中国税関の尿素輸出制限によって、ふたたび韓国内への尿素供給に支障が生じることへの懸念が生じている。韓国政府は3カ月分の在庫と代替輸入先があるため問題ないと強調している。常時発生するサプライチェーンへの懸念解消のための根本的な措置が必要だという声が出ている。
産業通商資源部・国務調整室・企画財政部・外交部・環境部などは4日、政府と業界合同の尿素サプライチェーン対応会議を開き、「政府と業界がともに車用尿素の供給安定化のために迅速に対応する」と明らかにした。これは先月末、中国の関税庁にあたる海関総署が、ロッテ精密化学やクムソンE&Cなど韓国の車用尿素水製造業者の中国産尿素の輸入を中断させたことにともなうものだ。両社の韓国における車両用尿素水の市場占有率は50%を軽く超える
韓国政府は「現在の国内在庫と中国以外の国から導入することを予定している分量が約3カ月分確保されており、東南アジアや中東などへと多角化を積極的に推進し、車用尿素を安定的に確保する計画」だとしたうえで、「中国の税関が検疫を完了した分量を韓国に支障なく導入できるよう、中国政府と迅速かつ緊密に協議する」とした。
これに先立、韓国政府は9月初め、中国最大の化学肥料輸出入業者である中農集団(CNAMPGC)が、中国内の肥料供給と価格安定を理由に「尿素輸出量を積極的に減らす」と発表し、外信報道を通じて韓国で「第2の尿素水騒動」への懸念が高まったときも、「問題ない」として世論の沈静化に乗りだした。
尿素水のサプライチェーン事情に詳しい経済省庁の関係者は「当時は民間業者の発表だったが、今回は中国の政府機関が直接措置に乗りだしただけに、事案の深刻さが違う」とし、「執行機関である海関総署は原則的な話だけをしていることから、韓国の外交当局が乗り出し、中国内の『上層部ライン』に直接事実関係を確認すべきだ」と述べた。産業通商資源部のチェ・ナムホ報道官はこの日の会見で、「中国内の尿素の需要がひっ迫し、(多くの)通関の遅延が発生している」としたうえで、「政治的な背景はないことを確認した」とだけ述べた。
2021年11月の尿素水混乱を引き起こした韓国の車用尿素水の中国依存度は、過去2年ほどの間で逆にさらに拡大した。関税庁の資料によると、車用尿素水などの原料である尿素の輸入において、中国の割合(重量および受理した日基準)は、2021年の83.4%から昨年は71.7%に減り、今年1~10月には91.8%と再び拡大した。
特に中国の尿素輸出統制が単発性では終わらない可能性も高く、韓国の尿素水供給に対する不安が常に起こりうるという懸念も少なくない。中国の化学肥料業界のオンラインプラットホームである中肥網のウェブサイトによると、業界アナリストの譚俊英氏は前日、「最近の尿素市場には揺らぎと弱さが現れており、好材料と悪材料の要因が拮抗している」とし、「市場では来年第1四半期(1~3月)までは尿素輸出は制限を受けるのではないかという話が出ている」とした。
西江大学のイ・ドクファン名誉教授(化学)は「尿素のような低品質かつ安価な商品は、輸入先の多角化によって消費者の負担が大幅に増える可能性がある」とし、「現時点で政府がしなければならないことは、中国政府を説得して韓国への尿素供給を円滑にしてほしいと交渉すること」だと述べた。
文在寅(ムン・ジェイン)政権時に伝統的な安全保障案件の中心だった国家安全保障会議(NSC)に代わり、企財部などの経済省庁が主導権を握って経済安全保障問題を議論するため尿素水品薄事態の際に新設された「対外経済安全保障戦略会議」は、現政権になってからは一回も開かれていない。
パク・チョンオ記者、オク・キウォン記者、北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )