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韓国、実質賃金と実質所得の減少免れるも…高所得層が引き起こした「錯視現象」

登録:2023-06-13 01:49 修正:2023-06-13 07:45
高所得層中心の賃金・所得増「見かけ倒し」 
下位40%、昨年下半期から「所得の絶壁」 
政府「思ったほど悪くない」自画自賛
ソウル市内のアパート/聯合ニュース

 昨年は高物価の余波で物価上昇を考慮した実質賃金と実質所得の減少が憂慮されたものの、韓国は主要国に比べてショックが弱かったことが分かった。公共料金引き上げの抑制などによって物価上昇率そのものが相対的に低かったことが大きく影響したもの。しかし、高所得層を除いた残りの階層の実質賃金・所得の減少は次第に明確になりつつあるため、家計はその恩恵が感じられない「見かけ倒し」の現象だとの評価もある。

 経済協力開発機構(OECD)が最近発表した「経済見通し」を12日に確認すると、韓国の昨年下半期(7~12月)の実質賃金はその1年前と同じ水準を保っていた。同期間に米国(-2.5%)、日本(-1.5%)、オーストラリア(-2.4%)、英国(-2.7%)、ドイツ(-4.1%)などは実質賃金が減少したが、韓国は横ばい(0%)にとどまった。同期間にはユーロ地域(-3.3%)とOECD加盟国の実質賃金の中央値(-2.6%)も後退した。

 企画財政部の関係者は「このところの半導体輸出の悪化で成長率そのものは良くないが、家計環境は思ったほど悪くないことを意味する」とし、「実質賃金は名目賃金から物価変動分を除いた指標であることから、主要国に比べて韓国の物価上昇幅が小さかったことが影響を及ぼしたと考えられる」と語った。

 韓国の昨年の消費者物価の年間上昇率(対前年比)は5.1%で、米国(8%)、欧州連合(EU・9.2%)、OECD平均(9.6%)などに比べ非常に低かった。主要国より需要圧力が相対的小さいこと、公共料金の凍結や油類税引き下げなどの政策効果も影響を及ぼした。

 家計の実質可処分所得(税金や社会保険料などを除いた所得)も韓国の増加幅は主要国より大きかった。昨年下半期の韓国の家計の実質可処分所得は1年前に比べ2%増。所得が減少傾向にあるユーロ地域(-0.5%)はもちろん、OECD加盟国の中央値(-1.5%)と比べても対照的だ。

 しかし統計の細部を見ると、これを肯定的にとらえてばかりはいられない。国内の所得階層ごとに見た賃金・所得事情は全く異なるからだ。統計庁の「家計動向調査」によれば、昨年下半期から所得中下位世帯の実質賃金と実質所得の増加は目立って鳴りを潜めている。その一方で高所得世帯だけは収入増が目立つ。

 例えば、国内所得上位20%の世帯(所得五分位階級の第5階級)の月平均の実質勤労所得(対前年比)は昨年第3四半期には3.8%の減だったが、第4四半期は0.9%の増、今年第1四半期も6.7%の増。上位20~40%の世帯(第4階級)も実質勤労所得増減率が昨年第3四半期の-1.8%から第4四半期には3.8%の増、今年第1四半期には5.8%の増に転じている。

 これに対し所得下位20%(第1階級)と下位20~40%(第2階級)の世帯の実質勤労所得は、臨時職の就業者などが減少に転じた昨年下半期から「所得絶壁」現象がみられ、今年第1四半期にはそれぞれ6%、8.2%もの大幅減となった。

 このように階層間格差が広がっているのは可処分所得も同じだ。今年第1四半期の国内家計のうち、実質可処分所得が横ばい(0%)を記録したのは上位20%世帯のみ。実際、昨年第4四半期は仮処分所得の増加が維持されていた下位20%と下位20~40%の世帯は、今年第1四半期の実質仮処分所得がそれぞれ3.3%、2.8%減少。全階層中で所得の減少率が最大だった。

パク・チョンオ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1095488.html韓国語原文入力:2023-06-12 10:00
訳D.K

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