内乱首謀者の容疑が持たれている尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、弁護人を通じて自分の容疑を全面的に否定した。「12・3非常戒厳」に加担した被疑者たちの証言が相次いでいるにもかかわらず、顔色一つ変えずこれを否定している。非常戒厳の失敗後に述べた「法的、政治的責任を回避しない」という言葉とは真逆の態度だ。支持者たちの決起を扇動する時は大口をたたいていたのに、いざ自分に強制捜査が迫ると、雑犯のように言い逃れに忙しい。大統領ともあろう者が、どうしてこんなに卑怯なのか。
尹大統領の弁護団を率いているソク・トンヒョン弁護士は19日、記者会見を開き「大統領も法律家だ。(国会議員を)逮捕しろ、引きずり出せ、そういう言葉を使ったことはないと聞いた」と述べた。ソク弁護士は尹大統領に「逮捕の『逮』の字も口に出したことがない」と言われたと語った。これに先立ち、チョ・ジホ警察庁長とクァク・チョングン特殊戦司令官などが、尹大統領から「国会本会議場にいる国会議員を引きずり出せ」という指示を受けたと陳述したことを、真っ向から否定したのだ。ところが、尹大統領の「指示」を証言する供述は相次いでいる。非常戒厳当日、国会に軍事警察団など200人余りを投入したイ・ジヌ首都防衛司令官は検察で、「尹大統領が電話で、国会現場にいる時に国会議員を引きずり出せと指示した」と陳述した。さらに、尹大統領は国会の戒厳解除要求案議決が迫ると、再び電話して「そんなこともまともにできないのか」と叱責したという。
尹大統領が「国会議決妨害」、「国会議員逮捕」の指示を全面否定するのは、これが内乱罪成立の可否を判断する主な争点であるためだ。刑法と最高裁判例は内乱罪の構成要素である「国憲紊乱(びんらん)」を、憲法によって設置された国家機関を強圧によって転覆またはその権能の行使を不可能にする行為と定義している。最高裁は1997年、全斗煥(チョン・ドゥファン)・盧泰愚(ノ・テウ)の12・12軍事反乱クーデター裁判で、「国憲紊乱」について「機関を廃止することだけを指すのではなく、かなりの期間にわたり国家機関の機能をまともにできなくすることを含む」という基準を示した。尹大統領の指示は、国会の戒厳解除議決を防ぐため、国会を無力化することが目的だった。起訴されれば、内乱罪の有罪判決は避けられないだろう。尹大統領の言い逃れは、刑量が死刑または無期懲役だけの内乱罪だけは避けようという弁論戦略だ。時代錯誤的な非常戒厳宣言で国を危機に陥れておいて、自分はひとまず逃げ切るつもりなのか。このような者が大韓民国の大統領である事実が、実に嘆かわしい。