現代自動車が世界3大自動車市場に浮上したインドでゼネラルモーターズ(GM)の工場を買収し、生産能力を拡大する。競争力の弱化と、ウクライナ戦争により中国・ロシア工場の運営が厳しくなった状況で、インド市場を先取りするための投資に乗り出した。
現代自動車は16日、インドのグルグラムにある現代自動車インド法人で、GMインド法人のタレガオン工場資産の買収本契約を結んだと明らかにした。買収金額は相互の協議により非公開とすることにした。インドのマハーラーシュトラ州プネー市にあるタレガオン工場は、年間13万台の自動車を生産していたところで、GMが2020年10月に稼働を停止した。現代自動車は、工場買収し2025年から生産に入り、段階的に設備を改善して生産量を増やしていく計画だ。今回の買収を通じて、現代自動車グループはチェンナイ(現代自動車82万台)・アナンタプル(起亜35万台)と併せて年間135万台以上の生産能力を確保することになる。
人口13億人のインドは、中国(年間販売台数2320万台)、米国(1420万台)に次いで世界3大自動車市場に挙げられる。昨年は476万台の新車が販売された。このうち乗用車市場が380万台で、2030年には乗用車だけで500万台以上が販売されると見込んでいる。特にインドの電気自動車(EV)の販売規模は全体の1.2%(4万8千台)に過ぎなかったが、毎年急速に成長している。インド政府は2030年までにEVの販売比重を自動車販売台数全体の30%に拡大するという目標を立て、電動化転換政策を推進しており、2030年のEV販売台数は100万台まで拡大されるだろうとの予測も出ている。
現代自動車は「タレガオン工場を買収したら、同工場はこれまでチェンナイ工場で生産していた内燃機関車の一部を生産し、チェンナイ工場はその分を新規のEV生産ラインとして活用する」と計画を明らかにした。本格的にEV市場が拡大する前に現地生産ラインを確保し、他の完成車メーカーより先にインドの消費者からの選択を受ける計画だ。現代自動車グループのチョン・ウィソン会長は7日、インドを訪問し「インドのEV市場でファースト・ムーバーの地位を構築する」戦略を打ち出した。
現代自動車は今年7月までインドで34万6711台を販売し、自動車市場で14.6%を占めている。インド企業のマルチに次いで2位。現代自動車・起亜は昨年には史上最多の80万7千台余りを販売し、今年の目標は87万3千台にのぼる。EVも2025年から現地に最適化された小型EVを生産し、今後様々なモデルを順次供給する予定だ。
インドはこれまで現代自動車が成功裏に参入した国外市場に挙げられる。1996年にインドに販売法人を設立した後、1998年にはチェンナイ工場を建て本格的に進出した。現地進出23年目の2021年には累積生産台数1000万台を達成した。起亜も2019年にアーンドラ・プラデーシュ州アナンタプルで工場稼動を開始し、4年目となる先月には100万台の生産を達成した。
現代自動車は「現地への累積投資額は、40社余りの同伴進出協力会社を含め65億ドル。直接・間接雇用効果は25万人に達する」と説明した。現代自動車は今年5月、チェンナイ工場があるタミル・ナードゥ州と協約を結び、今年から10年間にEVのエコシステム造成と生産設備の現代化など2000億ルピー(約3500億円)を投資することにした。