ウォン・ドル相場が1340ウォン水準まで急速に下がった後、1320ウォン水準で横ばいになっている。今年2月は1220ウォン、7月は1260ウォン水準まで上がったが、1カ月で約80ウォン安となり、急速な下降傾向を示した。これは、グローバルドル高だけでなく、ウォン安が進んだことにも起因する。新型コロナウイルス感染症以降のウォン・ドル相場とドルインデックスを比較してみると、ドルの変動性よりもウォン・ドルの変動性の方が大きいことが確認できる。
ドルに対するウォン安が特に進んだ原因は、ドルの実需要購買が高まったことにある。為替レートは現物市場で取引されるスポットレートもあるが、「域外先物為替」と呼ばれる差額決済先物為替(NDF)レートも存在する。これは満期に相互の元金交換はせずに差額だけを精算する契約なので、実際にドルが必要な需要より差額を稼ぐための方向性売買が目的である場合が多い。
最近、外国為替市場ではこのようなNDFレートが現物市場で取引される為替レートより高くなりはじめた。NDFの契約上、1ドルが1000ウォンで取引されると仮定すれば、現物市場では1ドルが1003ウォンで取引されている。先物価格が現物価格より高いのが正常な状況であるにもかかわらず、現物価格の方が高い今のおかしな状況はドルを実物で買おうとする需要が多くなったという意味だ。
為替レートが大幅に下がった第2の原因は、米国債金利の反発にともなうドル高のためだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は、リファンディング(借り換え)計画を発表し、国債発行を増やすと宣言した。来年の大統領選挙を控え、米国政府は収入は減ったが支出は増やさなければならないジレンマに置かれている。その解決策として提示されたのが国債発行であり、これは信用評価会社フィッチが米国の信用等級を降格する根拠になった。現在、10年物の米国債金利は年4.3%を上回って2007年以降で最高値を記録し、2年物の債券金利も年5%を上回った。国債金利のような市中金利は結局ドルの価値であるため、国債金利の上昇は最近のドル高の決定的原因となった。
為替レート上昇の最後の原因は中国にある。最近、中国5位の不動産業者である碧桂園が債券の利子を返済できず債務不履行の危機が発生し、信用評価会社ムーディーズは碧桂園の信用等級を7段階格下げした。中国経済の核心はインフラおよび不動産産業だといえるため、不動産産業が改善されなければ中国経済が反騰する余地は大きくない。
中国人民銀行は様々な景気浮揚策を提示しているが、まだ成果を出せずにいる。中国政府が供給した流動性が消費に使われず、預金の形で貯蓄されているためだ。一種の流動性のワナに陥ったわけだ。さらに、中国の不動産市場はすでに多額の負債を抱えている。負債を刺激しない線で不動産景気を回復しなければならない厳しい局面に陥ったのだ。最近、中国が家計および企業への融資の基準となる1年物の最優遇貸出金利(LPR)は引き下げたが、住宅担保融資の基準となる5年物の最優遇貸出金利は凍結したのもこのような観点から解釈できる。こうした状況の中、人民元は1ドル=7.3元まで価値下落傾向を続けている。中国経済が反騰しない限り、人民元表示資産に対する魅力が高くないためだ。
韓国ウォンは人民元の代理通貨に分類される。外国人は、韓国の対中輸出依存度が高いという理由で、中国景気が良くなく人民元が劣勢を示す場合に韓国ウォンも売り越すためだ。そのために人民元の動きはウォンの流れに相当な影響を及ぼす。最近の中国景気の低迷にともなう人民元安は、こうした論理を通じてウォン・ドル為替レートが1340ウォンまで急下降する一因となった。