統制の対象にインドも含まれているのかどうかは、協議窓口の不在などのため確認できなかったとした。対外情報力の弱点を露呈したわけだ。
政府は、調達庁の車用尿素の備蓄量を、これまでの1カ月分から来年1月末までの2カ月分に拡大し、中国の商務部と国家発展改革委員会の次官級以上の高官と面会して輸出再開を協議すると明らかにした。また、中国の輸出統制が長引く場合は、ベトナムなどから代替品を運ぶ民間企業の支援策を検討することにした。素材・部品・設備特別法などに基づき、中国製よりはるかに高くなる尿素の運送費を企業に補助金として支給するという意味だ。車用・産業用の尿素水を合わせると、年間予算で260億ウォン(約29億円)程度かかると予測される。
政府は、不安拡大から買い占めなどの過需要が発生し、尿素水の流通市場が再び混乱する可能性を懸念している。そのため、市場モニタリングを強化し、車主団体とガソリンスタンドが尿素水の1回の購入限度を定めるようにするなど、需給管理を強化する方針だ。車用尿素水メーカーの関係者は「東南アジア方面を含め、来年3月までの在庫を確保しており、必要に応じて中東からの品も入ってくる予定なので、供給には問題ない」と述べた。貨物連帯側も「個別に尿素水を備蓄した車主もいるため、2年前のような混乱には広がらないだろう」と述べた。